汚泥焼却による放射性物質の拡散、再被曝を防ぐべきです。町田市の焼却場も、操業点検が必要です。
- 2011年 6月 13日
- 時代をみる
- 藏田計成
(1)福島県は、去る5月1日、ある数値を発表しました。それは郡山市の下水処理場「県中浄化センター」において、汚泥と汚泥を焼却処理した「溶融スラグ」(セメントでかためた固化物)から高濃度の放射性セシウムを検出した、ということでした。
① 汚 泥: 総量70トン、セシウム「2. 64万ベクレル/kg」
② 焼却灰: 総量不明
③ 溶融スラグ:総量2トン、セシウム「33.4億(→万)ベクレル/kg」
④ 事故前の「溶融スラグ」: セシウム「246ベクレル/kg」これは、過去の核実験や、チェルノブイリ事故の影響と思われる。
(2)この事実が、どのように重要な意味をもっているか、考えてみたいと思います。通常、雨が降って地表から下水構に流れ込んだ放射能物質や人体の排泄物などを集めた汚泥は、水分をのぞいたあと、約850℃の高温で焼却処理します。とくに、高温熱処理過程では多くの有機物は揮発性物質として、高い煙突から煙とともに外気に排出されます。あとに残るものは固形物(カルシュウム、鉄、ナトリウム、放射能汚染物質も含む)などの「焼却灰」です。この焼却灰に圧縮加工された15%~20%のセメントと水を加えて(→1200℃で溶融加工して)「溶融スラグ」をつくり、道路舗装や護岸工事などに再利用しています。
(3)重要なことは「物質保存の法則」という物理学の法則の下では、あらゆる物質は変質するが、消滅しないという事実です。汚泥のなかの水分や有機物は、溶融し、揮発し、空気中に放出されます。だが、消滅するわけではありません。とくに、厄介な問題は、放射性物質や放射能汚染物質の行方です。この点に関して、さらに数字を追ってみることにしましょう。先にみた福島県郡山処理場の例で計算するとどうなるでしょうか。発表された「汚泥物の総量」「溶融スラグの総量」「各1k当たりの放射線量」をもとに計算すると、放射能の実態が、鮮やかに浮彫りになります。以下は放射能の各総量を「ベクレル」の単位で算定したものです。
① 汚泥総量:
70(トン) ×1000(kg)×2万6400(ベクレル)=18.48億ベクレル
② 溶融スラグ総量:
2(トン) ×1000(kg)×33万4000(ベクレル)=6. 68億ベクレル
③ 差し引き総量:
18.48億-6.68億=「11.8億ベクレル 」
③の事実に注目して下さい。「郡山」の焼却場の煙突から「11.8億ベクレル」(64%)の放射性物質セシウムが、焼却場から環境外に再度放出されていることになります。「外気再放散率」は、過半数を越えて「3分の2弱」に達しています。この事実は郡山焼却場周辺の住人が、確実に、再度の被曝、再度の体内吸入を強いられたことを意味します。
(4) 6月8日のTV番組(TBSニューズバード)の報道によると、東京都内12個所の汚水処理場から5月18日、19日に採取した「汚泥焼却灰」から、最高「5.5万ベクレル/kg」を検出したといいます。これを、先の福島県郡山市の「3/11事故」以前の溶融スラグのセシウム通常値「246ベクレル/kg」の数値と単純に比べてみただけでもすでに「223.5倍」になっています。セメント約20%を加えて「固化」した値に補正して換算すれば、事故前の通常値の「約180倍」という計算になります。
(5)「大田区南部スラッジプラント」(焼却灰混練施設)の「焼却灰」から受ける外部被曝放射線量は、取材記者のガイガーカウンターでは「2.6マイクロシーベルト/時」(22.8㍉/年)を検出しました。この数値自体は、放射性物体が発する「ベクレル単位」ではないので、郡山の例と正確な比較はできませんが、ひとつの示唆を与えてくれます。
大田区やその他の保管倉庫にうずたかく積み上げられた「焼却灰」の存在は、それ自体が新たな放射線源であることは疑いの余地がありません。この放射線被曝量の累積年間「22.8㍉シーベルト」とはどのような数値でしょうか。
通常、「年間累積1㍉シーベルト=1万人中1人が、数年後か、10年後に発ガン死する」とされている数値です。したがって、生活条件を考えないで単純ないい方をすれば、この線量は大田区民70万人中約1600人が、いつの日か「放射線晩発障害によって発ガン死しても構わない」ともいえる数値です。また、事故3ヵ月後の福島県飯館村長泥(33㌔北西、文部省調べ)の地表に生き続ける全生命体、土壌、水が浴び続けた累積放射線に匹敵する線量です。いずれにせよ、東北・関東をふくめた広域の焼却場の正確な実態と、安全な処理法を検討するべきであり、納得できる結論が出るまで、焼却作業をただちに中止すべきです。
住民自治の範囲という限界を越えて、真の意味の安全、安心を獲得し、それに近付くためにも、住民1人ひとりの声と力をつなぐこと、そして、市民の連帯をめざした努力が求められているのではないでしょうか。
(本稿は、6/11「原発事故を考える町田市民の会」集会で配布した資料を元にしています。)
追記 6/11in町田、300人パレード実現。在京TV局(朝日ニュースター)1階スタジオ内でも、年間累積換算1㍉シーベルト検出。
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