くらしを見つめる会つーしん NO.214から 2021年4月発行 発行係 村山・アマノ
- 2021年 4月 26日
- 交流の広場
- 村山起久子
◆「専門家」のいかがわしさ
地震や火山の爆発を予知した専門家は過去一人もいないのに、更田(ふけた)委員長以下原子力規制委員会(5人)にはその地震・火山の専門家もいない。大規模噴火によって、火砕流が流れなくても火山灰が相当量降れば原発の非常用冷却装置は機能しなくなるから、燃料棒を引き上げ安全なところまで輸送しなければならないが、燃えている燃料棒に近づけるわけがないから、仮に停止させても数年かけて冷やす時間がいる。つまり、数年前に予知できなければ破局的な事故に至るのだが、更田らはなぜか予知が可能だという。
真の専門家(科学者)の役割とは、人類が知り得た自然の摂理は実にささやかで、もっともっと謙虚でなければならない、ということを社会に説明することではないのか。
規制委員会は旧原子力・安全保安庁が推進と保安という<アクセルとブレーキ>の相反する業務を担っていたという反省から「規制委員会」に改め、出発に当たって「失われた原子力行政への信頼回復を第一におく」という『国民への誓い』を掲げたが、この誓いはいまや規制委員会のHPにもどこにも見当たらない。
裁判官も同様で、砂川事件上告審では(最高裁昭和34年12月16日大法廷判決)日米安保の合憲性判断について、時の最高裁判所長官・田中耕太郎は、判決前にアメリカと協議を行い、「統治行為論」を展開して、日米安保を司法審査の対象外とした。
これ以降、国策に逆らった裁判官は左遷され、従った裁判官が栄転することが普通になった。実態は、『絶望の裁判所』,『原発と裁判官』、『法服の王国』、『裁判官も人である』などに詳しい。
いま第4波が来たとされる新型コロナへの対応を巡っても、西村経済再生担当大臣が新型コロナ対策担当大臣という<アクセルとブレーキ>の相反する業務を担った。そのもとで尾身分科会委員長などは「移動自体は問題ない」としてGOTO政策にGOサインを出し、感染拡大に拍車をかけた。この人も何の専門家なのか訝しい。国策におもねる専門家などいらない。職業倫理に沿って身命をささげる人達が重用される社会でなければ、社会の安全は確保できないことを肝に銘じるべきではないか。 (Facebookに投稿した文を編集 児玉正人)
【編集後記】
東京オリンピックの聖火リレーが福島県Jビレッジからスタートしました。東日本大震災が起きた時間、午後2時46分にスタートするという神経も疑いますが、高汚染地域に人を集め、若年層も走らせることを恐ろしく思います。Jビレッジの土壌には103万㏃/㎏という汚染があって、チェルノブイリで計測された放射性セシウムによる土壌汚染最高値の3・6倍!(*注1)日本は空間線量(γ線)しか計測していませんが、土壌を計測しないと実際の汚染は計測できず(人体にとって危険な内部被曝の影響が大きい)α線やβ線もわかりません。
また、日本はチェルノブイリで立ち入り禁止ゾーンになっているのと同様の高汚染域を「避難指示解除準備地域」とし、チェルノブイリの「強制移住地域」を「避難指示区域外」として移住の権利さえ認めていません。放射能汚染もそれによる健康影響も「無いこと」にして、避難すべき高汚染地域に帰るよう促し、帰還しないと補償もしない。住民の健康より、原発やオリンピック利権を守ろうとする日本政府。オリンピックについてほとんど批判しないマスコミも、被曝の実害を報じないで「風評被害」ばかり強調しています。福島では小児甲状腺癌が30万人の検査で248人(通常100万人当たり0~3人)だったのに、被曝との因果関係は無いとされ、風評被害を広めるからと癌になったことさえ口外しにくいとのこと。自分や子どもが「癌」と診断されそんな状況だったら、どんなに悲しく悔しいことでしょう。
健康影響は癌だけではありません。『チェルノブイリ被害の全貌』によれば血液・リンパ系疾患、循環器系疾患・免疫系疾患などが事故以後倍増。チェルノブイリ、広島・長崎原爆、原水爆実験後など世界各国の被ばく者に共通する原爆ぶらぶら病(脳下垂体の様々なホルモンが低下して起きる理解力・気力・抵抗力・治癒力等低下)の症状に多くの人が苦しめられています。(*注2)健康・平穏な暮らし・豊かな自然・人とのつながり・・福島原発事故によって失ったものは測り知れないのに、金銭的な補償さえされないで放置されている人たち。オリンピックを楽しみにされている方もあることでしょうけれど、福島原発事故を巡る問題だけでも復興五輪は欺瞞です。気が遠くなるほどの理不尽の中で苦しめられている被災者は明日の私かもしれません。様々なことが「なかったこと」にされないよう意義申したいと思います。
(*注1)103万㏃/㎏をチェルノブイリ式に/㎡にすると6695万㏃/㎡。チェルノブイリで計測された放射性セシウムによる土壌汚染の最高値1850万㏃/㎡の3・6倍。
(*注2)ロシアをはじめ迫害を受けながら被曝による健康被害のデータを集め研究する学者、被災者に寄り添って診療する医師、被害の現状を発信する人など勇気ある人々によって数多くの事実が明らかにされているが、国際機関はそうした事実を認めようとせず、調査もしていない。
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