森喜朗よ、男だろう。ラガー根性を見せろ。会長の地位にしがみつけ。あなたこそ、東京オリンピックの顔にふさわしい。
- 2021年 2月 6日
- 評論・紹介・意見
- オリンピック両性の平等澤藤統一郎
(2021年2月6日)
森喜朗よ、あなたは早稲田のラグビー部推薦入学者だというではないか。ラグビーこそは男のスポーツだ。あなたこそ、男の中の男。あなたの男としての精神は、ラグビーで培い、ラグビーで磨き上げたもの。あなたの女性蔑視発言は、スポーツで鍛えたあなたの精神を多くの人々が誤解しているだけだ。自信をもって、今の地位にしがみつけ。
森喜朗よ、今をまさにラグビーの試合中と思え。つかんだボールをしっかりと持って走るのだ。多くのタックルをものともせずにトライを目指す。このことに、一筋の迷いもあってはならない。
森喜朗よ、あなたは男だ。東京五輪組織委員会会長職をいったん引き受けた上は、弱音を吐いて逃げ出したりはしない。途中で職を投げ出して、敵に後ろを見せるのは男の恥だ。毛ほども女々しさを見せてはならない。
森喜朗よ、ものには釣り合いというものがある。富士には月見草がよく似合う。鳩にはオリーブの葉。靖国には軍服姿の進軍ラッパ。そして東京五輪には、誰よりもあなたがよく似合うのだ。かつては、ウソとゴマカシと政治の私物化を象徴していた安倍晋三が東京五輪に最も似合う男だった。その安倍が跡を濁しながら退陣した今、森喜朗よ、あなたこそが東京五輪とピッタリのイメージだ。とうてい余人をもって換えがたい。
本日の毎日新聞朝刊社会面のトップには、無責任な「都内100人調査」という次の記事が掲載されている。
「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)による女性蔑視発言を人々はどう見ているのか――。毎日新聞が5日、東京都内4カ所で100人に聞いたところ、「森会長は辞任すべきだ」と答えた人は全体の約8割に上った。国際オリンピック委員会(IOC)と政府は森会長の謝罪と発言の撤回をもって「幕引き」としたい考えだが、国民感情との「ズレ」が浮かび上がった。」
正確には、「辞任すべきだ」と「辞任の必要はない」の比率は、78人対18人だ。森喜朗よ、100人中の18人もあなたの味方がいる。心強い限りではないか。2割に満たない少数派であるが、少数者の意見を尊重することこそ、民主主義の本領ではないか。もっとも、「森会長の言っていることに異論はない」と発言を擁護する人は、100人中のたった一人だけだったそうだが。
「街頭取材からは、辞任を求める人の多くが、森会長が国際的な祭典における「顔」にふさわしくない、と考えている様子が浮かんだ。」
毎日の記事は、そう締めくくられているが、これは明らかに誤解に基づくものだ。そうではないか、森喜朗よ。「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるということを国民のみなさんにしっかりと承知していただく。」というのが、あなたが首相の時代に宣言した真理ではないか。
誰もが知っているとおり、日本の国とは男系男子の天皇の国。女子は男子を立てるところに婦徳を示す。このことをしっかりと承知していただかねばならない。日本で行われるオリンピックでは、日本の歴史や風俗や日本の国柄を尊重していただき、日本の国情にしたがって行われるべきが当然ではないか。天皇の国では、男が中心、日本民族が中心、天皇を戴く神の国であることをしっかりと承知している人が中心で、そのためには森喜朗よ、あなた以外に東京五輪にふさわしい顔はない。
また、オリンピックを、神聖なもの、世界の良識を結集した立派なものと考えていることがおかしい。カネと権力の誇示の舞台でしかないと現実を認識すれば、森喜朗よ、あなたとオリンピックはお似合いなのだ。
森喜朗よ、あなたのこれまでの数々の「失言癖」を指摘し、会長職辞任を求める声が巷に渦巻いている。しかし、あなたは決して「失言」をしているのではない。このことに自信をもたねばならない。あれは全て、あなたの信念の発露なのだ。
森喜朗よ、あなたが辞任を否定したことで、批判の矛先は政府やIOCに向かっている。これは、素晴らしいことではないか。日本の政府も、IOCも、そしてあなたも、どっこいどっこい、カネと国威発揚に汚れた者どおしとして、お似合いなことがみんなの目にはっきりと見えるようになってくる。
森喜朗よ、そのあなたが、「元々、会長職に未練はなく、いったんは辞任する腹を決めた」という報道に落胆した。が、間もなく辞任を翻意したとの報道に安心した。
辞任翻意の理由は、「みんなから慰留されました」「武藤敏郎事務総長らの強い説得で思いとどまった」「いま会長が辞めれば、IOCが心配するし、日本の信用もなくなる。ここは耐えてください、と」
そのとおりだ。森喜朗よ。あなたは、男だ。もとはラグビーの選手じゃないか。国内外からの、女性蔑視発言バッシングに堪えるだけでなく、反撃せよ。記者会見では、とことん、やり合え。「もう、発言は撤回したから文句はないだろう」「もう、謝ったじゃないか」「いったい何度謝ったらいいんだ。」「不可逆的に解決済みのはずだ」「面白おかしく報道するための質問には答えない」とがんばれ。
また、ときには、こうも言うべきではないか。
「私の発言に、反省すべきところはない」「キミたちは、人の口を封じて言論を弾圧しようとするのか」「この天皇の国では、男性と女性の在り方に区別あって当然なのだ」「世界の人に、日本の国情を理解してもらわねばならない」
森喜朗よ、あなたが語ったとおり、「報道はされていませんが、たくさんの(保守系の)国会議員からも激励され」ているのだ。あきらめるな。今の地位にとどまれ。そして、東京五輪と日本精神の何たるかの両者を、あなたの発言と行動を通じて世に知らしめよ。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.2.6より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=16293
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10533:210206〕
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