安倍晋三政権の負のレガシーは徹底して究明されねばならない。
- 2020年 12月 2日
- 評論・紹介・意見
- モリ・カケ安倍政権澤藤統一郎
(2020年12月1日・連続更新2801日)
早いもので、コロナ禍の年も今日から師走である。不忍池の弁天堂には冬ザクラ2本が、さびしげに花を咲かせている。一方、政界は季節外れの「桜を見る会前夜祭」問題で盛りあがっている。
11月23日以来の「サクラ疑惑」再燃だが、25日の東京新聞社説が厳しい内容だった。「『桜』疑惑で聴取 検察の独立を示すとき」という表題。「権力に対峙する検察力を発揮してほしい」「検察が独立していないと政治権力へのチェックはできない。『桜』の疑惑解明は、検察の独立と良心を示す機会でもある」という、検察へのエールとなっている。
権力の分立と均衡が正常に働かず、官邸一極が権力を集中して恣にしてきた現実のなかで、検察への期待の声が上がるのは当然というべきか。社説は、「東京地検には粛々と調べを尽くすことを求める。何より東京地検には過去にロッキード事件やリクルート事件など政界腐敗に切り込んだ歴史がある。それゆえなのか、安倍氏は首相時代に検察幹部の人事に介入しようとした。いわゆる黒川検事長問題である。検察官の定年を定めた検察庁法があるのに、国家公務員の定年延長規定を用いるという解釈変更を強行したが、世論の猛反発もあって挫折した。」と述べている。
産経の11月26日付【主張】も、「桜を見る会 安倍氏はしっかり説明を」と掲げた。こちらは、検察に期待はしていない。「特捜部の捜査を待たずとも、事務所の内部調査で十分に事足りる」という立場。その代わり、安倍晋三には「しっかり説明を」とならざるを得ない。安倍晋三よ、身内同然の産経社説をどう聞くか。
「政治家には説明責任がある。まして首相在任時の国会答弁が事実ではなかった可能性がある。捜査とは別に、自ら進んで経緯をつまびらかにすべきだろう。」「ずるずるとこの問題を長引かせることこそ最悪である。安倍晋三前首相には、迅速で明確な説明を求めたい。」「政治とカネをめぐるさまざまな事件で、『秘書が』『秘書が』と繰り返す政治家の情けない姿をみてきた。安倍氏には前首相として、そうした過去の醜態とは一線を画す潔い姿をみせてほしい。」
「潔い姿をみせての、迅速で明確な説明」のあと、安倍晋三はどうすべきだろうか。産経は明言してないが、議員辞職すべきが当然だろう。産経といえども、議員の職に恋々とする安倍晋三を「潔い姿」とは言えないだろう。
そして、本日(12月1日)の朝日社説である。「国会最終盤 安倍氏の説明欠かせぬ」という表題で、「桜」「学術会議」「森友」の3件のテーマを論じている。
まずは、「桜を見る会」の前夜祭をめぐる問題である。…安倍氏が1年にわたって繰り返してきた説明は偽りだったことになる。国会審議の土台を崩す、看過できない重大事だ。安倍氏は知らなかったと伝えられるが、国会では連日厳しい追及が続いていた。事実関係をどこまで真剣に確かめたのか。直近の5年間で900万円を超える補填の原資はどこから捻出したのか。安倍氏に直接たださねばならない疑問点は尽きない。…刑事責任の有無を判断する捜査とは別に、首相の任にあった者の重い政治責任を踏まえれば、すすんで国会に出て、説明を尽くすのが当然ではないか。
さらに、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否の問題である。
法の趣旨に背き、学術会議の独立性・中立性を脅かす判断に対し、菅首相は「人事の秘密」などを盾に、明確な理由を語っていない。一方で、政府・与党は学術会議のあり方への「論点ずらし」に余念がない。…杉田和博氏本人から国会で直接事情を聴くことなしに、実態は明らかになるまい。
森友問題の解明も進んでいない。自ら命を絶った近畿財務局職員が公文書改ざんの経緯を詳細に記したとされるファイルの提出を、衆院調査局が要求したところ、財務省は訴訟中を理由に文書の存否さえ答えなかったことが報告された。
最後に、本日の毎日新聞社説。「森友問題への政府対応 歯止めかからぬ国会軽視」と題して、森友問題一色である。
学校法人「森友学園」への国有地売却に関する公文書改ざん問題で、財務省が国会から求められた資料の提出を拒んでいる。国会を軽んじる異例の事態だ。
国会には、憲法62条に定める国政調査権がある。これを補完するため、少数会派でも活用できる「予備的調査」という制度が衆院規則で設けられている。40人以上の議員が要請すれば、衆院調査局長らが官公庁に協力を求めて調査する制度だ。今回は野党議員128人が要請していた。
ところが、麻生太郎財務相は、赤木さんの妻と国などの間で民事訴訟が続いているとし、「訴訟に影響を及ぼすべきではないので回答を控えたい」と語っている。財務省の対応は、制度の趣旨や議長の提案をないがしろにするものだ。
麻生氏や当時の佐川宣寿理財局長らが約1年半の間に、この問題について国会で事実と異なる答弁を139回していたことも調査で明らかになった。
国会を尊重し、これを機能させるのが内閣の責務だ。虚偽答弁や調査への回答拒否が続けば、国会は本来の役割を果たせない。
安倍晋三政権は何のレガシーも残さなかった。残したものは、国政私物化の後始末であり、国会軽視の「嘘とゴマカシ」の政治姿勢の後遺症である。はしなくも、本日の朝日・毎日両氏の社説が、危機感をもってこの点に触れている。
朝日は「今国会は残り5日となり、政府・与党は会期を延長しない方針だ。しかし、一連の疑惑をうやむやにしたまま終わっては、立法府の存在意義が揺らぐことになろう。」と言い、毎日は「議会は民主主義の土台だ。前政権から続く国会軽視の姿勢を、政府は改める必要がある」と言っている。そう指摘せざるを得ない事態なのだ。まさしく、民主主義の土台を揺るがせてきた、安倍・菅両政権の責任は重い。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.12.1より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=15990
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〔opinion10330:201202〕
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