政府は人命尊重のコロナ政策に転換せよ 世界平和七人委がアピール
- 2021年 8月 30日
- 時代をみる
- 世界平和アピール七人委員会岩垂 弘
世界平和アピール七人委員会は8月28日、「人命尊重のコロナ政策最優先への根本的転換を」と題するアピールを発表した。
アピールは「七月以来の感染拡大第五波において、発症者で入院を必要とする多くの人たちが、入院できず自宅療養へと追い込まれている。新型コロナウイルス感染症に罹患した妊婦が、入院先が見つからずに自宅での早産を余儀なくされ、生まれたばかりの赤子が死亡するという事例も報道された。自宅療養中に容体が悪化しても必要な医療措置を受けることができずにいのちを失う人、救急車を呼んでも患者の収容先が見つからず長時間を無為に過ごして自宅に戻される事例などが相次ぎ、保健所や医師・看護師からの連絡がとどこおり、家庭内感染も発生し、多数の患者と家族が不安をかかえている」と述べ、「新型コロナウイルス感染症蔓延拡大による医療崩壊の最大の責任は政府にある。政府は何よりも人々のいのちを守ることを目指し、医療崩壊の解消のために全力を尽くすべきである」としている。
世界平和アピール七人委は、1955年、ノーベル賞を受賞した物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは148回目。
現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)の6氏。
アピールの全文は次の通り。
新型コロナウイルス感染症蔓延拡大による医療崩壊の最大の責任は政府にある。政府は何よりも人々のいのちを守ることを目指し、医療崩壊の解消のために全力を尽くすべきである。ワクチン接種の促進だけでなく、PCR検査の拡大と治療体制の拡充のためにも資源を回すべきである。それによって、感染者が重症化したり死亡したり後遺症に苦しんだりすることがないように最大限の措置をとるとともに、陽性未発症者の発見と陰性者との分離を進めて、拡大の繰り返しを速やかに断ち切ることを強く求めたい。
科学的な知見に基づいて政府に助言をすべき専門家たちは、警鐘を鳴らす発言もしてはいる。だが、2020年の3月以来、政府に助言する立場にいた専門家が政府の意を汲んでPCR検査抑制の方向を維持したことで、感染拡大防止の基本的な対策がとれない状況を招いてしまったことへの反省が未だになされていない。その結果、日本では今でも検査数の不足が続いている。専門家は、政府の政治的配慮に基づく諮問内容に答える立場にとどまらず、科学的な知見に基づいて政府とは独立した情報発信を行うとともに、政府に対していのちを守ために行うべき施策についての科学的助言を積極的かつ強力に発し続けるべきである。
七月以来の感染拡大第五波において、発症者で入院を必要とする多くの人たちが、入院できず自宅療養へと追い込まれている。新型コロナウイルス感染症に罹患した妊婦が、入院先が見つからずに自宅での早産を余儀なくされ、生まれたばかりの赤子が死亡するという事例も報道された。自宅療養中に容体が悪化しても必要な医療措置を受けることができずにいのちを失う人、救急車を呼んでも患者の収容先が見つからず長時間を無為に過ごして自宅に戻される事例などが相次ぎ、保健所や医師・看護師からの連絡がとどこおり、家庭内感染も発生し、多数の患者と家族が不安をかかえている。
このような状況にあるにもかかわらず、政府は「自宅療養」を主軸とする対処で乗り切ろうとして、とりあえず応急的な対処ができる医療施設を設けることもほとんど行っていない。政府は公助の責任を放棄しており、その結果として助けることができるはずのいのちを助けられない医療崩壊が、東京、大阪やその周辺をはじめ、各地へ広がりつつあるという事実を直視しなければならない。
政府が現在最重要と位置付けるワクチン接種も、ワクチン供給が間に合わず、接種の円滑な続行に水を差された状態である。この中で強行されたオリンピックやパラリンピックによって、住民のコロナ感染症治療に回すことができる資源を減らし、医療崩壊を加速してしまった。国民の祝祭感を刺激したことも、コロナ感染への危機感や自粛意識を緩めることにつながったことは確かであろう。
政府は、感染の機会を減らすための人流削減の実効ある措置を打ち出すことができないでいる。政府には人命を守るという姿勢が希薄だと言わざるをえない。
再度繰り返す。政府は何よりも人々のいのちを守ることを目指し、医療崩壊の解消のために全力を尽くすべきである。
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