SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】386 国連総会、パレスチナ、西サハラはどうなる?
- 2020年 9月 13日
- 評論・紹介・意見
- サハラパレスチナ国連平田伊都子西サハラ
今年の第75回国連総会は新型コロナウイルスの影響で、事前収録の映像を利用したビデオ会議形式での開催となるそうです。既に、ティジャニ・バンデ国連総会前議長が令和2年6月10日、「総会は予定通り9月22日から29日に開催される。演説希望国は総会開始日の少なくとも5日前までに、大統領、首相、政府閣僚、国連大使のいずれかによる15分以内の演説を国連に送付するように」と、加盟各国に通達しました。国選総会の議場に入れるのは各国代表団の1人のみで、かつ外国から来た場合、ニューヨーク市のコロナ規制に従って二週間の待機が必要です。 国連事務総長も母国ポルトガルからニューヨーク入りした時、コロナ規制に従ったとか、、 ただし、要人の入出国は諸加盟国夫々の外交作業で、国連はかかわらないそうです。
① 国連はいつ正常化するか?:
2020年9月11日の国連事務総長報道官の定例記者会見も、ビデオ形式で行われた。第19回目を迎えた「9・11ニューヨーク・ツインタワー・テロ記念日」に関して、報道官の方からは言及がなかった。報道官はパレスチナで人権問題に取り組むジェミー・マクゴールドリックの、9月10日付け報告を公表した。それによると、「コロナ禍の最中も、イスラエル当局によるパレスチナ人所有の家屋撤去は断行されてきた、、今年の3月から8月までに西岸では389個のパレスチナ人所有家屋が撤去または没収された、、この撤去作業で、400人以上のホームレスになってしまった」と、ある。
アブド・ル・ハミード・パレスチナ人記者は、さらなる調査を求めた。が、アメリカが仲介するイスラエルと湾岸アラブ諸国との二国間和平合意に関して、質問はなかった。
記者たちの関心はもっぱら、「国連総会前の国連事務総長記者会見がどうなっているのか?」ということに絞られていた。報道官は、「総会前の国連事務総長記者会見は、来週16日水曜日に行われる。メールで詳細を送る。会見室にはマスクをつけた10人の記者のみが入れる。参加希望者は、国連記者クラブに連絡するように。」
2020年9月22日に開催予定の第75回国連総会議長はトルコのヴォルカン・ボズクル・トルコ国会議員が就任する
「第75回国連総会議長として、私こそが国連と加盟国の要望や期待に最もふさわしい形で任務を遂行できると、関係者は認識するだろう」と、6月に選出され、イスタンブールの豪華ホテル・チュラーンサライ・ケンビンスキーで行われた就任式で、新議長は語った。
② アメリカの独断外交がノーベル平和賞?:
9月9日、「トランプ米大統領が来年のノーベル平和賞に推薦された」というニュース
が流れた時、世界中が「マジ??」と驚いた。トランプはベネズエラを壊滅するは、中国
には何かとくってかかるは、鳴り物入りで始まった米朝会談は頓挫するは、WHOを始め国
連諸団体からの脱退を表明するは、、およそ平和には関係ない御仁だった。その<アメリカ
自国主義>の権化が、ノーベル平和賞とは?、、コロナ以降、何が起こっても不思議のない
世の中になってしまったが、<トランプのノーベル平和賞>には、目が覚めるショックを
もたらした。アメリカの保守系フォックス・ニュースは、トランプ大統領をノーベル平和
賞の受賞候補に推薦したノルウェーのティブリンイエッダ保守系国会議員を取材した。
推薦者によると、「これまでのノーベル平和賞受賞者は、賞に値する平和的活動をしてこな
かった。ところがトランプは、戦後から現在まで膠着状態が続いていた中東和平問題に、
大きい風穴を開けた」と、トランプによるイスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)の二国
間国交正常化仲介を高く評価した。トランプは、「この歴史的二国間国交正常化を他のアラ
ブ諸国も真似ることになる」と、大はしゃぎした。
<二国間国交正常化>の仕掛け人は、トランプの娘婿でユダヤ人のクシュナーだ。8月半
ば、彼とポンペオ米国務長官はイスラエルを起点にして、<二国間国交正常>を旗印に、
湾岸諸国とモロッコを説得して回った。そして8月31日、米国代表団を率いたクシュナー
と、イスラエル代表団を率いたイスラエル国家安全保障会議(NSC)のベンシャバト議
長が、イスラエルとUAEを結ぶ初のエルアル航空旅客直行便に搭乗し、UAEのアブダビ
に向かった。クシュナーは搭乗の前に、「歴史的なフライトだ」と語ったそうだ。
大反発したのはパレスチナだ。
クシュナーたちの説得訪問を受けたアラブ諸国は、即答を避けた。が、、9月11日には
湾岸のバーレーンもイスラエルとの国交正常化に合意した。そして、9月15日にホワイト
ハウスで、UAE(アラブ首長国連邦)とバーレーンは夫々、イスラエルと二国間国交正常
の調印をする。イスラエルとの国交を禁じたアラブ諸国の申し送りはどうなったんでしょ
うね? これで、ヨルダン、エジプト、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーンと、4カ国
がアラブの約束を破ったことになります。
③ 西サハラが国連西サハラ住民投票を請求:
パレスチナ外しとも言えるイスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)の二国間国交正常化
を、国連は評価した。その一方で、国連はパレスチナとイスラエルの2国家共存を支持している。<国連はグッドオフィス>と国連事務総長が自らが表明しているように、<国連は貸事務所>なのだろうか?、、そんな国連の憲章や決議を信じていいのだろうか?限りなく疑問符が増えてくるが、西サハラにとって、そんな国連しか頼る所がないのだ。
国連再開を直前に控えた2020年9月7日、ニューヨーク西サハラ難民政府国連代表オマ
ル博士は国連事務総長と国連総会と国連安保理に、国連憲章と国連決議に基づく<西サハラ人の民族自決権>を行使するよう求めた。そして、民族自決権を行使するために国連が1991年に提案した<国連西サハラ人民投票>の日程を早急に決めるよう、強く要望した。
一方、モロッコはモロッコの西サハラ領有権を主張し、西サハラ人の人権も民族自決権も否定している。これに対して、ICJ(国際司法裁判所)は1975年に、モロッコの西サハラ領有権を否定している。
9月12日には、スイス・ジュネーブ西サハラ難民政府代表のオメイマ・アブデル・サラム夫人も外交闘争に参加し、国連ジュネーブ本部に対して、国連とAU(アフリカ連合)が主唱している、国連西サハラ人民投票の具体的な日程を決めるように要請した。
ジュネーブ西サハラ難民政府代表オ麻衣マ・アブデル・サラム夫人
9月11日、スウェーデンの国会議員も、「平和と経済発展をめざす米国とコソボ、セルビアの取り組みを理由に3カ国の政府を来年の平和賞に推薦した」と、自分のツイッターに書き込みました。 来年の事を言えば鬼が笑うそうですが、トランプ氏のノーベル平和賞が決まったら、マジ、笑ってなんかいられないですよネ!
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https://youtu.be/jz7lFr2c_Jk スペイン語ですが、西サハラ難民キャンプが見られます。
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*1月22日、「ニューズ・オプエド」で#1323<アフリカ最後の植民地>を放映しました。
YouTube オプエド平田伊都子 URL https://www.youtube.com/watch?v=citQy4EpU-I
Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)をご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2020年9月13日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10110:200913〕
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