くらしを見つめる会つーしん NO.217から 2021年12月発行
- 2021年 12月 23日
- 交流の広場
- 村山起久子
見られなかった募集要綱
先日、たまたま電機機関車の運転士だったという人と話しているとき、ふと1974年、高3の秋のことを思い出した。将来は鉄道員なりたいと思っていた私は、学校が午前中終わったある日、京都駅から、新快速に乗って大阪駅へ向かった。新快速は当時走り出したばかりで、ボックスシートの急行車両の余剰車を使っていたが、今と違って大阪までノンストップだった。大阪鉄道管理局は、駅前にあり風格のある大きな建物で、私は人事担当係を訪ねて行った。職員採用はいつどんなふうに行うのかを尋ねると、既に来春卒業者対象の採用試験は終わっているとのこと。進学校にいて、高卒で就職する際の試験時期などに無知だった自分を思い知らされた。
それでも担当者は、来年の試験も受けられるからよかったら受けてください、と優しく言ってくれた。そして、どこの高校かと聞かれたので、私が高校名を答えると、募集要綱を送っているはずだと言うではないか。
私は、学校や教師に対して、腹立たしさというか不信感を持った。ほぼ全員が進学し、就職のことなど話題にもならない高校だから、就職案内の掲示板などがないのは仕方ないとしても、何処かにファイルを置くなど、何らかの形で知らせて欲しかった。それどころか、進路相談のときに、私が、鉄道員はどうしたらなれるのかと言ったら、担任は、連携作業の多い仕事だから縁故採用だ、とか否定的な答えしかくれなかった。
募集案内のパンフレットを手にして、管理局を後にした私は、来年の採用試験は親が反対しても受ける気になっていた。ところが、周りにつられて受験勉強してしまって、地方の大学に引っかかってしまった。無邪気なもので、受かると素直に嬉しいものである。田舎町で暮らすのも楽しいかもしれない、などと思ってしまう優柔不断さが、私のダメなところである。
もし国鉄に就職していたら、どんな職種についていただろうか、などと思う。運転もしてみたかっただろうが、運転するなら、お客さんとのやり取りのある、路面電車か田舎のバスだと思う。国鉄なら、やっぱり車掌さんかなと思う。中高生の頃、乗り降り自由の均一周遊券で旅したときに、親切にしてもらった思い出がたくさんあるからだ。
また、分割民営化の際には、自分はどんな立場に立っていただろう、などとも考えてしまう。それはおそらく重い課題で、その時その場に立ってみないとわからないことで、いま別のところに立って、どうこう言える話ではないと思う。
木村一郎
♪こんな本いかが?❶
『デジタル・ファシズム』 堤未果著 NHK出版新書
2020年上半期、世界で360億件のデータ盗難被害があった。データは集中するほどサイバー犯罪に弱くなる。現在の日本がしようとしているデジタル化は巨大権力と利権の館。政府サービスを請け負うのは外資企業で、膨大な個人情報がGAFAなどによって商品化される。GAFAが奪うのは「自分で自分の行動を決める未来を選択する権利」だと著者は言う。福祉も教育もデジタル化されることで公平になるかのように言われているが、米国ではデジタル化によって福祉予算や公立学校の教師が大幅に削減され、生徒の個人情報は金儲けに使われている。また中国ではデジタル監視社会となって個人のあらゆる行動が信用スコアとしてポイント化され、政府に好ましくないと判断されればまともに暮らせない。デジタル社会では、ボタン一つで人の行動を止められる。デジタル化は必須ではあるけれど、誰がどのようにデジタルを動かし、どんな社会を目指すのか。便利さや効率性ばかり求めていると、私たちは動かされる「駒」に過ぎない存在になってしまう。デジタル・ファシズムを阻止するためにも本著の一読を!
♪こんな本いかが?❷
『今だから知るべき ワクチンの真実』 崎谷博征著 秀和システム
(予防接種のABCから新型コロナワクチンとの向き合い方まで)
世界的に出された1,000を超える論文や参考文献を元に、ワクチンによる薬害の歴史を紐解き、今まで様々なワクチンによってどれほどの被害・悪影響(死亡率増加、感染症悪化・増加、脳脊髄炎、自閉症、不妊、慢性疲労、認知障害、アレルギー等々・・)があったかを指摘。WHOや米国のFDA、CDCなどワクチンや医薬品の認可をする機関も世界的巨大製薬企業から多額の助成金をもらっており、医者は製薬企業からの研究費に頼っているため様々なデータが歪められデメリットを矮小化、ほとんど無い効果が強調され、ワクチン接種が推進されているという。注目したいのはワクチン接種と優性思想との結びつきで、特に強制接種の問題と今回の遺伝子ワクチン開発の実験過程についての言及にはゾッとさせられる。新型コロナワクチンのみならずワクチンの問題が凝縮された本著、特に若い人、子どもの保護者に読んでほしい。
〈編 集 後 記〉
過日の衆院選の結果は驚きでした。何故、お金(みんなの税)によって政治を歪め、優秀だった官僚組織も破壊した上、酷いコロナ対策しかできなかった自民党が単独過半数を取れるのでしょうか。病院など「公」を削りに削って、100万人当たりのコロナ死者数がインドより多くなってしまった大阪を筆頭に、やってる感だけの(自公より酷い)維新が大躍進。侮辱・暴行傷害罪で訴えられている維新の候補者が当選する一方、辻元清美さんのように、本質を突く質問を重ねてきた貴重な議員が落選してしまうとは、どこを見て投票しているのか・・。
大企業からの支援を受け、「政治と金」疑惑いっぱいの議員が多数当選し、一握りの人のための政治が横行している国会。産業転換も賃金アップもさせられず、日本は一人当たりのGDP(個人の購買力)も、世界33位に低下。ジェンダー不平等、人権・人命軽視の入管法、開くばかりの格差・・あらゆる統計数字を見ると、もはや日本は先進国と言えないほど成り下がっています。このままでいいと思う人が多いのか、選挙では変えられないと思わされているためか、民主党政権は失敗だったという自公やマスコミの宣伝が成功しているのか・・投票率は6割にも届きませんでした。
選挙結果を受け、最大野党立憲民主党は、「共産党との野党共闘は失敗だった」「野党合同ヒヤリングは止めろ」という自公維新を代弁するマスコミなどの意見に流されたのか、新しい党首に泉健太さんを選びました。野党の数が増えても、自公維新と似たものが増えるだけなら、戦前の大政翼賛会のようなものになってしまいます。もうどうにでもなれ!と言いたくなりますが、投げ出したらオシマイ。生活に困っている人のために何とか政治を変えたい!と、必死にがんばっている議員も少なからずいます。政治は生活に直結するもの。投票率を上げれば変わるはず。少しでもまともな政治・社会にするために知恵を絞っていきましょう。(きくこ)
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