SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】424 イスラエルのガザ侵略
- 2021年 5月 20日
- 評論・紹介・意見
- イスラエルサハラパレスチナ中東平田伊都子西サハラ
5月15日のメデイア・センター・ビル崩壊を見ましたか? 見逃した方のため、BBC・TVアドナン記者のレポートを再録します、、 ヘルメットと防弾チョッキで身を固めたアドナン記者は、メデイア・センター・ビルに面したビルの屋上から被写体を背にし、カメラに向かって中継をしていました。 「アドナン、やばかったら逃げろ!イスラエルのターゲットはメディア・センターだ。奴らは威嚇爆撃を3回やって、本チャン爆撃をしてくる」と、映像を受ける支局ディレクターが叫びました。 その瞬間、新型爆弾がビルに炸裂し、ビルは土台から崩れ落ちました。 アドナンは無事でした。
① <ナクバ>の日、イスラエル軍はメディア・センター・ビルと難民キャンプを爆撃:
2021年5月7日、聖地エルサレムでラマダン(断食月)最後の金曜集団礼拝をするイスラム教徒のパレスチナ人に、イスラエル軍が挑発攻撃をした。礼拝をする善男善女は反発し、イスラエル軍はいつものように催涙ガスや威嚇射撃でパレスチナ人たちを襲い、パレスチナ人に多数の負傷者が出た。この事件がきっかけで、パレスチナ・ガザのハマス(イスラム抵抗運動)とイスラエル軍の戦闘が始まった。但し、ハマスとイスラエルの軍事力は、イラク戦争でのイラクとアメリカ、または、第二次世界大戦の日本とアメリカ軍、に例えられるくらい大きな差がある。
それを承知で、ハマスは5月11日、イスラエル領土に向けてロケット弾130発を発射した。イスラエルのネタニヤフ首相は仕掛けた罠にかかったハマスを<テロリスト>と仇名し、猛空爆を開始した。このところ、ネタニヤフ首相の人気はガタ落ちで、好戦的なイスラエル人を繋ぎとめておこうと、イスラエル首相は、空爆に加え9,000人の予備役に召集をかけ地上攻撃も始めた。バイデン米大統領はトランプ前大統領と同様にイスラエル支持者で、「テロリスト攻撃はイスラエルの防衛権行使だ」と、ネタニヤフ首相を鼓舞した。
5月12日、日本の防衛副大臣が「私たちの心はイスラエルと共にあります」と、ツイートした。5月14日、勢いづいたネタニヤフ首相は「バイデンや友好な国々が、イスラエルのパレスチナ攻撃を支持」と、テレビ演説し、ドローンも動員して大空爆を続けた。
そして5月15日、1948年イスラエル建国のこの日、ネタニヤフ首相はガザのメディア・センター・ビルに、ハマスの情報拠点という理由で爆破命令を出した。ハマス関係者の家という理由で、ビーチ難民キャンプの一角でラマダン明けの食事を祝う一家を空爆し、10人を一度に爆殺した。奇跡的に命を取り留めた赤ん坊も重傷を負わされた。
同じ1948年5月15日は、パレスチナ人にとってイスラエル建国で追われた70万人のパレスチナ人が難民になった日で、<ナクバ(アラビア語で大惨事)>の日と記憶に留められ、毎年デモが行われている。
イスラエル軍に刃向かうインテイファーダ(人民蜂起)の子供たち
② 3回の国連安保理パレスチナ緊急特別会議はアメリカの反対で決議表明出せず:
<アラブ・グループ>の5月議長を務めるスフィアン・ミムーニ・アルジェリア国連大
使が、パレスチナに関する安保理緊急特別会議を提唱し、5月12日に国連安保理ビデオ会議が開かれた。が、アメリカだけの反対で戦闘非難声明すら出すことができなかった。5月16日の日曜日、再び国連安保理パレスチナ緊急特別会議が開かれた。が、この日もアメリカの反対で、声明は出せなかった。
5月17日、国連定例記者会見で報道官がガザの状況を報告した。報道官は、「ガザ攻
撃で38,000人が国内難民となり、家屋倒壊で2,500人以上がホームレスとなり、ガザにある学校を含む48の教育施設が被害を被った。電気の供給は一日に5~6時間で、水不足に加え医療機関も機能していない。イスラエル軍がガザに入る検問所を閉鎖しているので、食料や燃料や医療品などの国際援助物資を、ガザの人々に届けられない」と語った。
報道官の寄付を募る現情報告に、記者たちは「戦闘を止めるため、国連事務総長は何を
やろうとしているのか」と、問い質した。報道官は、「様々なチャンネルでコンタクトを取
っている。特に、国連中東特別調整官とは連絡を密にしている」と答えた。ガザ・メデイ
ア・センター・ビルの爆破に関して、国境なき記者団がICC(国際刑事裁判所)に戦争犯
罪調査を依頼した。このビルにはアル・ジャジーラやAPを始めとした23の国際報道機関
と地元の報道機関が入っていた。ビルのオーナーは「私たちはハマスではない。ハマス情
