本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(316)
- 2021年 7月 17日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
最弱通貨に転換し始めた日本円
現在、「日本の円が、先進国で最弱の通貨に転換を始めている」という報道が出始めているが、このことも、「デリバティブの時限爆弾が連鎖破裂を始めた証拠の一つ」だと考えている。つまり、「為替の理論」については、1995年前後に、「信用乗数の比較により、ほとんど説明がついた」という状況だったが、この理論が有効性を失った原因が、「2002年前後から始まったデリバティブの大膨張」だったのである。
より具体的には、「メガバンクが、オフバランス(簿外取引)で、デリバティブを大膨張させた」という状況であり、その結果として、本当の意味での「信用乗数」、すなわち、「マネーストック÷ベースマネー」の算出が難しくなったのである。別の言葉では、「大量のデジタル通貨を獲得したメガバンクが、金利のみならず、為替や株式などの市場をコントロールした」という展開となり、その結果として、「信用乗数の比較では、正確な為替予測が難しくなった」という状況のことである。
しかし、今回の「日本の円が最弱通貨に転換を始めた」というニュースには、ある種の「驚き」を覚えたが、この理由としては、現在、「日本の信用乗数が約1.7倍」というように、「ソ連崩壊前の状態」に近づいている事実が指摘できるからである。より具体的には、「1990年前後の信用乗数が約13倍」という状況だったものが、現在では、「ハイパーインフレの発生」を意味する「信用乗数の1倍」に近づいているのである。
そして、今後の展開として想定されることは、「国家の体力」を象徴する「為替」と「金利」において「弱体化が表面化する状況」であり、実際には、「通貨安が、物価上昇のみならず、金利の上昇圧力を生み出す可能性」である。つまり、「信用乗数の低下」が意味することは、「民間金融機関の信用力低下」であり、また、「中央銀行の紙幣増刷に頼らざるを得ない状況」とも言えるのである。
より具体的には、「1991年のソ連」のみならず、「1945年の日本」、あるいは、「1923年のドイツ」と同様に、「紙幣の大増刷でしか、市場への資金供給ができない状態」のことである。そのために、今後の注目点は、現在の「円安」が進展し、その結果として、「通貨防衛のための利上げ」が実施される可能性でもあるが、この時に表面化する現象は、やはり、「デリバティブのバブル崩壊」であり、また、「超低金利の蓋によって隠されていた国家の財政問題」、すなわち、「金融界のブラックホール」に隠されていた「本当のインフレ」が表面化する事態だと考えている。(2021.6.10)
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原点の再確認
6月10日付けの日経新聞に掲載された「ジャック・アタリ氏のコメント」を読むと、「観光業の未来については、確かに、原点の再確認をすべきである」と感じたが、同時に考えたことは、「より深い分析が必要ではないか?」ということでもあった。つまり、今回の「コロナ・ショック」により、多くの人々が原点回帰を始めたわけだが、基本的には、「どこまで過去の歴史を遡るのか?」により「見えてくる世界」が違ってくるのである。
別の言葉では、「観光業」については、過去数年間の歴史を振り返るだけで十分の状況とも思われるが、「金融業」については、最低でも「過去50年間の歴史」、そして、「産業全体」については、「過去200年間の歴史」を振り返る必要性が存在するものと思われるのである。つまり、現在の「超低金利状態」や「DX革命」などの未来を予想するためには、「1971年のニクソンショック以降、どれほどのデジタル通貨が産み出されたのか?」を理解する必要性が存在するものと考えられるわけである。
より具体的には、1960年代までの「大量生産、大量消費」の文明が、現在では、「実体経済からマネー経済へと移行した状態」のことでもあるが、結論としては、「1984年のロスアンゼルス五輪」の頃から、「お金」が力を持つとともに、「お金が全てである」というような認識を持つ人が、急速に増えてきたことも理解できるのである。別の言葉では、「地球温暖化」の原因の一つが、「大量に存在するマネー(お金)」であり、今回の「コロナ・ショック」については、「風邪を引き、熱が出た地球」が「コロナウイルスを発生させることにより、人類を淘汰し始めた可能性」も想定できるのである。
そのために、これから必要なことは、最初に、「マネーの原点」を考えることであり、実際には、「過去50年間の期間で、どれほどのデジタル通貨やペーパーマネーが、どのようにして創り出されたのか?」を理解することである。そして、次に必要なことは、「産業革命以降、どれほどの産業が、どのようにして発展してきたのか?」を理解することでもあるが、この時に注意すべき点は、やはり、「マネー経済」と「実体経済」の関係性、すなわち、「どのような商品が産み出され、それとともに、どのような通貨が造り出されたのか?」を深く研究することである。
つまり、「西洋の唯物文明」が、現在、崩壊の危機に瀕している状況を理解し、次の「東洋の唯心文明」に備える動きのことであり、今後は、この点を理解し、実践した人々が「次の時代の成功者」になるものと思われるのである。(2021.6.11)
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時空の歪みがもたらしたもの
「2000年から2020年前後」までの「約20年」という期間は、「デリバティブバブルの発生」、すなわち、「マネーの大膨張」が引き起こした「時空が歪んだ期間」だったものと考えている。別の言葉では、私のライフワークである、「お金の謎」と「時間のサイクル」、そして、「心の謎」の解明において、「過去20年間は、最も困難な時期だったものの、同時に、全く新たな発見が得られた可能性」も指摘できるのである。
具体的には、「時空の歪みにより、人類の次元が上昇する可能性」のことだが、このことは、「ヘーゲルの弁証法」などで詳しく述べられているように、「神の絶対智に近づく過程」とも考えられるのである。別の言葉では、「量子力学」が教える「回転と波動の関係性」のことでもあるが、私自身の「現在の仮説」としては、「神の智慧にたどり着く方法は、量子力学と言語論にあるのではないか?」ということである。
つまり、「真言密教の三蜜加持」が指摘する「言葉により神の真理にたどり着く方法」については、将来的に、「量子コンピューター」により実現が可能な状況のようにも感じられるのである。そして、このことが、「ヘーゲル」などの偉人が、こぞって指摘する「神の計画」のようにも感じられるが、実際には、「神が創った世界」において、「人間社会が、どのようにして適合していくのか?」という道筋のようにも思われるのである。
より具体的には、「カール・ヤスパース」が指摘する「第二の枢軸時代」において、「自然科学の発展」が「物と物との関係性」を意味する「重力の法則」が解明されたことにより達成されたように、今後は、「社会科学の発展」において、「人と人との関係性」を意味する「心の法則」、あるいは、「神と人との関係性」を意味する「次元を超えたコミュニケーションの法則」が解明される可能性のことである。
より具体的には、「時間のサイクル」や「心の謎」については、ある程度、解明できたものの、「時間と空間の謎」については、全く未解決の分野のようにも感じられるが、この時のヒントとして考えられるのが、「シュレジンガー方程式」などの「量子力学の理論」のようにも思われるのである。つまり、今回の「約20年間の時空の歪み」については、「人類を、一旦、仮想現実の世界に押し込め、その後、現実世界に引き戻す」という作業、すなわち、「浦島太郎の物語」のような現象が発生したものと思われるが、実際には、このことが、「人類が、どのようにして、絶えざる進化と創造をくりかえすのか?」に関するメカニズムの一つとも思われるのである。(2021.6.12)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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