日本沈没
- 2021年 5月 24日
- 評論・紹介・意見
- 小原 紘日本沈没
韓国通信NO669
コロナのせいで家にいることが多くなった。小松左京原作、映画『日本沈没』を見た。もう半世紀も前になる。小説とその映画作品が大変な話題となった。映画の観客動員数は650万人と記録される。日本が沈没するというたわいのない話に興味がなかった私は、小説も映画も素通りしたが、今回、ゴールデンウィークにテレビで見ることになった。
火山の噴火と押し寄せる津波、ビルの崩壊場面は凄まじいばかりで、往年の俳優たち小林桂樹、丹波哲郎、二谷英明たちが懐かしく、あっという間に時間が過ぎた。
日本が沈没するというストーリーは衝撃的だ。地球科学者田所博士(小林桂樹)が地殻変動による日本の沈没を予言。一笑に付されたが博士の「直観」は現実となる。政府は国民の移住を決意するという単純な話である。
作家の小松左京は何を語りたかったのか。
天災によって日本が沈没するという小説が発したメッセージ。福島原発事故を経験するまで、私たちは危険な原発にまで思い至らなかった。SFの力、小松左京の眼力に敬意を表したい。
原発事故発生後からわが国の凋落と劣化が始まった。国内外の政治、経済と人間の在り方が根源的に問われ、混乱は今でも続く。
映画を見てから、日本沈没という言葉が脳裏から離れない。日本はどこに行くのか。原発事故の責任をすべて民主党政権に押し付け、責任逃れを演じた安倍政権からモラルの劣化と崩壊が始まった。事故から始まり、オリンピック、そしてコロナにつながる一連の無責任ぶりが日本沈没のイメージと重なる。
「復興五輪」「アンダーコントロール」「コロナに打ち勝ちオリンピック開催」「放射能汚染水はきれい」。のけぞるような欺瞞の数々から日本の現実が見える。今、国民の不信感とともに世界から厳しい目が注がれている。日本はだいじょうぶか。
日本全体が漂流している気配。
余談だが、『日本沈没』に出てくる首相(丹波哲郎)は立派だった。政治の私物化を指摘され逃げまどう首相を見慣れたせいかもしれない。沈没前にすべての乗員の避難を見届ける船長の姿があった。
コロナ患者のうち入院できない患者は全国で約5万4千人(12日現在厚労省調べ)。そのまま息を引き取る人も後を絶たない。国民に向かって「緊急事態」などと言わせない。
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〔opinion10915:210524〕
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