SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】426 ドイツがナミビア植民地支配時代の賠償表明
- 2021年 6月 2日
- 評論・紹介・意見
- サハラ平田伊都子植民地西サハラ
5月25日は<アフリカの日>です。 毎年、この日から1、2週間の間、アフリカのみならず世界各地で様々なアフリカ・イベントが繰り広げられます。 が、今年はコロナに邪魔されて静かでした。 なぜ5月25日を<アフリカの日>に決めたかというと、1963年のこの日5月25日、エチオピアの首都アジスアベバにアフリカの30か国代表が集まり、OAUアフリカ統一機構(AUアフリカ連合の前身)が設立されたからです。 以降、OAUアフリカ統一機構(後のAUアフリカ連合)は、「世界からおぞましい植民地をなくそう」と謳った国連脱植民地化宣言を合言葉に、アフリカでの脱植民地化を進めてきました。 今現在、西サハラだけがアフリカ最後の植民地として、AUアフリカ連合の課題に残されています。
① 5月25日、アフリカの日、マリでゴイタ副大統領がクーデター宣言:
昨年8月18日のクーデターを主導したゴイタ陸軍大使(当時)が再びクーデターを強行し、自ら大統領になった。最初のクーデターの時、マリの旧宗主国フランスのマクロン大統領は、フランスがでっち上げたECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)を動かし、フランス傀儡暫定政府を作った。マクロン・フランス大統領は、マリを中心に5,100人の仏兵を西アフリカに展開させ、北アフリカは元植民地モロッコに仕切らせようと企んだ。「これでアフリカ北西部はフランスが支配」と、ナポレオン好きのマクロン仏大統領は新植民地戦略を開花させようとしていた。そんな矢先のマクロン仏大統領にとって、ゴイタ・マリ新大統領のクーデターは、フランスに刃向かう反逆以外の何ものでもない。マクロン仏大統領はECOWAS加盟国の大統領たちに、「ゴイタを抹殺せよ、さもなくば5,100人のフランス兵を撤退させる」と、脅しをかけた。ECOWAS加盟国は、ベナン、ブルキナファソ、カーボベルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴと、15か国にのぼる。
2021年のアフリカ大陸は、アルマゲドンの沼に沈みつつある。2020年11月にノーベル平和賞受賞のアビー・エチオピア首相が北部ティグレ州に軍事侵攻して始まった内戦はますます激化している。これに対しアメリカがエチオピア政府に制裁を決め、これに反対して、5月30日にはAUアフリカ連合本部がある首都アジスアベバで反米1万人デモが起きた。
4月20日、イドリス・デビ大統領が反政府勢力との交戦中に負傷し死亡した。
5月2日、息子のマハマト氏が暫定軍事政権を独断で樹立。AUは反発している。
5月22日にコンゴ民主共和国のニーラゴンゴ火山が噴火して地震と溶岩流出が続き、27日には再噴火の警戒報で住民の大半が避難民となった。
火山噴火、地震、内戦、白人の新植民地支配、コロナ、、と、アフリカはアルマゲドン沼で溺れかけている。
② ルワンダ大虐殺を認めたマクロン・フランス大統領の真の狙いはルワンダの経済:
2021年5月27日、ルワンダを訪問したマクロン・フランス大統領は、「フランスはルワンダで虐殺した政権を支援した政治的責任を負う」と、1994年のルワンダ大虐殺で犯したフランスの政治責任を認めた。しかし、賠償金を払いたくないフランスは直接の下手人ではないと強調し、ルワンダ現政府に謝罪をしなかった。フランスは、まさに直接の下手人だった原水爆核実験に関しても賠償金を払いたくないので、長年、核実験被爆を認めなかった。「左のポッケに人道主義、右のポッケに現金」と言われているフランス人は、フランス映画に出てくるような甘くて尻軽なドンファンではない。投資銀行家マクロン仏大統領の狙いは、アフリカのシンガポールと仇名されるルワンダの経済力にある。現ナマです。
