核禁条約締結国会議への「オブ参加」に衆院議員の過半数が賛成 市民団体の調査に回答
- 2021年 11月 20日
- 評論・紹介・意見
- 岩垂 弘核核兵器禁止条約
核兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」が今年1月に発効し、その第1回締結国会議が来年3月にオーストリアのウイーンで開かれるが、10月31日の総選挙で当選した議員の過半数が「日本政府はこの会議にオブザーバー参加すべきだ」と考えていることが分かった。16日付の「連合通信・隔日版」が報じた。調査をしたのは「議員ウオッチプロジェクト」などの市民団体である。
核兵器禁止条約は核兵器の開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移譲、使用、使用の威嚇などを禁止する核軍縮史上画期的な条約で、2017年に国連の会議で採択され、今年1月に発効、これまでに56カ国が批准している。第1回締結国会議は核兵器廃棄の期限や核状況を後戻りさせないための措置などを決めるための会議で、条約に署名・批准していない国にもオブザーバー参加を認める方針だ。
しかるに、被爆国である日本政府は、今井雅人・衆議院議員(当時)の核兵器禁止条約への日本の参加に関する質問に対し、1月29日、次のように答弁している。
「我が国は、核兵器禁止条約が掲げる核兵器廃絶という目標は共有している。一方、同条約は、その交渉に当たりいずれの核兵器国等の参加も得られず、また、現実の国際社会における安全保障の観点を踏まえて作成されたものとはいえないことから、核兵器国のみならず、核の脅威にさらされている非核兵器国からも支持を得られていない。現実の国際社会においては、いまだ核戦力を含む大規模な軍事力が存在しており、そのような厳しい安全保障環境の下で我が国として安全保障に万全を期するためには、核を含む米国の抑止力に依存することが必要である。我が国としては、核兵器のない世界の実現に向けて、核兵器の非人道性と安全保障の二つの観点を考慮しながら、現実的かつ実践的な核軍縮のための措置を着実に積み上げていくことが重要であると考えている。
こうした我が国の立場に照らし、同条約に署名する考えはなく、また、締結国会議にオブザーバーとして参加することについては、慎重に見極める必要があると考えている」
議員ウォッチプロジェクトは、核兵器廃絶を願う有志が、核兵器問題に関する日本の議論を活発化させるために始めたプロジェクト。日本のすべての国会議員、都道府県知事、市区町村の、この問題に対する立場をオンライン上で明らかにしている。
連合通信・隔日版によると、議員ウォッチプロジェクトと学生グループの「KNOW NUKES TOKYO」が衆院総選挙期間中に、候補者個人に核兵器禁止条約への見解を聞き、総選挙後、当選した議員の見解を集計した。その結果を11月9日に記者会見して発表した。
それによると、全衆院議員465人のうち、同条約への賛同を表明したのは153人(33%)、「賛同表明していないが、日本政府は締結国会議にオブザーバーとして参加すべき」とした人が110人(24%)だったという。これを合わせると263人となり、全衆院議員の57%に達する。
ちなみに、自民党議員(262人)にうち、条約へ賛同したり、オブザーバー参加を支持した議員は計85人で、全体の32%。公明党(32人)は条約に賛同したり、オブザーバー参加を支持した議員は16人で、全体の50%。野党各党は、こうした議員が88~100%を占めた。
記者会見で、議員ウォッチプロジェクトの川崎哲代表は「電話やメールで全候補者に賛否を尋ねた。条約への賛同を表明した議員は、総選挙解散前に28%だったのが、選挙後は33%に増えた。岸田首相はせめて『オブ参加』を決断してほしい」と述べた。
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