青山森人の東チモールだより…コロナ禍であろうとも、祝!「独立回復」19周年記念
- 2021年 6月 2日
- 評論・紹介・意見
- 青山森人
毎日100人以上の感染者が続く
世界でおよそ1億6874万人(5日28日)の累積感染者数を出している新型コロナウィルスは、ワクチン接種の進み具合によって各国の状況にさらに差をつくり出すという新しい段階を迎えています。
4月7日から始まった東チモールにおけるワクチン接種は、政府ホームページによると5月21日の時点で5万3400人が一回目の接種を終えています。この進捗状況が世界全体でどれくらいの水準に達しているのかはわかりませんが、登録されている新規感染者数からすれば、東チモールはいま最悪の感染状況にあります。
新規感染者数が0~1桁台だった3月上旬は今は遠い昔、5月に入ると100人超えがほぼ常態化してしまいました。5月で新規感染者数が100名を下回ったのは6日と7日だけでした(5月28日時点で)。10日以降になると以下に示すように100人以上の感染者が毎日新たに登録されてます(カッコ内は去年3月からの累計)。
【2021年5月】
11日=140(3493), 12日=133(3626), 13日=253(3879),
14日=239(4118), 15日=161(4279), 16日=179(4458),
17日=131(4589), 18日=176(4765), 19日=178(4949),
20日=172(5121), 21日=172(5287), 22日=188(5481),
23日=156(5637), 24日=179(5816), 25日=198(6014),
26日=231(6245), 27日=213(6459), 28日=163(6622、累積回復者数は3915).
(*)19日・21日・22日・27日において、その日の新規感染者数と前日の累積数の足し算がおかしいが、保健省の資料からそのままの数字を記載した。
そして犠牲者もじわりと増えています。4月6日に最初の犠牲者1名が出ると、その後、4月11日に1人、22日に1人、5月に入り2日に1人、9日に1人、13日に3人、16日に2人(1人は中国人)、19日に1人、23日に2人、そして25日と27日にそれぞれ1人と、5月28日の時点で亡くなった人は累計15人となっています。
10万人あたりの感染者数
5日26日、危機管理統合センターの発表によると、直近1週間10万人あたりの感染者数はディリ=45.5人を最高とし、ボボナロ=10.7人、コバリマ=5.1人と続きます。同センターのルイ=マリア=デ=アラウジョ医師はディリ地方とともにボボナロとコバリマの二つの地方も赤信号が灯る危険地帯であると警報を鳴らしました。
上記の三地方以外の10地方の直近1週間10万人あたりの感染者数は以下の通りです……ビケケ=3.1人、バウカウ=2.4人、マナトゥトゥ=2.3人、アイレウ=1.0人、RAEOA(オイクシ/アンベノ特別行政地域)=0.4人、エルメラ=0.3人、アイナロ=0.2人、そしてラウテン・リキサ・マヌファヒの3地方は0.1人未満(『テンポチモール』、2021年5月26日)。
一方、日本における都道府県別の直近1週間10万人あたりの感染者数は(5日28日、NHKまとめ)、1位は沖縄県の110,25人、2位が北海道の69.18人、3位が愛知県39.27人、以下、広島県・福岡県・東京都……と続きます。したがって東チモールの首都圏であるディリ地方の45.5人/10万人という数値とは、日本でも5日28日の統計において愛知県をおさえて第3位に割って入るほどの高い感染率であるということです。医療体制の脆弱さを考慮すると東チモールの感染状況は深刻です。
大統領、国内には知恵の集結を、
海外にはパレスチナとイスラエルの紛争解決を訴える
いかなる状況であっても「5月20日」はやって来ます。今年は2002年の「独立回復」から19年目を迎えました。しかし首都が非常事態宣言とロックダウンによる行動規制のもとあっては公式の記念式典行事はできません。今年も去年に引き続き大統領府主催の行事は取り止めとなり、フランシスコ=グテレス=ルオロ大統領は大統領府を記念演説を発信して、「独立回復」19周年記念日を祝いました。
困難と悲しみを克服して国際社会のまえで独立を回復してから19年目のいま、東チモールは新型コロナウィルスによる世界的流行と、大洪水の被害という予想されない自然災害の発生など、大いなる困難に直面しているが、東チモールの知恵を集結してこれに立ち向かい将来に備えるようにとルオロ大統領は呼びかけました。そしてまた大統領は、東チモールは毎年自然災害に襲われているが、政府は過ちを認め責任を負う勇気を持つべきだといいい、毎年発生する自然災害にたいし科学技術で対抗するように政府に求めました(テンポチモール、2021年5月20日)。
そしてルオロ大統領は、パレスチナとイスラエルの紛争に憂慮を表明し、国際社会が平和的な交渉による紛争解決のため早急に手を差し伸べることに期待を寄せ、約17分の演説を終えました(RTTL[ラジオTV東チモール局]のニュース動画を参照)。
青山森人の東チモールだより 第437号(2021年05月31日)より
青山森人 e-mail: aoyamamorito@yahoo.co
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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