維新が危険な存在になりつつある。維新への厳しい批判が必要だ。
- 2021年 5月 29日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤藤一郎
(2021年5月28日)
維新とは、特定の主義主張や体系的な理念に基づいて結成された政党ではない。ひとえに世の風向きを見てこれに乗ろうという本性だから、右にも左にも大きくブレる。ブレないところは、反共の素性と権力への摺り寄りの姿勢である。今や、自民党の補完勢力たらんとして、その地位を公明党と争う立場だが、公明党よりは遙かに右の立ち位置から、自民を引っ張りつつある危険な存在となっている。
もともと、維新は改憲問題にさしたる関心を示さなかった。公式には、この党の「憲法改正への取り組み」は、「70年前に施行されて以来一言一句の改正も行われていない現行憲法を、時代の変化に合わせ、わが国が抱える具体的問題を解決するために改正する」というレベルのもの。その改憲に向けた熱意は低い。
具体的な改憲案としては、「わが党は、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置という3点に絞り込み憲法改正原案を取りまとめた」というにとどまる。中間政党ないし「ゆ党」の宿命として、国民に体系的な政治理念を提示して憲法を語るということはない。維新の言う「教育無償化」は憲法改正なくともできること、「憲法裁判所の設置」は国民の利益になるとは限らない。「統治機構改革」の内実は必ずしも明瞭ではないが、結局は規制緩和政策であり道州制の提案であって、財界の要求の焼き直しに過ぎない。
如上のとおり、維新の憲法政策に自民党のようなギラギラした熱や反動性は感じられない。ところが、今や維新の看板となっている吉村洋文が、昨年12月7日のツイッターでこう呟いて、物議を醸した。
「本日、呉地方総監、自衛隊の皆さまと。国民の生命、財産を守って下さいまして、ありがとうございます。違憲のそしりを受けることがあってはならない。保守を自称する国会議員は、命がけで憲法9条の改正をやってくれ。維新は命がけで都構想をやって大将の首をとられた。その迫力が全く感じられない。」
「(自衛隊が)違憲のそしりを受けることがあってはならない」「保守を自称する国会議員は、命がけで憲法9条の改正をやってくれ」というのだ。これは、アベ自民党へのオマージュではないか。これが維新のわけのわからなさであり、ブレであり、恐さなのだ。
今月(5月)6日の衆院憲法審査会で、「改憲手続き法」改正法案の修正案に立民が賛成したことで衆院を通過した。この日の審査会の採決では、自民、公明、立民、国民の各党が、改正案の原案と修正部分に賛成する一方、共産は改正案原案にも修正案にも反対した。維新は原案に賛成し、修正部分には反対した。
はからずも、国会内での維新の立ち位置が明瞭になった。「自民、公明、立民、国民」という一塊の集団の、左外側に共産があり、右外側には維新がいる。その維新の役割が、自民よりも右に立って「命がけで憲法9条の改正をやってくれ」と言い募っているのだ。
この危険な役割を演じつつある維新を、批判しなければならない。批判の材料はいくつもある。繰り返し報道されているとおり、維新は「不祥事のデパート」なのだから。
まずは、愛知県知事リコール運動の事務局長を務めて署名偽造によって逮捕された田中孝博。まぎれもない維新の総選挙立候補予定者として活動していた人物である。こういう民主主義を理解していない輩が、維新にはゴマンといる。
先月、日本維新の会梅村みずほ参議院議員の男性公設秘書が知人を車で故意にはねたとして大阪府警に逮捕された。被疑罪名が殺人未遂であったことが世間を驚かせた。その後、罪名が傷害に切り替わり起訴猶予となったことで再び話題を呼んだ。
大阪維新の会の公認で2019年4月に初当選した、大阪府池田市の冨田裕樹市長も市政を大混乱させた。家庭用サウナやトレーニング機器などさまざまな私物を市庁舎に持ち込み、市議会で追及されたのだ。問題発覚後に離党している。
2020年8月、日本維新の会に所属していた東京都港区の男性区議が下半身を露出したとして、公然わいせつ罪で罰金15万円の略式命令を受けた。当時、この区議は維新の支部長。事件を受けて除名処分になった。19年5月には、日本維新の会に所属していた丸山穂高衆院議員が、北方領土のビザなし交流で訪れた国後島で、元島民に「戦争で島を取り返すのは賛成ですか」などと言い、さらに「女性買いたい」発言まで公となって除名された。
維新勢力が跋扈している大阪のコロナ対策は甚だ心もとない。昨日(5月27日)までの累計コロナ死者数は大阪府がトップの2247名で、2位の東京都2042名を凌駕している。人口10万人あたりの累積死者数では大阪府25.49名で、東京都の14.62名を大きく上回っている。
そもそも大阪のワクチン対策として思い出されるのは、イソジン、大阪ワクチン、雨ガッパなどである。場当たり、非科学、思い付きの対応なのだ。またか、と看過せず、しっかりと維新を批判しよう。民主主義のためにも、自民党主導の改憲を阻止するためにも。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.5.28より許可を得て転載
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〔opinion10943:210529〕
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