デルタ株で感染爆発・医療崩壊したこの国の行方は?
- 2021年 9月 2日
- 時代をみる
- オリンピック加藤哲郎新型コロナウィルス
2021.9.1 予想通りとはいえ、あまりにも残酷です。一方でオリンピック・パラリンピックを「祝祭」として強行しながら、緊急事態宣言の発動と連日2万人を越えるコロナウィルスの新規感染爆発。「オリパラ関連」感染者数は、453人プラス257人プラス現在進行形で、なぜかいまだに国内感染とは別枠とされる「ダイヤモンド・プリンセス号」感染712人と比肩しうる水準です。東京・大阪などは医療崩壊で、いのちの選別が進みます。「自宅療養」という名の医療から見捨てられた感染者が10万人以上、自宅死亡者は1−6月で全国84人、第五波では8月の首都圏だけで30人以上です。コロナの「重症者」とは、東京都と厚労省で定義が違いますが、いずれにしろ一般疾病でいう「重篤」「危篤」と同じなそうです。その数が日々増大し、酸素ステーションとか「野戦病院」とか、海外では昨年春の第一波から当たり前で、日本でも準備すべきといわれてきた切迫した危機が、ようやく叫ばれています。感染症に対する日本の危機管理の失敗の証しです。今頃になって、無症状感染者把捉のためのPCR検査の一部拡大をいいだす御用学者「専門家」の反省なき悲鳴も。
世界の感染者数は、8月4日に2億人をこえ、変異株が増えて、越年する勢いです。3年間で5億人感染・5000万人死亡とされる20世紀「スペイン風邪」パンデミックの規模に、近づいています。人類史的な疫病被害です。2億人を越えた8月の人口百万人あたり感染者数では、イスラエル、英国、米国が突出しています。日本の感染対策は、マスクの他は輸入ワクチンのみに頼って「ワクチン一本槍・一本足打法」といわれますが、ワクチン2回接種率が高い国々で、デルタ株ウィルスは猛威をふるい、2回接種者にも感染・重症化・死亡者が増えています。集団免疫など、ほど遠い状態です。そのうえデルタ株蔓延の緊急事態宣言下でオリパラを強行した8月の日本は、人口比でイスラエル、英米仏国には及びませんが、ロシア、ブラジル、ドイツ、スウェーデン、インドネシア、チリ、インドなどを上回る感染爆発高位国です。アジアでは最悪です(東京新聞8月28日)。
そのうえ若者・子供たちに感染が広がり、ワクチンの数は足りず抽選への長い列、パラリンピック観戦に学徒動員した教師たちの感染・休校、ワクチンへの異物混入と接種後死亡者数の怪しい数字、総じてデルタ株段階での世界の「人体実験」の最前線です。世界には、まだ検査もワクチンも及ばないアフリカなどの感染拡大、感染統計さえ出せない軍事独裁下のミャンマーの様な例があります。何よりも、ベトナム戦争以上に明白なアメリカのアフガニスタン戦争敗退とタリバン支配の復活、モスクワ五輪西側不参加をもたらした旧ソ連のアフガン侵攻から数えれば40年戦争の「人新生」の世界史的事件です。ここでも日本政府は、危機の国際感覚も喪失して右往左往。G7・OECD内での「外交後進国」であることを証してしまいました。
感染症対策でも国際政治でも異様に遅れたこの国の無為無策をつくったのは、いうまでもなく、安部・管内閣と続く自公政治の劣化と頽廃です。長く政治学教育にたずさわってきた身としては、憂鬱で忸怩たる想いを抱かざるをえません。国会も開けない自民党内「コップの中の嵐」による「みえない明かり」の擬似可視化よりも、アメリカ帝国主義の衰退と中国共産党独裁の生産力主義、その流れの全体を突き崩すグローバルな気候変動や地球温暖化への新しい世代の取り組みに、長期的な再生エネルギーによる「明かり」を見出したいものです。もっともコロナ対策や8月恒例の「戦後77年」では、地域コミュニティレベルの創意や草の根の戦争体験継承に、かすかな光を見ることはできます。かすかな光を束ねて政権交代まで実現できれば、1年前のアメリカ並みの「普通の政治」に戻れるのでしょうが……。若い世代に期待します。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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