報機関はこのビルに入居していない」と、証言した。
「ICC(国際刑事裁判所)にイスラエルが告訴されたことへの国連事務総長のコメント
は?」との記者の質問に、「我々はICC (国際刑事裁判所) の代弁者じゃない。ICC(国際刑事裁判所)に聞いてくれ」と、報道官は答えた。
パレスチナ記者アブデル・ハミードは「ガザ戦争が、エルサレム聖地にあるアクサ・モスクでのイスラエル軍による挑発で始まったことは、周知の事実だ。トル・ウェネスランド国連中東特別調整官(ノルウェー外交官) は国連安保理で、ハマスのロケット攻撃に対するイスラエル軍の正当防衛だと、イスラエルの自衛権を仄めかせている。事実に反するんじゃないか?事務総長は、両戦闘員に自制を求めるといったが、イスエルとハマスの戦闘能力は同等ではない。かたや原爆と最新兵器を備えた大軍隊なのに、ハマスは手作り火器しか持っていない。それを総長は同じレベルの戦闘員とするのか?」と、聞いた。報道官は「戦闘能力の分析はあんたの判断だ。問題は戦力ではなく戦闘にある」と、答えた。
③ パレスチナ国連大使の記者会見:
5月18日の国連定例記者会見場には、いつも3,4人しかいなのに20人近くの記者たちが集まった。前日に続き記者たちの質問は、「イスラエルとパレスチナの<停戦>に向けて、国連事務総長はどんな努力をしているのか?」に集中した。報道官は前日のように、「ウェネスランド国連中東パレスチナ特別調整官が外交努力を続けている。総長は調整官始め関係者と電話で連絡を取り続けている」と、繰り返した。「ガザに入る食料品や医療品などを、イスラエル軍が検問所で止めているが、国連はどうして介入しないのか?」という質問に、「イスラエルは治安のためだと、封鎖を解かない」と、答えた。
この日の国連記者会見室に人が集まったのは、リヤド・マンスール・パレスチナ自治政府国連大使の記者会見があったからだ。3回の国連安保理パレスチナ緊急特別会議を呼び掛けたスフィアン・ミムーニ・アルジェリア国連大使がアラブ・グループ五月議長としてこの会見も主催し、アブドゥ・アバッリ・ニジェール国連大使もOIC(イスラム協力機構)の五月議長として参加した。
パレスチナ国連大使は、「ネタニヤフに<侵略>の口実を与えてはいけない。この侵略はラマダン最後の集団礼拝から始まったネタニヤフの罠だ。イスラエルの軍事侵略によって、ガザでは61人の子供と36人の女性と16人の老人を含む、計213人が殺された。7,000棟のビルが破壊され50,000の難民がUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の学校に避難している。イスラエル軍は電気も食料も水もカットし、人道支援物資のトラックも検問所で止めている。これは、緊急援助を行使できないグテーレス国連事務総長の責任だ。パレスチナ人の命と安全を守れない国連安保理の、責任だ。国連安保理がアメリカ一か国の反対で一致した<侵略反対>の声明を出せないのは、国連の恥だ。弱者の味方を連呼する国連が,その責務を果たせないのなら、国連の存在は無意味だ。イスラエルの自衛権を主張するが、パレスチナの人権や生存権はどうなっているんだ!パレスチナ人民は、ニューヨークでシカゴでワシントンでシドニーでマレーシアでインドネシアで、ヨルダンやレバノンやシリアの難民キャンプで、占領という弾圧とアパルトヘイトに反対の声を上げている。我々パレスチナ人は祖国とエルサレムの首都奪回まで、諦めない」と、分かり易く力強く語った。
「エジプトはガザ南端のラファ―検問所を開いている。援助物資はいつでも通過できる。
世界人民の連帯を求める。ICC(国際刑事裁判所)始め、あらゆる国際機関に訴えていく。邪魔をしないでくれ」と、報道陣に協力を求めた。
「兄弟たちへ、、制裁や入植や虐殺や破壊など、様々な蛮行に雄々しく立ち向かい、奪われた大地の奪還を目指すパレスチナの人民に、私たち西サハラの人民は変わらぬ連帯を誓います」と、西サハラ難民は自分たち自身を元気づけるかのように、パレスチナ難民にエールを送りました。
一方のモロッコは、現国王がイスラエルと正式国交正常を宣言するず~と前から、先代
ハッサン2世国王の時代から、イスラエルと深い関係にありました。 諸悪の根源である
<砂の壁・地雷防御壁>は、イスラエル軍事高官指導の下で先代国王が建造したものです。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年5月19日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10899:210520〕
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