「救援新聞・みんなのひろば欄」に見る、《裁判のIT化反対》の声。
- 2021年 2月 12日
- 評論・紹介・意見
- 司法制度大衆運動澤藤統一郎
(2021年2月12日)
「日本国民救援会」の機関紙『救援新聞』は旬刊である。毎月、5日・15日・25日付の各号が発行され郵送されてくる。最新の2月15日号が届いた。通算で1975号になる。その持続性に脱帽するしかない。
もちろん記事の中心は、救援会本来の活動分野である冤罪被害者救援や、冤罪を生む土壌となっている権力の横暴を抑止する運動についてのもの。だが、原発訴訟や労働訴訟などにも目配りを怠らない。改憲や悪法制定への警戒を呼び掛ける記事も充実している。
2月15日号の一面は、「『もの言う』自由守ろう」「警察庁の尋問実現を(岐阜地裁)」と見出しを打った、大垣警察市民監視違憲訴訟の報告記事。
岐阜県で風力発電建設をめぐり勉強会を開いた住民2人と、勉強会と無関係の市民2人の個人情報を警察が収集し、企業に提供していた事件。4人は監視等は違憲として警察(国と県)を相手に国家賠償請求と情報の抹消請求を求めています。
1月27日におこなわれた進行協議で原告側が求めている警備公安警察官らの証人尋問がおおよそ決まりました。次回の口頭弁論で正式決定されます。
本文では、大垣警察署の警備課長ら2名に岐阜県警警備部の1名を加えた計3名の警察官の証人採用と日程がほぼ決まった。しかし、原告側は真相を究明するためには、さらに警察庁警備局長の尋問が必要としてその採用を求めているという。予てから注目されていた国家賠償訴訟だが、いよいよ山場なのだ。
特にお伝えしたいのは、毎号読者の投稿を掲載している「みんなのひろば」欄。今号には10名の「お便り」があるが、《裁判のIT化》に触れているのが冒頭の3通。
愛知・古谷延男
裁判のIT化がおこなわれようとしているそうですが、容認できません。法廷での口頭弁論を開かずに。「ウェブ会議」で代替するとなると、裁判は形骸化し事務的となると思います。真実は人間と人間との直接の対話と傍聴者がいてこそ明らかにされます。その関係を阻害する法律には賛成できません。
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北海道・宮越栄
民事裁判手続のIT化が法制審議会で見直し議論が進められているとのこと。それは、過去国民救援会などが中心にたたかってきた様々な裁判闘争を嫌う権力が法廷外での国民の支援闘争を押さえるためのもの以外考えられません。一般人には全く知らされておらず、救援新聞の果たす役割は大きいです。
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東京・佐々木治代
「民事裁判手続きのIT化」の記事を続んで。口頭弁論をウェブ会議で代替して実施できるよう検討しているということですが、裁判の中身を見えなく化していくことに通じると思います。デジタル庁はその実施のための布石なのでしょうか。
まったく同感である。訴訟とは、単に紛争処理の手続ではない。政治的・経済的・社会的強者の理不尽を糺して、弱者を泣き寝入りから救済する場なのだ。その本来役割を果たすためには、裁判官は当事者の悩みの深刻さに共感できなくてはならない。法廷で間近な距離で、全身全霊をもって必死に訴える者の肉声に耳を傾けなくてはならない。デジタルやOn-lineではなく、生身の声をきけ。記号となった陳述書の文字で足りると考えてはならない。民事裁判手続のIT化反対の的確さは、国民救援会ならではのものであろう。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.2.12より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=16317
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10552:210212〕
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