SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】449 もう1年、PKO西サハラMINURSO
- 2021年 11月 2日
- 評論・紹介・意見
- サハラモロッコ国連平田伊都子西サハラ
MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)任期切れ前の10月27日に、国連安保理で討議が予定されていました。 が、国連安保理は10月27日に起きたスーダン・クーデターなどに振り回され、西サハラ討議を止めたそうです。 やっと、10月議長国ケニヤ最後の10月29日金曜日に西サハラ議案がねじこまれ、賛成13棄権2(ロシアとチュニジア)で国連西サハラ安保理決議2609が採決されました。
10月13日と18日に、国連安保理大会議場入り口の<立ちんぼ記者会見>で、ハッキリと西サハラの独立とAU(アフリカ連合)決議の支持を表明してきた国連安保理10月議長マーティン・キマニ国連ケニア大使は、ホッとした表情でMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)任務の一年延期を発表しました。
西サハラ・ポリサリオ西サハラ政府の解放区にあるMINURSOミヌルソ基地で、
パキスタン人のミヌルソ隊長と筆者
① イランも西サハラの脱植民地化を支援:
2021年10月から始まった国連総会第4脱植民地委員会は、1カ月近く証人の証言や訴えが続いている。現在、国連が非自治地域(=植民地)と規定する地域は、西サハラも含めて17地域ある。が、当該地住民の訴えがない所は取り上げない。
そのうち西サハラは、西サハラ住民の陳述に加え、モロッコ人入植者も発言する。さらに、モロッコの植民地政策が好きな国々の国連大使たちが、モロッコ国王を褒める。セネガル、ブルキナファソ、ギネア、シェラレオネ、、と、西アフリカ大半の国は元フランス植民地だ。モロッコ国王のお友達である湾岸諸国の王族やヨルダン国王も、モロッコが主張する<西サハラのモロッコ地方自治案>を第4委員会で支持した。
国連脱植民地化活動を支持する国々は、モロッコ占領地・西サハラ被占領民の民族自決権と人権の回復を国連に急かせる。ロシア、イギリス、アルジェリア、キューバ、ナイジェリア、ボツワナ、南アフリカ、ナミビア、、と、アフリカからヨーロッパから中南米から、西サハラ脱植民地化の声が上がっている。
そんな中で10月25日、マジド・タカ・ラバンチ・イラン・イスラム共和国・国連大使が国連総会第4脱植民地委員会で、「イランは、国連決議1514(1960年植民地独立付与宣言)に基づく西サハラ人民の民族自決権を尊重し、国連指導の下で両当事者がわだかまりなく交渉の席に着くことを推奨する。両当事者が納得のいく解決策を、一刻も早く見つけるべきだ」と、声明を発表した。さらに、「イランは1980年2月27日にSADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)を国家承認している」と、付け加えた。
② 「やっぱり、フランスがモロッコを操ってきた」、その証拠:
マグレブ北アフリカ3カ国の、モロッコとアルジェリアとチュニジアも、元フランス植
民地だ。 その中で中立と自称するチュニジアのワリド・タジム大統領補佐官がTAP(チュニジアAP)でチュニジアの立場を表明した。ワリド・チュニジア大統領補佐官は、「マグレブ諸国の一員として、チュニジアは積極的中立の立場をとってきた。その基本精神に則って、チュニジアは国連指導の平和的当事者交渉を支持する。スタファン・デミストラ国連事務総長個人特使の新任を支持し、彼が前向きな平和的解決を西サハラ紛争にもたらしてくれるものと期待している」と、明言した。元フランス植民地西アフリカを支配しているフランスだが、北アフリカは庇護国モロッコを除いて、思い通りにいかないようだ。
MAP(モロッコ通信)が、西サハラに関する10月29日の国連安保理でのフランス国連大使声明を紹介している。ニコラス・ビビエル・フランス国連大使は、「フランスは、2007年にモロッコが出した<モロッコ地方自治案>が、懸案の問題を政治的に解決するための、基本策だと支援している」と発言した。そして、「スタファン・デミストラ新国連事務総長個人特使の任命を支持する。新たに1年の任期を命じられたMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)はしっかり停戦任務を果たして欲しい」と、言及した。
<2007年のモロッコ地方自治案>は、当時のフランス大統領サルコジの提案だった。モロッコ占領地・西サハラの天然資源開発を目当てに、モロッコとサルコジは二人三脚で、<国連西サハラ人民投票をせずに西サハラを手に入れる方>を練ってきた。フランス国連大使の言葉は、フランスのモロッコに対する立ち位置とサルコジ物欲継承を、期せずして暴露した。サルコジ元フランス大統領は2021年3月1日、フランス大統領選挙にまつわる汚職罪で、フランス裁判所から実刑判決を受けた。
③ モロッコ国連大使が、西サハラとアルジェリアにヘイトスピーチ:
オマル・モロッコ国連大使は、西サハラ国連安保理決議2609採択後に、会議場前で長々とヘイトスピーチをした。オマル・モロッコ国連大使は「アルジェリアは西サハラ難民キャンプで、難民の子供たちに兵役に就くことを強要し訓練している。少年兵問題は由々しき反人道的犯罪で国際法に違反する戦争犯罪だ。アルジェリアの猛省を促す」と、これまでのヘイトスピーチを、捏造写真を振り回して記者たち相手に繰り返した。そして、「子供にカラシニコフ銃を持たせることは、イスラム国やアルカイダのテロ行為と同じだ」と、アルジェリアとポリサリオ西サハラがあたかもテロリスト集団であるかのような、アピールをした。
同名のオマル・西サハラ国連大使には、この<立ちんぼ記者会見>に参加させてもらえなかった。当事者の西サハラ大使を排除した、<西サハラ決議>記者会見とは?解せない。国連安保理西サハラ決議記者会見で発言のチャンスを、禁じられている??解せない。
2018年に不審な死を遂げた前任のブハリ西サハラ国連大使は、サブリ前アルジェリア国連大使と必ず記者会見に出席していた。オマル西サハラ国連大使は国連報道室に対して、「国連記者室は西サハラ問題に関して、両当事者を平等に扱うべきだ」と、抗議すべきだ。
オマル・西サハラ国連大使は何故黙っているのか?黙っていると、オマル・モロッコ大使のヘイトスピーチ独演会が延々と続くことになる。
解せない、、
10月29日の国連事務総長定例記者会見で副報道官が、「本会議の前に安保理は、西サハラとコロンビアの国連ミッションの任期延長を採決した」と、ごく短く報告しました。
現国連事務総長は、フランスのパリ協定を基幹とするCOP(気候変動締約国会議)に夢中です。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、西サハラに関心がないようですネ? それとも、
COP(気候変動締約国会議)の共同経営者であるフランスに忖度して、モロッコよりなんでしょうか?
アントニオ・グテーレス国連事務総長殿、誰にも平等公平でいてください。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年10月31日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11448:211102〕
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