SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】434 ペガサス・スパイウェア
- 2021年 7月 27日
- 評論・紹介・意見
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お宅の携帯やパソコンに、何者かが侵入していませんか? 筆者の携帯番号やメールアドレスがモロッコに漏れていると、西サハラ難民政府から注意されたのは2014年11月20日のことでした。
イスラエルの諜報活動や監視システムは、世界一で、モロッコが軍事指導や諜報活動をイスラエルに委ねてきたのは、故ハッサンⅡ世・モロッコ国王時代からのことです。 そのイスラエルにあるNSOグループが開発したペガサスという名のスパイウェアが、世界を引っ掻き回しているのです。 スパイウェアとは、コンピューターウィルスのように、しらないうちにインストールし、ユーザーの個人情報や行動を収集し、別の場所に送ってしまうプログラムのことです。 つまり、あなたの携帯やパソコンがスパイの手先になるのです。
① 国際アムネステイーがスクープし、大手メデイアが拡散したペガサス顧客情報:
2021年7月19日に国際アムネスティがペガサスの顧客とその標的の電話番号を主要メディアにリークしたことをきっかけに、スパイ疑惑が発覚した。そして、BBC英国TV、米ワシントン・ポスト紙、英ガーディアン紙、仏ルモンド紙などが事件を拡散した。ペガサスを導入した約50の国々によって、少なくとも5万台以上のスマートフォンが監視されていたことが判明。BBCなどが、「アラブ系王族や企業エグゼクティブ65人以上、人権活動家85人、189人のジャーナリスト、さらに、閣僚や国家元首、首相たち、外交官や軍や公安部門の幹部を含む政治と政府関係者600人以上を、つまり、1000人を超える重要人物がスパイされていた」と、伝えている。
ペガサス・スパイウェアは、スマホやパソコンなどに簡単に潜入することができ、通話やメールや位置情報や連絡先など、すべての個人データを収集し監視することを可能にする。そのうえ、スマホのマイクやカメラの機能を逆操作し、盗聴器や監視カメラのような監視機材として使うこともできるという。さらに、そうした工作の形跡を一切残さないとか?、価格は高価だ。まず、50万$という基本の設置料金に、監視ターゲット1人毎に料金が加算される。10人の監視をするなら、65万$を追加請求されることになる。さらに維持費として、年間支払い額の17%を支払う必要があるという。
APS(アルジェリア・プレス・サービス)とSPS(サハラ・プレス・サービス)
が掲載したスパイウェアの関連画像
NSOグループは、2010年にイスラエルで設立された。イスラエル軍でサイバー作戦を担う「8200部隊」の関係者による資金援助などで立ち上がった。NSOとは創設者3人の頭文字Niv Carmi +Shalev Hulio +Omri Lavie を表す。NSOグループのパンフレットによれば、「NSOはサイバー戦争の分野をリードする企業。サイバー防衛だけでなく、サイバー攻撃で当局の技術的な側面を支える」と宣伝している。つまり、サイバー攻撃やハッキングなども行う、ということだ。イスラエルの大都市テルアビブに近いヘルツリーヤという地域に本社を構えている。NSOは、スパイウェアを売却する相手を厳格に選別しているとし、「売却先は基本的に政府または各国の捜査当局や情報機関などに限定している」と、主張する。さらに、契約時には監視対象をテロ集団や犯罪組織に限るよう約束させているそうだ。スパイ容疑は、顧客、つまりスパイウェア購入者にあると、NSOは責任逃れをしている。
ちなみに世界には、NSO以外にもスパイウェアを販売している企業がある。イギリスには、ガンマ社という企業が「フィンフィッシャー」というスパイウェアを販売している。
イタリアではハッキングの会社がスパイウェア「ガリレオ」を販売してきた。日本の公安調査庁も2015年、庁内でスパイウェア商品の売り込みをあるハッキング社から受けていたそうだ。この頃、モロッコはイタリア・ミラノのハッカー会社会員<クリス・コールマン>というコード名で、国連や日本などで西サハラ関連のスパイ活動を活発化させていた。モロッコはハッカー会社数件と契約し、年間300万ユーロ(約4億5千万円)以上を注ぎ込んでいたとか?日本の公安調査庁に、西サハラに関する偽情報を流していたこともある。
② <スパイ王国=モロッコ>のレッテルに反発するモロッコ王室:
