林文子横浜市長の、新型コロナウイルス拡大を直視せぬ、市民無視のカジノIR推進への抗議声明
- 2020年 4月 3日
- 評論・紹介・意見
- カジノ村尾知恵子
コロナウイルスの感染拡大は驚くほどの速さと勢いで世界中に拡散し、多くの方々が命を失い、死者の数はなお増え続けています。また、アフリカや中東の紛争地域で避難生活を余儀なくされている人々など、医療体制が不十分な地域へも感染は広がっています。この地球上で人間が生き抜いていく事の困難さを感じます。
今回の新型コロナ感染では、横浜港に停泊した「ダイヤモンドプリンセス号」が大きな問題となりましたが、横浜市の林文子市長は、ほとんどコメントもせず、対応は国と県まかせのようでした。感染拡大、モノ不足、突然の休校、休業、解雇など、市民の生活不安はこれまでにないほど大きくなっている中で、林市長はそれを無視するかのように、カジノを含む統合型リゾート施設誘致の推進事業費を計上した予算を成立させてしまいました。7割の市民が反対するカジノ誘致の強行は、利権の構造に根差しており、巨額の投資は福祉予算を圧迫するにちがいありません。
これまでも日本には公営ギャンブル(競馬、競艇、競輪、オートレースなど)があり、ミニギャンブルといえるパチンコ・スロットには、この感染拡大の中でも、来場者を集めています。若者のゲーム依存も含め、日本にはギャンブル依存症がきわめて多く存在しています。
もともと港湾労働者のドヤであった寿町で、労働者と共に支え合う地域を作り上げてきた介護、福祉、医療関係者が、横浜へのカジノ誘致に反対するのも、日頃から多くのギャンブル依存などの精神疾患の人々と接してきたからなのです。
私の知り合いの精神科医で、寿共同診療所の越智翔太医師が事務局長をしている「横浜へのカジノ誘致に反対する寿町介護福祉医療関係者と市民の会」の抗議声明を紹介します。
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林文子横浜市長の、新型コロナウイルス拡大を直視せぬ、市民無視のカジノIR推進への抗議声明
≪林市長はカジノ政策でなくコロナ対策を!カジノとオペラハウスの巨額予算を撤回し、市民の医療福祉と生活保障に!!≫
2020年3月23日 横浜へのカジノ誘致に反対する寿町介護福祉医療関係者と市民の会 (KOTOBUKI ANTI-CASINO ACTION:KACA)
●新型コロナウイルス世界的感染拡大下の市民の不安な現況
新型コロナウイルスが遂にパンデミックに至り、世界そして全国で感染不安と生活不安が激しくなっています。 横浜市においては、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が2月3日から2月19日まで大黒埠頭に停泊し、ずさんな感染区分と検疫で感染拡大した挙句、乗客が公共交通機関で帰る、国の失態がありました。乗客乗員の感染者は市内の病院への入院もあり、神奈川県の乗客が亡くなっています。また横浜市においては、クルーズ船以外では、2月18日から3月18日現在まで13人の発症を見ています。3月3日から市内の小中高校・特別支援学校全510校が休校となり、子ども達も自宅静養を要請され、特に共働き世帯や一人親世帯の負担が増えています。急な休業や短縮・変則勤務の上、さらに解雇・失業に至る労働者も出ています。中小を始め経営危機に陥る企業も増えています。マスクや衛生品は店頭で払底となっています。市民も感染恐怖と生活不安の日々です。
●市民の不安に寄り添うべき自治体首長の本来の姿
このような状況においては、自治体首長は積極的に市民に姿を現し、市民に寄り添い一つ一つの不安に「丁寧に説明」しつつ、情報をできるだけ公開し、多くの知見を集め、目に見える対策を重ねることが望ましい姿です。
しかるに、カジノIRに関しては市長説明会を重ねて自らは「丁寧な説明」とする一方的な説明を前のめりに重ねて来た林市長は、3月9日にコロナウイルスに関する市民への「コメント」1頁を出し、横浜市大がコロナウイルスの抗体検出を発表する際に何故か会見に同伴した以外、市民の前にほとんど姿を現さなくなっています。
●新型コロナウイルス対策には後ろにいて、カジノIRだけ前のめり、不安に苦しむ市民をよそに一方的な市長
