本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(339)
- 2021年 12月 25日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
50年ぶりの水準に低下した円の実質実効為替レート
11月17日に「BIS(国際決済銀行)」が発表した「円の実質実効レート」によると、「日本の円安は、50年ぶりの水準にまで低下している状況」とのことである。つまり、通貨の総合的な実力を表す「実質実効為替レート」において、「日本の円は、68.71という、1972年前後の水準にまで低下した」と発表されたが、この時の注意点は、「2015年6月に、すでに、67.6の水準にまで低下していた事実」だと考えている。
より具体的には、「過去6年余りの期間は、日銀の金融政策などにより、円安の進行が停止していた状況」だったものと思われるが、今後は、「金利の急騰とともに、急速な円安が進展する展開」が危惧されるのである。つまり、「国家の体力」については、「為替」と「金利」で判断できるが、「過去数年間は、いわゆる異次元の金融緩和により、実態が隠蔽されていた状況」だったものと想定されるのである。
別の言葉では、「日銀における当座預金残高の大膨張」という「禁じ手中の禁じ手」とでも呼ぶべき行為により、「金利の上昇」が食い止められていたものの、「為替」に関しては、「ドルと円の価値が、他国通貨に対して、急激な低下を見せていた状況」だったのである。つまり、「実体経済」に関しては、すでに、実質的な水準低下が発生していたものの、実際には、大膨張した「マネー経済」の存在により、事実認識の理解が遅れたものと想定されるのである。
そのために、今後の展開として予想されることは、やはり、「デリバティブのバブル崩壊」が引き起こす「急激な金利上昇」であり、この時に、最も被害を受けるのが、過剰な債務を抱えている「日本」のようにも感じられるのである。つまり、現在の「日本」は、「1991年のソ連」と酷似した状況のようにも感じているが、実際には、「資本主義そのものが、崩壊を始めている状況」とも言えるようである。
より詳しく申し上げると、今後は、「世界全体が、ハイパーインフレに見舞われる可能性」が危惧されるわけだが、このことは、「1923年のドイツ」、あるいは、「1945年の日本」などのように、「国家の財政破綻が、通貨制度を破壊させる展開」とも言えるのである。しかも、現在は、「目に見えない単なる数字が根本の通貨となり、世界全体を動かしている状況」となっているために、今後の大混乱には、決して、予断を許さない展開も想定されるが、実際には、「ライプニッツの予定調和」などが指摘するとおりに、「すべてが神の計らいだった」という可能性も考えられるようである。(2021.11.18)
------------------------------------------
復活し始めた価格の自動調節機能
「需要が供給を上回れば価格が上昇し、需要の減少に繋がる」、また、反対に、「供給が増えたものは価格を押し下げ、新たな需要を喚起する」ということが「価格の自動調節機能」と呼ばれるものであり、「大自然界」と「人間社会」との調和は、数十年前まで、この機能によって保たれてきた。別の言葉では、「人類が地球に住むことを許されていたのは、この調和を保つことが絶対的な条件」でもあったが、実際には、「1971年のニクソンショック」、そして、「1980年代初頭からのデリバティブ大膨張」などにより、「価格の自動調節機能」が失われ始めたものと想定されるのである。
つまり、「人類の奢り」とも言える「自然は征服されるべきである」という認識や理解により、「人類は、利益に繋がる限り、どのような行為でも行うようになった」という変化が発生したわけだが、この理由としては、「デジタル通貨の大膨張による市場価格の歪み」が指摘できるものと考えている。より具体的には、「価格統制による金利や物価の低下」のことだが、数年前までは、「金融界のブラックホールの中で、デジタル通貨と金融商品の間で、資金の流れが発生していた状況」のために、「金利の異常な低下は発生したものの、実物資産の価格上昇にまでには繋がらなかった」という展開だったのである。
別の言葉では、過去20年余りは、「仮想現実の世界で、人類がデジタル通貨を追い求めていた期間」だったものの、最近は、「紙幣に交換された通貨が、実物資産へ流れ始めた」という変化が発生し始めているのである。つまり、「金融メルトダウンの進展」により、「価格の自動調節機能」が「金融市場から実物市場へ移行を始めている段階」となっており、このことが、現在、古典的な「インフレ(通貨価値の下落)」を発生させているのである。
また、この変化が発生したキッカケの一つが、今回の「世界的なコロナショック」とも思われるが、このことは、「実体経済のマヒ状態」を表しており、今後の注意点としては、「マネー経済のマヒ状態」とも言える「金融界の白血病」とも想定されるのである。つまり、「大膨張したマネーが、紙幣に変化して、実体経済に対して、大津波となって押し寄せてくる状態」のことであり、このことが、「実体経済」と「マネー経済」との間で発生する「価格の自動調節機能」とも理解できるのである。
しかも、今回の大変化は、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」以来の出来事であり、その結果として、予想以上の大混乱も想定されるものの、この危機を切り抜けるために必要なことは、やはり、「歴史の精緻な分析」だと考えている。(2021.11.19)
