本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(277)
- 2020年 10月 14日
- 評論・紹介・意見
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1600年に一度の大転換
現在は、「1600年に一度の大転換期」に遭遇しているものと考えているが、具体的には、「3200年前のヒッタイト帝国の滅亡」、そして、「1600年前の西ローマ帝国の滅亡」のことである。別の言葉では、「文明法則史学」が教える「1600年に一度の西洋文明から東洋文明への大転換期」のことでもあるが、今回は、この点に加えて、「カール・ヤスパースの枢軸時代」を考慮する必要性も感じている。
具体的には、4000年ほど前から始まった「農業革命」と「文字の発明」により、「人類の精神レベルが飛躍的に向上した可能性」のことだが、実際には、「ヒッタイト帝国の滅亡以降、世界各地で、華やかな精神文明が大輪を開いた」という状況だったのである。つまり、「エジプト文明」に始まり、「東洋の原始仏教」や「古代キリスト教」、そして、「ギリシャ文明」というように、「現在よりも高度な精神文明が出来上がっていた状況」だったものと考えられるのである。
また、現在の混迷については、「1600年前」に発生した「西ローマ帝国の滅亡」で的確に説明できるものと考えているが、実際には、「大膨張したマネー」が「パンとサーカスの生活態度」を誘発した可能性のことである。つまり、「武力」を背景にした「国家権力」が、最後の段階で、「強大な資金力」を持ったわけだが、この時に重要な意味を持っていたのが、やはり、「マネーの性質」だったものと考えている。
具体的には、「フローの性質」を持つ「実体経済」については、今回の「コロナ・ショック」からも明らかなように、「突如として、全体が収縮する可能性」を秘めていながらも、一方で、「ストックの性質」を持つ「マネー経済」については、「大インフレの発生まで膨張し続ける性質」を持っている事実である。そのために、最後の段階では、「通貨の質が低下しながらも、量的に拡大する」という展開になるが、今回は、ご存じのとおりに、「デジタル通貨から紙幣への大転換」が、急速に発生するものと考えられるのである。
つまり、大膨張したマネーが「本末転倒状態」を作り出すものの、最後の段階で、「大逆転」が発生する状況のことだが、この点に関して興味深い事実は、「ケインズ」が指摘したとおりに、「30年以上も続いた金利の低下」については、「ほとんどの人が、同じ状態が永遠に続く」と錯覚する状況である。しかも、相場の格言から言えることは、現在の「マイナス金利」が「万人が呆れ果てたる値」を意味しており、間もなく、「人類史上、最大の転換期が訪れる可能性」である。(2020.9.17)
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神様との対局
将棋の藤井二冠のコメントからは、いろいろなヒントが得られるものと感じているが、今回は「神様との対局」という言葉が気になった次第である。つまり、「将棋の神様が存在するとしたら、あなたは何を望みますか?」という問いに対して、藤井二冠は、「勝利」や「タイトルの獲得」などではなく、「将棋の神様と対局してみたい」と答えたのである。そして、この答えから私自身が得られたヒントは、「すべての人が、毎日、神様と対局しているのではないか?」ということだったが、実際のところ、「投資」のみならず、「人生」において、「誰もが、最善手を求めて、常に苦悩している状況」とも考えられるのである。
つまり、「お金が神様となり、幸福な人生を送るためには、お金が必要である」と考える現代人にとっては、「お金儲け」に関する「最善手」を求めている状況とも思われるが、この時に重要なポイントは、「どれほど将来を見通せるのか?」とも思われるのである。具体的には、今回の「藤井二冠」の将棋のように、「六億手を読んだ時に、四億手を読んだ時とは、全く別の手が見つかった」というような状況のことである。
より詳しく申し上げると、「既存の常識」を捨て去り、「すべての可能性」を考えた時に、「最善手」が見つかる状況のことだが、この点については、「ケプラーからニュートンへ」という言葉のとおりに、「400年ほど前の自然科学が、まさに、このような状況だったのではないか?」とも感じている。つまり、「天動説から地動説への大転換」のことだが、現在は、より大きな転換期、すなわち、「文明法則史学」が教えるとおりに、「西洋の唯物論」から「東洋の唯心論」への大転換に遭遇している状況とも考えられるのである。
別の言葉では、「西洋人の常識」、あるいは、過去数百年間の「人類の一手」が、「自然は征服すべきものである」という理解、そして、「地球環境の悪化」でもあったが、このような状況下で指された「神様の一手」が「コロナ・ショック」のようにも感じられるのである。つまり、「人類が、戦争や金融戦争などで、富の奪い合いをしていると、人類の存在そのものが、許されなくなる可能性」が提示された可能性のことである。
そのために、現在、必要とされることは、「現時点における最善手」を考えることでもあるが、実際には、「4千年前、あるいは、6千年前にまで、人類の歴史を遡りながら、何故、現在の混乱が発生しているのか?」を考えることである。つまり、「カール・ヤスパース」が主張する「第二の枢軸時代」のとおりに、「工業革命で裕福になった人々が、次に何を求めるのか?」という点を理解することとも言えるようである。(2020.9.23)
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最後の力を振り絞る日米欧の中央銀行
現在、世界の金融市場は、「コロナ・ショックから立ち直りつつある状況」と理解されているようだが、この点を、「中央銀行の資金繰り」から考えると、全く別の姿が浮かび上がってくるものと考えている。つまり、「国債の買い支えにより、超低金利状態を維持することが最優先事項となっている事態」のことだが、現在では、具体的な方策に関して、日々刻々と手段が限られている段階とも言えるのである。
より具体的に申し上げると、「米国の中央銀行であるFRB」については、現在、「総額」が「約7.12兆ドル(約747兆円)」にまで膨れ上がった状況でありながら、すでに、「国債の買い増し」が難しくなった段階のようにも感じられるのである。つまり、「国債買い付けの資金手当て」が難しくなっているために、現時点では、「口先介入」により、「国債価格の下落を防いでいる状況」とも思われるのである。
また、「欧州中央銀行(ECB)」については、現在、「総額」が「約6.53兆ユーロ(約809兆円)」にまで膨れ上がったものの、依然として、「若干の国債買い増しが継続可能な状況」とも言えるようである。そして、「日銀」についても、「総額が約689兆円」、そして、「国債の保有残高が約538兆円」というように、依然として、「若干の買い増し」が可能な状況となっているのである。
しかし、一方で、「日欧の中央銀行が、どのような方法で、国債買い付けの資金を調達しているのか?」を見ると、実際には、「政府からの借入金」が主な調達手段となっていることも見て取れるのである。つまり、今までの推移について振り返ると、最初に「民間の企業や個人からの借り入れ」、そして、次に、「民間金融機関からの借り入れ」という状況だったものが、最近では、「政府からの借り入れ」というように、「最後の力を振り絞っている状態」のようにも感じられるのである。
ただし、一方では、「徐々に、紙幣の増刷が実施され始めている段階」とも言えるために、今後の注目点は、「何時、臨界点に達し、国債価格が暴落するのか?」ということとも想定されるのである。つまり、「1980年代の初頭」から始まった「デリバティブのバブル」と「金利の低下」に関して、「何時、世界中の人々が、実情に気付くのか?」ということでもあるが、実際には、「ウォーレン・バフェット氏」が「金鉱株と割安株」を買い始めたように、「徐々に、変化が発生している段階」に差し掛かっており、間もなく、「劇的な大事件」が発生する状況のようにも感じている。(2020.9.26)
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〔opinion10194:201014〕
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