そんな時、カジノIRの方向性素案は3月5日に104頁も出してきました。世界的な感染と不況が接近し、市 民が不安に慄く中、現実を直視せず、カジノIRの検討をしているのです。IR市長説明会は6区で延期となり、 市長の説明を聞いていない市民がなお大勢おり、何より市民はIRを考えるどころではありません。そこへ3月 6日から4月6日までパブリックコメントを行い、多くの市民から意見や提案を求めると語りつつ、反対意見が多くてもカジノIRは撤回しないと述べ4-5月に意見をまとめ素案を修正し、6月中にIR実施方針とカジノ事業者の公募を出すと、初めから語る強引さです。パブコメの意味は儀式以外、全くありません。その上、3月12 日にはIRカジノ事業者公募の実施方針案の骨子を出してきました。コロナ対策には全然見られない積極性です。
さらに104頁の方向性素案は、添付の如く、かねて指摘されてきた偽りの情報を市民に平気で示しています。
北海道知事も、千葉市長も、若い首長が市民の前に主体的に姿を見せ、市民に寄り添い、休校中の対応に国と応酬してもコロナウイルス対策に取り組むのとは対照的です。ちなみにこれらの自治体は、カジノIRを断念しています。コロナウイルス対策を国に任せて積極的に取り組まないのも、国策カジノIRを国に言われるまま進めるのも、同じ姿勢の現われです。実状を自ら直視せず、市民の人命や人権より、国の評価を優先する忖度です。
●現実を直視せず市長がカジノIRを推進する基盤にも、利権の構造と政治の私物化が見られるのではないか
そして林市長にはそれ以上のものがあります。かねて長期採算性を疑われてきた、市長の趣味のオペラやバレエが見られる新劇場が、カジノIRのバーターでなぜか建設方針となりました。IR推進事業の4億円と並び、新劇場のために基本計画策定や管理運営調査に2億円、舞台芸術振興や文化芸術の都心臨海部活性化検討に1億円、計3億円も来年度予算に計上されています。これは一種の利権ではないでしょうか。さらに、本来は市民の財産である関内駅前の超一等地にある現市庁舎を、評価額の10分の1以下の7667万円で安売りし、友人の夫である星野リゾート社長にホテルとして便わせようとしています。政治の私物化ではないでしょうか。
●カジノはギャンブル依存症だけでなく、感染症も拡大させてしまい、世界感染と世界不況で経営困難の実態
コロナウイルス蔓延の契機にもなったクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号は、米国企業のカジノ船です。テーブルゲームや多種類のスロットマシンがあり、乗客が必ずカジノを通り交錯するよう設計されていたのです。カジノはギャンブル依存症を拡大させるばかりか、感染症も拡大させてしまうのです。
コロナウイルス蔓延でリーマンショック級の世界不況に陥ろうとしています。マカオ、シンガポール、ラス ベガスのカジノIRも感染対策で一時閉鎖となり、今後の経営存続も危ぶまれています。外国客を招くことを年余にわたり避けねばならず、東京五輪も中止せねばならぬかという中、もはやカジノどころではないはずです。
●カジノIRと新劇場の予算を撤回し、医療福祉と生活保障に予算を組み直すべき、さもなくば市長リコールを!
依存症の特徴は、現実を認めないこと、否認です。コロナ禍をよそにIRと新劇場に邁進し、市民は文化芸術に乏しいと上から目線で啓発する自尊心の高い市長は、実はIR依存症に陥ってしまったのではないでしょうか。治療には、依存症で苦しむ市民と、自助グループで同じ目線で語り合い、市民の声を聴くことをお勧めします。
来年度一般会計予算1兆7400億円のうち、「救急救命医療体制の充実・強化」1億6500万円・「地域医療の充 実・強化」1億3000万円・「2025年に向けた医療機能の確保」4億6900万円と、医療関係の重要な3費で計7 億6400万円です。「介護人材の確保に向けた取組の推進」2億8200万円・「地域包括ケアシステムの構築・推進」 1億3200万円と、介護関係の重要な2費で計4億1400万円です。「子どもの貧困対策の推進」は6億7000万 円です。「障害児・者の地域生活支援の充実」は8億3600万円です。カジノと新劇場の予算計7億円を撤回し、 医療・福祉・教育・保育・就労・生活を保障する、新型コロナウイルス緊急対策にこそ、先ず回すべきです。
「中小企業への総合的な支援」は364億200万円です。感染と不況の長期化を考えれば中小企業や勤労者の補償にはこんなものでは到底足りないでしょう。現実を直視し、今後に備えた予算案を組み直す必要があります。
公約違反で市民無視のカジノIRと新劇場を撤回しないのなら、いよいよ市長のリコールがしかるべきです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9606:200403〕
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