ルワンダがドイツの植民地になる前は、牧畜民のツチ族と農耕民のフツ族が住んでいた。第一次世界大戦に敗れたドイツは、ルワンダも含むすべての植民地を失った。その後、ルワンダはベルギーの植民地になり、1963年に独立してフツ族のグレゴワール・カイバンダがルワンダ共和国初代大統領に就任した。ところが、1987年に隣国のウガンダに逃れていたツチ族難民が主体となり、RPF(ルワンダ愛国戦線)を結成した。そして、1990年から、ルワンダ帰還を目指すRPFとルワンダ政府の間で内戦が始まる。マクロン仏大統領が認めた1994年の大虐殺とは、ルワンダ政府と暴徒化したフツ族による、ツチ族と穏健派フツ族に対する大虐殺を指す。この結果、約100日間(1994年4月~7月)のうちに、当時のルワンダの総人口約730万人中、80万人から100万人が殺害されたと見られている。大虐殺の後、反撃に出たツチ族のRPFがルワンダ全土を掌握した。 が、ルワンダ大虐殺により、約210万人ともいわれる大量の難民が周辺国に流出した。
当時のミッテラン仏大統領はフランスに逆らうRPFを嫌い、フランスとECOWASによる多国籍軍を作りフツ族ルワンダ政府による大虐殺を手助けした。フランス植民地主義思想がルワンダ大虐殺を引き起こしたと言える。
この時期、海外へ脱出したツチ族の約200万人がツチ族RPFの勝利後に帰国し、海外で習得した技術で国を復興し、<アフリカの奇跡>と仇名される経済成長を助けた。キガリ現ルワンダ大統領は大虐殺されたツチ族RPFの出身で、仇のフランス大統領が認めた政治責任に、「謝罪の言葉はなかったが、フランス植民地主義政策の非を認めたのは、アフリカの歴史的大勝利だ」と、語った。
③ ドイツがナミビア植民地時代の賠償:
5月28日、ドイツ政府が1884年から1915年にかけてドイツ植民地ナミビアで犯し
た大虐殺に関してナミビアに正式謝罪し、11億ユーロ(約1500億円)の賠償金を支払う
と表明した。ナミビアは、アフリカ南西部にあり、ドイツ帝国(一部はイギリス植民地)
の植民地時代には南西アフリカと呼ばれていた。ドイツ帝国は、商業的利益と南西アフリカ人を文明化するという名目で、植民地化を進めた。ナミビアには、コイコイ族、- ナマ族、サン族などが住んでいた。ナミビアの人々はこのドイツ帝国による植民地化に反発し、1902年には北部のオヴァンボ族のカンボンデ首長がイギリスに手紙を書き、ドイツの植民地化に抵抗することを宣言した。さらに、ドイツ人入植者から土地を奪われたヘレロ族やナマ族も他の諸民族の反植民地運動に賛同し、1904年1月にはヘレロ族のサミュエル・マハレロ首長に率いられたへレロ戦争が蜂起した。この戦争でドイツ帝国軍を指揮したフォン・トロータ司令官は1904年10月2日にヘレロ族を抹殺するとの宣言を発令した。トロータ・ドイツ帝国軍司令官はナマ族のヘンドリック・ヴィットボーイ率いる反乱にもみまわれ、1905年4月21日にはナマ族の抹殺も命じている。戦争によってヘレロ族の約80%、ナマ族の約50%がドイツ帝国軍に殺害された。この、ヘレロ族とナマ族の大虐殺に対して、119年経った今、ドイツが正式に、ナミビアに植民地支配と大虐殺を謝罪し、賠償金の支払いを発表したのだ。ドイツは、第二次世界大戦中に犯したユダヤ人大虐殺に関し、正式に謝罪し賠償金を払ってきたが、旧植民地に対する謝罪と賠償はナミビア旧ドイツ植民地が初めてだという。
ナミビアは[第一次世界大戦以後、南アフリカ連邦の委任統治下に置かれていた。第二次世界大戦後は、南アフリカ白人政権が国際法上違法な併合を行った。南アフリカ白人政権は、本国と同様にナミビアにたいしても人種隔離政策(アパルトヘイト)を強行した。
1966年からナミビア独立戦争が始まり、1989年、国連監視下で選挙が行われSWAPO(南西アフリカ人民機構)が勝利し、1990年に独立を達成した。
1904年頃、ドイツ帝国軍により鎖に繋がれたナミビア・へレロ族の人々
賠償金を払いたくないからオリンピック開催!? 白人に弱い黄色人は、まるでIOCの奴隷になったみたいです、、 日本人の大部分が嫌がる東京オリパラを、白人に脅されて無理にやることはないと思いませんか? 2021年オリンピックを中止しても、日本に責任などありません。 みんなコロナが悪いのよ!
タイミング良く、6月11日からイギリスのコーンウォールでG7首脳会議が対面で行われます。 日本の首脳はコロナ下でのオリンピック現状を科学的に報告し、他国の首脳に、「あなたなら、どうする?」と、正直に堂々と問いかけてみたらどうですか?
コロナの前では、みんな平等です。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年6月2日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10964:210602〕
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