核禁条約不参加の日本政府への批判強まる 条約発効を前にして
- 2021年 1月 14日
- 時代をみる
- 岩垂 弘核核兵器禁止条約
核兵器を全面禁止する核兵器禁止条約が1月22日に発効するが、それを前にして同条約に参加しない日本政府に国内各界から批判が強まっている。戦争で使われた核兵器で甚大な被害を受けた唯一の国の政府がこの条約にそっぽを向くという事態は、国際的にも批判を浴びそうだ。
核兵器禁止条約は2017年7月、国連の会議で、国連加盟国193カ国のうち122カ国が賛成して採択された。核兵器そのものを非合法化する初めての国際条約で、核兵器の開発、実験、生産、製造、保有、貯蔵、移譲、使用及び使用の威嚇を禁止するのみならず、これらの禁止行為の奨励や誘導を禁止するという国際政治史上画期的な条約である。
条約に署名した国のうち50カ国が批准すれば、その90日後に条約が発効する。昨年の10月24日にホンジュラスが批准したことで批准国が50に達したので、今年の1月22日に発効する運びとなった。その後、批准国が一つ増えたので、現在の批准国は51だ。
日本政府は、2017年7月の国連の会議に参加せず、条約採択後も、条約に署名・批准することはない、と言明してきた。条約批准国が50を超した後に開かれた参院予算委員会(2020年11月5日)でも、菅首相は「わが国の立場に照らし、条約に署名する考えはない」と述べた。
さらに、菅首相は今年1月7日の記者会見で「我が国の立場に照らし合わせたときに、同条約に署名する考えはない」「条約は、米国を含む核兵器国、また、多くの非核兵器国からも支持を得られていない。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中にあって、抑止力の維持、そして、強化を含めて現実の安全保障の脅威に適切に対応しながら、地道に現実的な核軍縮を前進させる道筋を求めていくべきだと思う」と述べた。
要するに、国の安全保障を米国の「核の傘」に依存している以上、核兵器禁止条約には参加できない、というのが日本政府の本音だろう。
これに対し、国内でさまざまな動きが出ている。
被爆者の団体である日本原水爆被害者団体協議会は、日本政府に対し核兵器禁止条約への署名・批准を求める運動の一つとして、各政党と全国会議員に向けたアンケートを昨年12月初めに発送した。政党には、所属する国会議員は核兵器禁止条約の発効を知っているか、条約に反対している日本政府の姿勢をどう思うかの2点を、全国会議員には以上2点に加えて、条約を読んだことがあるか、被爆者の証言をきいたことがあるか、などを尋ねている。結果は1月に発表するという。
原水爆禁止日本協議会(原水協)は、昨年10月29日から、「日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求める署名」を始めた。署名用紙には「唯一の戦争被爆国である日本政府は、核兵器廃絶の先頭に立たなければなりません」とある。署名共同呼びかけ人137人には、内田樹(神戸女学院大学名誉教授)、坂本龍一(音楽家)、セツコ・サーロー(広島被爆者・カナダ在住)、田中眞紀子(元外務大臣)、平野啓一郎(小説家)、益川敏英(名古屋足せて学特別教授)、吉原毅(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟会長)の各氏らが名を連ねている。
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)は昨年12月19日、長崎市で「核兵器禁止条約批准50か国達成!日本政府に批准を求める原水禁九州ブロック集会inナガサキ」を開いた。180人が集まり、市内をデモ行進した。
地方自治体では、議会で日本政府に条約への署名・批准を求める意見書を決議するところが続出している。原水協の集計によると、1月7日現在、520にのぼる。これは県・市町村自治体議会合計1788の29%だ。
とくに東北・甲信越の議会が多く、東北では岩手県で全ての地方自体議会が意見書を決議した(100%)ほか、秋田県では85%、山形県では56%、宮城県では47%、福島県では40%、青森県では32%の自治体議会が、それぞれ同様の意見書を決議している。甲信越では、新潟県の81%、長野県の67%が目立つ。他には、広島、岡山両県の71%、鳥取県の60%、高知県の57%が突出する。
こうした動きのほか、「1月22日」に向けてアピールを準備中の団体もある。
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