絢爛たる紅葉の中で総選挙の結果をひとり考える
- 2021年 11月 8日
- 評論・紹介・意見
- 選挙野党共闘阿部治平
――八ヶ岳山麓から(348)
自民党の総裁選からの短期決戦、奇襲戦法は効果あった!モリ・カケ・サクラもどっかへ行ってしまった!
今回の総選挙で野党共闘を応援するために、わたしも1万円を共産党に献金し、知人に支持を訴えた。立憲民主党の人が募金に来たらもちろん寄附しただろう。
というわけで選挙結果を見て、文字通り力が抜けたが、ここは護憲勢力のさらなる後退を食い止めるために、あの1万円が役立ったと考えなおして、くよくよしないことにした。
そうはいっても、信濃毎日新聞による9月の世論調査では、「野党伸長望む」が60%近くあったのにこの結果はなんだろう。
長野県では5小選挙区中、自民党が4議席を制し過去最多となった。立憲民主党は前回の希望の党2議席から1議席となった。共産党は小選挙区ではもとより、比例区でも当選者がなくなり、得票数も前回11万4000票から2割減に転落した。
これでは野党共闘を支持した人々の中にも、「立憲+共産+その他」の形に敗因があったと考える人も出るだろう。また今後同じ共闘を続けるべきか迷っている人も多いに違いない。この問題を掘り下げる必要があるとは思うものの、わたしには能力も資料もないのが残念だ。
以下、野党共闘敗北の原因を思いつくまま並べ、いささかの提案をする。
1)世論調査によると、立憲(ひいては野党共闘)の政権担当能力についての有権者の評価は低く、自民党の機能を代替できる政党とはみなされていない。これには枝野立憲代表が民主党政権時代要職にあったという影響がある。もちろん共産の「閣外協力」を嫌う気持もあったであろう。
2)コロナ禍でまず解雇されたのは、非正規労働者だった。要員不足のなか医療従事者には超人的な対応が要求された。これに直面して多くの人が「自助」ではもう生きていけないと感じた。この危機状態に応える道は、「高度の福祉国家」を提起するしかなかった。にもかかわらず、野党連合にはこのスローガンがなかった。だからイデオロギー的には、新首相岸田氏の「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」に対応できなかった。
3)具体的な安全保障と防衛政策が欠けていた。自民党総裁選では、安倍・高市派は東シナ海の緊張を奇貨として、盛んに極右イデオロギーを振りまいた。これにたちむかうには、ただ平和外交というだけでなく、力づくで迫る中国に対する批判が必要だった。当然台湾の「武力解放」にも反対の声を上げるべきだった。
これがなかったために、共産党は「中国共産党も日本共産党も共産党に変わりがない」という宣伝に反撃するチャンスを失った。
4)経済・財政政策では、巨額の赤字国債をどうするかといった最大の課題に取り組んでいない。
5)野党もコロナ対策の時限措置として10万円の給付や、所得税・消費税の大幅減税などの主張をしたが、これは財源論を後回しにしたために、与党との「ばらまき競争」と映った。むしろ、わずかな年金で暮らす高齢者、母子家庭などの貧困問題には恒久的な支援制度を考えるべきである。
6)立憲は有権者から見れば、結党の経過からして反自民のリベラル派として存在すべき政党だが、枝野氏はあくまでも保守本流を主張した。このため自民党との境界が不明瞭になった。
7)立憲の組織上の欠陥は、国政レベルの議員政党にとどまって、職場や市町村レベルで支える下部組織がないことである。このため連合を頼りにしているが、連合の組合員が確実に立憲にどの程度投票するかわかっているか。それがわからないから連合に拝跪し、電力関係の労組などに気兼ねして、西ヨーロッパではとっくに始まっている再生可能エネルギーへの転換、原発の即時停止など思い切った革新的政策が出せないのではないか。
8)共産党志位委員長は「間違っていないから辞任しない」そうだ。そのためか常任幹部会の選挙総括も「力不足だった」というだけで問題を避けている(赤旗日曜版 2021・11・1)。
だが今回の思いがけない不振は、どこかで間違いを犯したことを示している。すくなくとも、党員の老齢化のために集票力が衰退しているのに、それを無視したマンネリ化した指導は反省を要する。とりあえず20年もつづく指導部は、枝野氏に倣って辞任してはどうか。
9)共産党は、党勢を挽回するためには党名を変え、党の内外で自由な討論ができるよう規約を改め、自民党並みに下部党員によって最高指導部を選び、やせ我慢をしないで政党助成金も受け取って、党の印象を一新すべきだと思う。
来年の参院選では、衆院選比例で試算すると、勝敗のカギを握る参院1人区では、自民30勝2敗という結果になる。改選定数2以上の複数区も含めた全選挙区(74議席)の試算でも、与党が51議席を獲得し、野党の20議席を大きく上回るという(時事2021・11・3)。
このままではまた負け戦だ。なんとかなりませんか?
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