戦いの前線に立つフェイスブック(ミャンマー) 苛烈なデモ規制、メディア規制の国軍
- 2021年 4月 1日
- 評論・紹介・意見
- クーデターミャンマー弾圧隅井孝雄
▼ミャンマー国軍VSフェイスブック
ミャンマーではフェイスブックが国軍を相手に果敢に戦っている。
フェイスブックは2月21日、国軍の運営するページを「暴力行為を扇動している」という理由で閉鎖した(2/21AFP)。
続いて27日には国軍が支配するメディアなどによる利用、国軍系企業による広告出稿も禁じた。削除対象には「軍高官や軍に関連するネットTVミヤワディなど20の個人、組織なども削除した」ことを明らかにした(2/27ロイター)。
ミャンマーでは、クーデターの直後インターネットが不通になったが、今は深夜と早朝を除き利用できる。
フェイスブックなどSNSは国軍が使用できないような措置をとった。しかし市民の多くはVPN(仮想プライベートネットワーク)を経由してフェイスブックその他のSNSに復帰している。
▼断トツ高いフェイスブック普及率
ミャンマーでは、2011年の民政移管以来、スマートフォンを多くの市民が手にするようになった。スマホの普及は人口(5700万)の半数以上、およそ2900万台に達しているとみられている。ツイッター、インスタグラムなどを含むSNS全体の中でフェイスブックは断突のシェア率は94%だ。
抗議活動もZ世代の若者たちが、フェイスブックで連携している。2月22日のゼネストも若者のネット経由の呼びかけで、ミャンマー全土で展開された。参加した市民は100万人に上る。ニューズウイーク(日本版3/16)が伝えるところによると「治安部隊の発砲で頻発する死亡事故に際しても、現場で、担架で運ばれる負傷者の姿や、銃撃を受けて倒れる市民を捉えた映像が次々にフェイスブックなどネット映像で拡散している」と伝えている。
▼TikTokが国軍支持者の発信元
ミャンマー国軍は2月22日、2万3000人の服役者を釈放した。抵抗をやめない市民に恐怖感を植え付ける手法だ。1988年のクーデターの際にも同じ手法を軍はとったのだと伝えられる。そのあと放火、略奪、誘拐など事件が次々に起きた繰り返えしがおきている。
それに加えて今回はスマホの自撮りで「今夜俺はパトロールに出る、アウンサンスー・チーを支援する奴ら(マザーファッカー)は撃ちぬいて殺してやる」( ニューズウイーク日本版3/16)という、などという脅迫まがいの映像も流れた。
これら軍協力者や軍関係者の発信源はTikTokだというのも意味深だ。軍関係者が中国の支援を受けている証拠になるというわけではないが、フェイスブックの使えない軍や軍支持者らが中国発のアプリに親和感を持っていることはありうる。
▼FB批判挽回図る?
2018年、イスラム系少数民族ロヒンギャ虐殺事件が起きた際、フェイスブックは「憎悪拡散に十分な対応をとっていない、むしろ都合の良いプラットフォームになっている」との批判を、国連ロヒンギャ問題調査団から受けた。今回はその批判からの名誉挽回をフェイスブックは試みているものとみられる。
ニューズウイークはミャンマーのある市民の声を伝えている。「私たちはこの瞬間にも、隠れながらスマホで撮影し、フェイスブックに投稿を続けている。軍が私たちの分断を画策しているが、市民は結束してフェイスブック武器に連帯を示す」。
▼ジャーナリスト迫害、独立5社閉鎖
ミャンマーの独立系インターネット有力メディア「イラワジ」はクーデター以来、一貫して国軍批判の報道を続けてきた。ところが3月12日「社会の不安をあおっている」として軍事政権から告発をうけた。記者個人への迫害は多くみられたが、メディアが組織として告発されるのは初めてのことだった。
これに前後して国軍は15日までに39人のジャーナリストを逮捕、解放の条件としてデモを報道ないという誓約書への署名を強制しているという。
また17日までに「スタンダードタイムス」、「ビルマの民主の声」など5紙の新聞発行が停止された。「ミャンマーナウ」の編集長(新聞とネットの両方を出している)は「報道を継続すれば投獄や殺害の危険があるが、国軍の非道な犯罪を取材し続ける」と表明した。「ミャンマーナウ」は今後インターネットを通じて報道する。
▼臆することなくデモする若者たち
3/27の時点で、弾圧によるミャンマー市民の死者は423人に達した。世界の批判を浴びながら、ミャンマー国軍は弾圧を続けている。一方市民の側は犠牲者を出しながら、抗議デモは止まらずに続いている。
ミャンマーの平和の回復を祈るほかはない。
ミャンマー国軍独立系5社の新聞発刊を禁止に抗議するデモ隊 3.09(東京新聞)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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