<モロッコ王国>の名前が、大手メデイアの中でペガサスの顧客として頻繁に登場して
いる。なかでも、モロッコがスパイするトップターゲットは、マクロン大統領を始めとするフランス政府の14閣僚だと暴らされたので、国王は慌てた。しかも、国際アムネステイーは、大統領に就任した2017年から、モロッコがマクロン氏のモバイルに侵入していたと言う。何といっても、フランスはモロッコの元宗主国で現庇護者で、西サハラのモロッコ領有権を巡る経済的政治的外交的な指導者でもあるのだ。フランスなしでモロッコは存在しない。文字通り、フランスはモロッコの御主人なのだ。
2021年7月21日、MAP(マグレブ・アラブ・通信)モロッコ国営通信は、「モロッコ王国はコンピューター・ソフトウェアを通して国内外の有名人の電話装置に侵入しているという大嘘を、悪意に満ちたマスメデイアが乱発している。モロッコはそれらのデマ中傷を強く否定する」との、政府声明を発表した。
MAPはさらに、「モロッコ王国政府は、根拠のないデマや誹謗と断固、闘う!」と、明言した。そしてMAPは、「7月21日、検察庁長官が外国の新聞で公表された記事による虚偽の報道に関して、ラバトの最高裁判所で法的調査を開始せよという命令を出した。それらの記事は、モロッコの公共機関を侮辱し、モロッコ王国の国益を弱体化させている」と、メデイアや国際アムネステイーなどに対する告訴を公表した。
ル・モンドで「モロッコがペガサスを使って仏大統領をスパイしている」との報道があったのを受けて、すぐにマクロン仏大統領は、彼の電話番号を変更した。
③ アルジェリアと西サハラ難民政府がモロッコスパイ行為を大非難:
7月22日、APS(アルジェリア・プレス・サービス)アルジェリア国営通信が、「アルジェリアは、モロッコが広範囲にペガサス・スパイウェアを使って世界のジャーナリストや人権活動家に加え、アルジェリアの高官や一般市民までをも監視していることに深く懸念し、強く糾弾する」と、発表した。さらに、アルジェリア外務省は、「直接の被害者であるアルジェリアは、この受け入れがたい組織的なモロッコによる人権と自由の侵害が、国際関係と国家間信頼を大きく傷つけたことに、遺憾の意を表する」との声明を出した。そのうえでアルジェリア外務省は、「モロッコの露骨なスパイ行為は不正で不適切で国際社会の安全を脅かすものだ。この攻撃に晒されているアルジェリアは、報復を誓う国際社会にためらわず連帯し行動を起こす。国際社会の平和と安全を脅かすこの犯罪を、正義の光のもとに晒すべきだ。いかなる免責も詭弁も許されない」と、強い言葉で糾弾した。-
7月23日、アルジェリア外務省の声明に従ってSPS(サハラ・プレス・サービス)も、「西サハラ政府は、モロッコ王国が各国政府や政治団体や市民団体や報道や一般市民をターゲットにしたこの大スパイ事件で主犯を演じていることを確認した。これは、国際社会全ての憲章や人類の基本的な掟に反する、明らかな犯罪行為だ」と、声明を発表した。そして、国際社会に対して、「このモロッコによるペガサス・スパイ事件は、西サハラ人民にとって氷山の一角だ。1975年にモロッコ王国が西サハラを軍事侵略して以来、言語道断のハラスメントを46年にわたって続けている」と、訴えた。
西サハラの交渉に関して、モロッコは西サハラを交渉相手とみなしていない。アルジェリアを交渉相手、取引相手と決めている。モロッコが目指す交渉とは、UN国連やAUアフリカ連合の和平交渉ではなく、西サハラ領土と天然資源の山分け交渉だ。1975年にモーリタニアと西サハラ領土分割したように、アルジェリアと商売交渉をしたいのだ。モロッコは、西サハラ難民政府がアルジェリアの配下にあることを、よく知っている。アルジェリアなしで西サハラは存在しない。
2021年7月26日の新規コロナ感染者数は、アルジェリアで1505人、モロッコで2025人、そのうちモロッコ占領地・西サハラの首都ラユーンで49人、ダハラ漁港で40人と発表されました。一方、西サハラ難民キャンプでは72時間で100人、コロナ発生からの合計が932人と報告されています。
そして、7月27日、東京の新規感染者数は2848人に達しました、、
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年7月27日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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