河井夫妻逮捕、2本の尻尾切りで終わらせてはならない。
- 2020年 6月 19日
- 評論・紹介・意見
- 刑事司法安倍政権澤藤統一郎
(2020年6月18日)
梅雨の晴れ間が今日で4日目。毎日気になる不忍池の模様。昨日には見あたらなかった蓮の華が、今朝は少なくとも3輪。6月18日を「開華記念日」と名付けよう。
アメリカでは黒人差別抗議デモが高揚し、朝鮮半島も中印国境も穏やかではない。北京でのコロナ蔓延の兆しも報道されている。国内も多事山積で騒然としてるが、この蓮池と周りの紫陽花ばかりは平和そのものである。
さて、昨日(6月17日)201通常国会が閉会となった。今朝の朝日の川柳欄に、「長居は無用と火事場泥棒(東京都 三井正夫)」との投句がある。あるいは、「はやばやと現場立ち去る火事場泥」と詠むべきか。火事場泥になぞらえられた一国の首相は、国会という現場から、早々と逃げたのだ。しかも、「検察庁法改正」という財物を盗み損ねた。会期最終日における内閣委員会での継続審議の提案はなく、結局審議未了で廃案となった。
検察幹部の人事を掌握して、検察庁に官邸支配の手掛かりを得ようとしたアベ晋三の目論見は裏目に出た。却って、世論は検察の官邸からの独立に大きな関心をもつこととなり、検察もこの世論の動向を意識して、官邸からの独立を見せなければならない立場となっている。
それあらぬか、本日(6月18日)の朝日のトップ記事が、「河井前法相・案里氏 逮捕へ」である。毎日もトップの扱いだが、「河井夫妻 きょう強制捜査」と、少し温和しい。東京新聞は社会面だが「河井前法相夫妻、きょう逮捕 検察当局、買収容疑」と、共同配信記事。いずれも、検察からのリークなければ書けない内容で、各紙とも容疑の内容が詳細である。このリーク記事のとおりに、本日河井夫妻の逮捕状請求となり、午後執行された。こちらも、「開華記念日」にふさわしい出来事。
しかし、課題は河井夫妻の逮捕・立件ではなく、その背後の「官邸の犯罪」にどこまで切り込めるかということにあり、検察にそれを暴く意気込みがあるのかが問われている。この点の示唆に富むのが、文春オンラインの「まもなく逮捕へ…河井克行・案里夫妻の“買収問題” 東京地検特捜部は全貌を解明できるか」という記事。概要を紹介したい。
稲田伸夫検事総長の肝煎りで始まった捜査は、黒川弘務の辞任を受け新たに東京高検検事長に就任した林眞琴が、東京地検管轄の事件として本格捜査着手の指揮を執っている。
捜査の焦点は言うまでもなく、昨年7月21日投開票の参院選に向け、自民党が河井夫妻陣営に振り込んだ1億5000万円の“公認料”である。同じ選挙区の溝手顕正に対する公認料の10倍という法外な金額。
広島県選管が参院選挙費用として認めている上限は4726万9500円だから、そもそも“公認料”そのものが上限をはるかに超えていることになり、それ自体の問題もある。一方、河井陣営が選管に提出した収支報告書によれば、参院選の選挙運動費用は2405万円、チラシの作成費用などを含めた支出額を2688万9896円と計上している。
克行は案里が参院選へ立候補を表明した昨年3月以降、95人の広島県議や後援会関係者に2400万円の現金を渡して票の取りまとめを依頼し、当の案里も克行の指示で5人に150万円を配ったとされる。選挙買収に使われたこの2550万円プラスアルファの2600万円の原資が、1億5000万円の法外な“公認料”だと見ていい。それでもまだ、1億円近くの行方が謎である。
参院自民党の広島選挙区は溝手の出馬が決まっており、そこへ2人目の候補として河井案里を割り込ませた。そのための“公認料”である。「ポイントは安倍首相と菅官房長官のどちらが案里を担ぎ出したか。安倍首相側は菅官房長官が子飼いの河井の妻を擁立したんだといい、逆に菅官房長官側は溝手嫌いの安倍首相が判断したんだと互いをけん制している」と自民党関係者は言う。
事件はもはや修復不可能といわれる官邸内の首相対官房長官の確執に飛び火しそうな雲行きだ。仮に黒川が東京高検検事長としてそのまま居座っていればどうなっていたか、とも囁かれる注目の捜査。検察の威信をかけた東京地検特捜部はどこまで全貌を明らかにできるか。
また、従来から「捜査で押収した携帯は『宝の山』。1億5000万円の使途、安倍首相秘書らの選挙中の動向が見えつつある」とも報道されてきた。「安倍首相秘書らの選挙中の動向」こそが、まさしく注目される捜査である。検察が忖度も遠慮もなく、政権に切り込むことができれば、その日を「蓮華満開記念日」としよう。
なお、本日(6月18日)都知事選の告示。なんとも論戦低調で盛り上がりに欠ける選挙戦の始まり。それにつけても、赤旗の選挙記事を見るだに、その大仰な支持候補者紹介にこちらが気恥ずかしくなる。売らんかなの商品の宣伝には誇大誇張が付きものではあるが、過剰に過ぎては白けて逆効果だろう。消費者としての商品の選択にも、選挙における候補者の選択にも、誇大広告に惑わされることのないよう、よくよく
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.6.18より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9856:200619〕
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