------------------------------------------
民の信用
四書五経の一つである「論語」では、「政治にとって必要なものは、軍備と食と民の信用である」と言われている。そして、「この三つのうち、最初に何を取り去ることが可能か?」と問われた孔子は、「軍備である」と答え、また、「次に可能なものは食である」と答えたそうである。つまり、「飢饉などの食の問題は頻繁に起こることでもあるが、信用が失われ、国民同士が恨み合い、殺し合うような内戦状態については、政治家が最も避けるべき事態である」と言いたかったものと思われるのである。
そして、このような観点から、現在の「世界情勢」を鑑みると、「軍備」については、「地球環境を完全破壊するほどの規模で装備されている状況」となっており、また、「食」については、「貧富の格差」が存在し、「先進国では十分な食料が供給されているものの、発展途上国では、食料不測の深刻化が激しくなっている状況」とも報告されているのである。つまり、現在の世界情勢は、きわめていびつな状態となっているものと考えているが、この理由としては、やはり、「信用が形となったマネー(お金)の存在」が指摘できるものと感じている。
別の言葉では、今までの状況として、大量に創りだされた「デジタル通貨」が利用されることにより、「軍備」や「食料」などが過剰に供給されてきた状況だったものの、現在では、「いまだに存在する軍事紛争」や「地球環境の悪化」などにより、「食料」に関して、さまざまな問題が発生し始めた状況とも想定されるのである。つまり、現在の世界情勢は、「根のない切り花」のように、「根本の信用が失われながらも、表面上の姿だけが整っている状況」とも考えられるのである。
より具体的には、「コンピューターネットワークの中を、デジタル通貨が流れることが可能な状況下では、全く問題がない状態」でもあったが、今後は、徐々に始まっている「世界的な紙幣の増刷」が、「ある日突然に、世界の金融システムを麻痺させる可能性」も予想されるのである。つまり、「世界中の人々が、現在のデジタル通貨に対して、信用を喪失する状況」のことだが、この点については、「信用の崩壊は、一瞬の出来事である」という格言のとおりに、「ほぼ瞬間的に発生する事態」も想定されるのである。
そして、このような状況下で思い出されるのが、冒頭の「孔子の言葉」であり、実際には、「武力」や「食」の根源は、人々の「信用」を基にした「分業」にあり、このことが、人類社会にとって、最も大切なものだったものと考えている。(2021.11.22)
------------------------------------------
2021年を振り返って
「2021年」も、昨年に続き、「世界全体が、コロナショックに振り回された状況」だったが、注目すべき変化としては、「デフレからインフレへの転換が、知らないうちに終了していた可能性」だと考えている。つまり、現在では、「世界中の人々が、コロナと同様に、インフレを危惧し始めている状況」となっており、このことは、「コロナショック」による「実体経済のマヒ状態」から「金融危機」がもたらす「マネー経済のマヒ状態」への移行を意味しているものと思われるのである。
別の言葉では、「ハイパーインフレ」の発生要因として挙げられる点は、最初に、「実体経済の悪化」であり、その後に、「税収の落ち込み」、そして、「国債の買い手不在」などがもたらす「国家財政の破綻」とも理解できるのである。つまり、過去100年間に、30か国以上で発生した「ハイパーインフレ」については、基本的に、「先進国や後進国の違いにかかわらず、同じ条件下で発生する」ものと想定されるのである。
そして、この点に関して注意すべき事実は、「1971年のニクソンショック以降、主要な先進各国だけが、ハイパーインフレとはかけ離れていた状態」であり、この理由としては、やはり、私が提唱する「信用本位制の存在」が指摘できるものと考えている。つまり、大量に創られた「デリバティブ」と「デジタル通貨」の存在により、「先進各国は、人類史上、未曽有の規模で超低金利状態を維持できた」という事実である。
あるいは、「デジタル通貨の存在により、未曽有の規模での経済成長を達成できた事実」でもあるが、現在では、すでに、「実体経済のマヒ状態」が始まった段階とも想定されるのである。つまり、「根のない切り花」のとおりに、「表面上の繁栄」は継続しているものの、「根底に必要な信用が枯渇した状態」となっており、このことは、たいへん近い将来に、「表面上の繁栄が、あっという間に崩れ去る可能性」を示唆しているのである。
より具体的には、「金融界の白血病」という「大量に増刷された紙幣が、コンピューターネットワークの中を流れることができなくなる可能性」であり、このような状況下では、現在の経済的な繁栄が、一挙に、崩れ去る可能性も存在するのである。つまり、「取引の決済」に関して、「長い時間」と「大きなコスト」が必要とされる可能性のことでもあるが、この点については、「デリバティブのバブル崩壊」、そして、「国債価格の暴落(金利の急騰)」という事態に見舞われた時に、世界中の人々が気付かざるを得なくなり、しかも、タイミング的には、きわめて近い将来のことだと考えている。(2021.11.30)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11605:211225〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。