武力鎮圧にそなえ、同時多発デモを分散して展開せよ!
- 2021年 2月 12日
- 評論・紹介・意見
- ミャンマー野上俊明
SNSでの呼びかけであろう、一か所に固まらずそれぞれの居場所で分散して同時多発的に抗議行動を呼びかけているという。Z世代と呼ばれる若者たちの創意工夫した抗議形態も話題を呼んでいる。
<Pick Upここ数日の動き>
●アメリカ制裁発動、EUも制裁に向け準備
11日、アメリカ・ホワイトハウスはミンアウンライン国軍総司令官を含む国軍関係者10人と、国軍系の3企業を制裁対象に指定し、制裁を発動したと発表。EU と英国は、国軍幹部や国軍がからむ事業や企業に制裁を科す検討に入った由。ミャンマーへの貿易や開発援助も検討対象になるという。
●ココジー、交渉仲介する意思表明―ミャンマー・タイムズ(電子版)2/10
1988年反乱を指導した学生活動家らが設立した政党「人民党」のコーコージー党首が、国軍の指導者らと事態の収拾に向けた交渉を担当する民主派チームの責任者に任命されたとの報道があった。しかしココジー自身は反クーデタ運動の代表ではなく、あくまで運動側と国軍側との交渉の橋渡し役だとしているようである。11月選挙で負けたココジーの政治力は落ちており、彼による中途半端な仲介は両陣営とも受け入れないであろう。それとはおそらく別な動きであろう、2/11時事通信は、「カイン(カレン)族の代表は、多数派のビルマ族を含む16民族が独裁体制の打倒を目的とする『スト委員会』を設置したと宣言」としている。これと並行してヤンゴンでは、同じグループがヤンゴンで示威行進している。
●2/9深夜、国軍は無人のヤンゴン・NLD本部事務所に押し入り、令状もなしに金庫を壊したり書類を持ち去ったりした。法の支配をまるで理解していない国軍の正体見たりであるが、こうした無法の統治が半世紀以上にもわたって続けられてきたのである。筆者は、国軍栄えて国滅ぶ有様を実体験してきた。
●国軍の弾圧作戦の常套手段であるが、囚人ややくざ者を集めてスト破りを画策している。そのほか刑務所の囚人23,000人を釈放したという。社会不安を醸成して反軍の意思をくじこうとしているのである。
<筆者のコメント>
国軍との妥協体制であるNLD政権のもと、必ずしも十分くみ取ってもらえなかった民意が一気に噴出している。クーデタが寝た子を起こしたのである。NLDが草の根の紛争を解決するために尽力したという話はまず聞かない。スーチー国家顧問のもと統制のとれた議会運営は進んでいるようであるが、少数民族、イスラム・ヒンズー教徒などのマイノリティ、公共事業やアグリビジネスの被害者である農民、都市スラムの貧困層なども包摂する政治勢力づくりはほとんど手つかずであった。草の根の生きた活動と結びつかなければ、どんな政党でもエネルギーを枯渇させ、既成政党化し硬直化する。そうしたなかクーデタによって、自分たちが選んだ指導者を国軍が拉致し権力を簒奪したことへの全人民的怒りが爆発したのである。2007年とちがって、国民は制限があっても自由の空気を5年間にわたって経験してきた。そうした土台があって、SNSが司令塔の欠如を補って全国的な意思統一の形成に決定的役割を果たしている。これは先進国でも学べる教訓であろう。
ただ司令塔不在のままでは運動の継続は危ぶまれる。分散的抵抗とともに強固な意思を持った指導部が形成されなければ、長期の抵抗持続は難しい。国軍が恐ろしいのは、その歴史上交渉してことを進める経験を持たないことである。今回のクーデタそのものがそうなのであるが、武力による成功体験した持たない彼らが、それ以外の平和的な方法で解決に臨む可能性はかなり低いとみなければならないであろう。
<Pick Up Photos>
頭を撃たれ、真っ赤に血に染まって倒れる20歳の学生ミャトェトェカイン:彼女の兄は、軍事独裁政権は、将来の世代のために根絶されなければなりません、悲しみをこらえて言った。
火曜日にネピドーで行われたクーデター反対運動中に警察官に頭を撃たれた彼女は、その夜脳死したと宣告された。
幹部警官がデモ隊を狙い撃ち 首都ネーピードウ FRANCE 24
2007年、フリージャーナリスト長井さんが撃たれたときは、まだSNSは普及していなかったので、犯人は突き止められなかった。
学校教師 ヤンゴンの中国大使館に向け抗議デモ Guardian
ミャンマー随一の観光地インレー湖でも 「我々は正義を欲する」というプラカードが見える Guardian
古都マンダレーの僧侶たちも立ち上がった Guardian
Z世代は、機知と勇気とインターネットを使って、ミャンマーの軍隊に抗議する新しい抗議形態―「私の元彼は悪い人でしたが、軍隊はもっと悪いです!」「私は独裁政権を望んでいません、私は恋人が欲しいのです!」TAZ
ヤンゴン市内で Guardian
中国国境の町、ムセでも抗議拡大、中国に国軍の後ろ盾となるなという意味合いの漢字表記か
バンコク ミャンマー大使館前 日テレ
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10551:210212〕
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