SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】446 ジャーナリストにノーベル平和賞?
- 2021年 10月 15日
- 評論・紹介・意見
- サハラジャーナリストノーベル平和賞国連平田伊都子西サハラ
2020年にニューヨークタイムスが、内戦を仕掛けたエチオピアのアビィ・アハメド首相(2019年受賞)など、首を傾げざるをえないノーベル平和賞受賞者たちを列挙し、その選考に疑問を投げかけました。
「ノーベル平和賞、なんぼのもんや!」の風潮は大歓迎ですが、賞金はなんぼか?気になりますネ!2021年もノーベル平和賞の賞金は、1000万スウェーデンクローナで約1億2600万円だそうです。
今年は2人が選ばれたので、賞金は山分けになります。
① ジャーナリストの保護者を騙る国連:
2021年10月8日、ノーベル平和賞は、329候補の中から、フィリピンのマリア・レッサ(58)とロシアのドミトリー・ムラトフ(59)というジャーナリスト二人に与えられた。
ベーリット・レイスアンデルセン・ノールウェーのノーベル平和賞選考委員長は、「民主主義と恒久平和の前提となる表現の自由を守る二人の努力」と称賛した。そして、「二人は、民主主義と報道の自由が危機に直面している世界で、理想のために立ち上がるジャーナリスト全ての代表だ」とも述べた。
フィリピンのレッサ氏は2012年、調査報道サイト<ラップラー>を共同設立し、現在も代表を務めている。ノーベル平和賞選考委員長は、ラップラーが「ロドリゴ・ドゥテルテ政権による乱暴な麻薬撲滅作戦を糾弾し、強権的なフィリピン政府を批判してきた」と、言及した。
一方ムラトフ氏は、年々取材が難しくなる中、数十年にわたってロシア国内で表現の自由を守ってきた。ムラトフ氏は1993年に独立系紙ノーバヤ・ガゼータを共同創刊し、1995年から編集長を務めてきた。ノーベル賞委員会は、「ノーバヤ・ガゼータ紙は権力に対して、批判的な姿勢を貫いている」と、褒めた。
10月8日、国連定例記者会見で国連事務総長報道官は事務総長の言葉を代弁し、「ジャーナリストなくして、いかなる社会も自由で公明正大であることができない。悪徳を暴露できるジャーナリストこそが、市民に情報をもたらし、指導者たちに責任を突き付け、権力に真実を知らしめることができる」と語った。さらに事務総長の言葉として、「報道の自由に対する権利を再確認し、ジャーナリストの基本的な役割を再認識し、自由で独立し多様性のあるメデイアを援助するために、あらゆる分野で強化努力していく」と、伝えた。
いつもながら、正義感に溢れたアントニオ・グテーレス国連事務総長のお言葉は、ご立派です。
② 国連事務総長報道室のやってること:
<報道の自由という権利を厳守>とか<自由と独立と多様性のあるメデイアへの惜しまない支援>とか、立派な言葉とは裏腹に、アントニオ・グテーレス国連事務総長は特定のジャーナリストを、正当な理由もなく、明らかに意図的に排除している。その一例が、マチュウ・リー記者の追放事件だ。
2018年の夏、リー記者から、「緊急!僕は6月22日に、力ずくで国連ビルから保安係につまみ出された。シャツは破られ傷つけられた。その時、モロッコ外交官が一部始終を見物していた。7月3日にも、同様の事が起こった。そして、7月13日、僕の国連記者証は、完全に剥奪された。スメイル国連事務官からその通知が届いた。」と、SOSのメールが入った。「いつも同じ汚れたシャツで、外交官がひしめく国連の品位を汚している」とか、「モロッコを占領支配者と一方的に決めつける、偏見異常者」とか、、モロッコはリー記者にいいがかりをつけ、国連報道官にその悪口を耳打ちし、国連ビルから追放させた。
一年後の2019年9月19日、国連定例記者会見で同僚記者がリー記者の問題を問い質した。報道官は、「基本的に、国連記者にはある種の規律が求められる。規律の下で記者商売をやるのはご自由だ。我々は邪魔しない。この記者の場合は、態度や様相に関する規律違反だ。ハラス!(アラビア語で、ウンザリだ!)と、不機嫌に答えた。
三年後の2021年9月15日、「国連総会が始まったが、リー記者は取材に参加できるよネ?」と、ベテランの同僚記者が国連報道官に詰め寄った。報道官は、「彼の状況を変える気はない。私は誰の運命も決めるつもりはない。スタッフが彼の書簡を受け取ったが、返事をしたかどうか知らない」と、とりつくしまもなかった。
リー・マチュウ記者(55才)は、1980年代半ばからホームレス援助や戦争反対を叫ぶ<ザ・カトリック・ウォーカー>でボランティア活動し、夜と週末は建設労働者として働いていた。 1987年にニューヨークの空きビルで、初めてインナー・シテイ・プレス紙を印刷した。2005年から国連内部のフリーランス記者として、大手メデイアが扱わない西サハラ、中央アフリカ、ロヒンギャの人々を追いかけてきた。まさにグテーレス事務総長のいう、自由で独立した正しい報道活動をしていた。にも拘わらず、突然、国連ビルから段ボール3箱で追い出された。
「No」の返事を聞くのは辛いが、筆者は一月に一度、「国連ビルに戻れたか?」と、リー記者に問い合わせている。
③ 脅迫、虐待、逮捕、拷問されるモロッコ占領地・西サハラのジャーナリスト:
エキップ・メデイア(報道チーム)という名の、モロッコ占領地・西サハラでゲリラ活動をする組織が、占領地の生情報を発信してくる。モロッコ当局に収監されている活動家やジャーナリストの状況を追跡し、国際人権団体などに救出を訴えている。モロッコ占領下での情報収集は、難しいだけでなく逆に逮捕されることが頻繁に起こっている。
2021年6月7日、モロッコ占領地・西サハラの漁港ダハラで活動する取材活動家ヤヒヤ・アブデルアジズ・エッサウィはモロッコ占領警察に逮捕され、ダハラにあるタワルタ刑務所で取材活動や記録映像に関して尋問された。そして、モロッコ占領地。西サハラの首都ラユーンにさらなる尋問のためと称して転送されたが、その後の動向が途切れた。コデサ(西サハラ人の人権擁護の集合体)が国際赤十字や国際アムネステイーなどに、エッサウィの緊急捜索と救助を要請しているが、未だに彼の状況が掴めていない。
10月9日、モロッコ占領地・西サハラの首都ラユーンで、<国際人権擁護事情>の勉強会をしていたアハマド・エッタンジの家を、モロッコ準軍事組織が包囲し妨害したうえに、モハンマド・マヤラ(講師)やアブデルサミド・ハナンやモハメド・サレ・ぜルアイなどに襲いかかった。ファチマト・ダハウラ、タハバ・シドアム、ハヤト・ハタリなど、女性参加者も襲われた。
10月11日、モロッコ本土北部のケニトラ刑務所に収監されている、西サハラのジャーナリストで活動家のシド・アルバシール・アラリ・ブテンギザが、刑務所劣悪な状況と冷酷な扱いと、過酷なモロッコ占領政策に反対して、ハンガーストライキに突入した。
ハンガーストライキに入った西サハラのジャーナリス政治囚、
シド・アルバシール・アラリ・ブテンギザ
日本にも不屈のジャーナリストたちが、ノーベル平和賞授与理由である<権力との闘い>を続けています。 みんな一様に貧乏で、その人たちが主催する出版物は廃刊の運命にあります。
カンパの要請がきたら、協力してあげてください。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年10月15日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11391:211015〕
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