首相が、何度、記者会見を開いてみても、変わらない感染拡大
- 2020年 3月 31日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
安倍首相が、記者会見を開いても、新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、何を語っても、具体的な感染拡大予防対策と経済対策が見えてこない。いったい何をやっているのだろう。
たとえ、マスクの増産・配布、PCR検査の拡充などを強調して、その具体的な数字を示すものの、その結果が見えない、示さない。一方で、遅々として進まないPCR検査のもとでさえ、感染者数が激増していく。外出や営業の自粛要請はするが、補償対策とて基準が不明で実働しない。 新型コロナウイルスをめぐる首相や閣僚の発信には、実が伴わない。その間に、感染はどんどん拡大してきたというのが実態だろう。首相の記者会見発言をたどってみよう。
3月29日の東京新聞に「新型コロナウイルスをめぐる経過」という表が出ていた。これに、首相の記者会見、対策本部会議での発言や専門家会議の報告などを重ねてみると以下のようになった。
不鮮明で、申し訳ありません。クリックして、拡大してみてください。すぐ前のことも忘れて?確認するのが結構大変でした
2月29日の記者会見では、2月27日、突如3月2日から春休みまでの全国の小中高臨時休校を要請したのを受けて「私が決断した以上、私の責任において、様々な課題に万全の対応を採る決意」を表明した。さらに、保護者の休職に伴う所得減少への助成制度など、2700億円の予備費で、第2弾の「緊急対応策」を10日程度で「速やかに取りまとめます」と言いながら、保育所と学童保育所は休まないとするのは整合性に欠けるのではと疑問が大きい。
「盤石の検査体制、医療体制を構築していく考えであります」
「必要な措置は躊躇なく実施する考えであります」
「小規模事業者の声を直接聞き、しっかりと対策を講じます」
「国民の命と暮らしを守る。その大きな責任を果たすため、これからも先頭に立って、為すべきことは決断していく。その決意であります」
と、その「考え」や「決意」を繰り返しながら、PCR検査については、保健所を通さなくても民間でもできるようにとか、2~3時間はかかる検査を15分程度でできるになるとか、検査体制の不備がすぐにでも解消されるようなことまで語った。約19分間話した後、15分ほどで質問を打ち切り、私邸に帰ったという。「休校の決断」は、まさに官邸の独断で、専門家の意見も聞かず、文科大臣の意見も入れなかったことが後で判明する。
3月14日の記者会見については、すでにこのブログ記事でも書いているが、前回同様、内容のない決意表明が目立つものであった。雇用調整助成金制度や無利子・無担保の融資制度を全業種、全国規模で「実施することにしました」とか、「今後も機動的に、必要かつ十分な経済対策を、間髪を入れずに講じます」、「全国津々浦々、心を一つに、まさにワンチームで、現在の苦境を乗り越えていきたいと考えます」という。しかも、3月9日には、専門家会議から密集・密閉・密接の三要件の危険性の警告がなされ、3月11日には、WHOが「世界的流行」を宣言していたにもかかわらず、特措法改正が成立した気のゆるみか、「ウイルス感染者の80%は軽症で、感染者の80%は、人に感染させない、亡くなるのは、高齢者で、基礎疾患のある人に集中している」として、若年層を油断させ、高齢者をますます不安に陥れた。
直近の3月28日の記者会見は、3月24日のオリンピックを1年程度延期する方針を決めた後なされたものだが、「聖火こそ、今、正に私たちが直面している長く暗いトンネルの出口へと人類を導く希望の灯火である」と、新型コロナウイルスの恐怖と経済的苦境にさらされている国民にとって、「聖火」など何の保証にもならないし、世界的な感染状況から見て、来年夏まで開催できる見込みもない。オリンピックファーストから抜け切ろうとしない無策を露呈した。
そもそも現代の「オリンピック」は、東京に決まってからも、お金と政治で動く「虚業」にも思える場面に幾度も遭遇している。選手たちには、各競技の世界大会で十分に力を発揮してほしいと願うばかりである。
また、この日の会見では、首相20分の発言、質疑で54分になったが、首相の発言は、当面の経済対策としての現金給付や雇用調整助成金制度の運用に及ぶも、具体化や実績が不明であった。マスク不足が言われて2か月近いが、いまだに、4月には医療用1500万枚、学校用に布製1200万枚、4月中に1億万枚生産見込み・・・など吹聴するが、従来通りの皮算用にしか思えない。各家庭にはもちろん、医療・施設の現場にさえ深刻な不足状態が続いているのは、どうしてなのか。政治経済体制の基盤の弱さを目の当たりにする思いである。
こうして、首相の記者会見を通して、構想力も想像力もなく、無責任な発言が続いているのに愕然とする。プロンプター頼りに棒読みするしかない、そして、さらに、自分の妻にさえ「自粛要請」が届かない発信力のない首相はもう要らない。
<参考>
対策本部会議などの情報
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html
記者会見などの記録
http://www.kantei.go.jp/jp/news/202002/index.html
緊急対応策(2月13日)file:///C:/Users/Owner/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/JDLUCL85/kinkyutaiou_corona.pdf
緊急対応策第2弾(3月10日)
file:///C:/Users/Owner/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache
初出:「内野光子のブログ」2020.3.30より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/03/post-317625.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9594:200331〕
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