米国、凍結アフガン資産70億ドルの使途決定 人道支援と別組織のNYテロ犠牲者支援に半々
- 2022年 2月 18日
- 評論・紹介・意見
- アフガニスタンアメリカ坂井定雄
バイデン米大統領は11日、米国が凍結しているアフガニスタン中央銀行の準備金資産70億ドル(約8,100億円)を、半額はアフガニスタン国内での人道支援、半額を2001年9月11日にニューヨークの貿易センタービルにテログループに乗っ取られたユナイテッド航空機が衝突し、約3千人が死亡したテロ事件の被害者に支払う準備金とする大統領令に署名した。
この事件の犯行グループは、サウジアラビア起源の反政府テロ組織「アルカイダ」で、母国を脱走、いったんスーダンに逃れたあと、タリバン政権下のアフガニスタンに逃げ込み、ビンラディンの指揮下で拠点を築いていた。その後、タリバン政権は「アルカイダ」の弾圧を開始、一部はアフガニスタンに現在まで生き残り、大部分シリアやイラクで反政府テロ活動を繰り返している。
しかし貿易センター事件の被害者の遺族たちは、米連邦裁判所に訴訟を起こし、アフガニスタン政府の凍結資産から補償金の支払いを求める訴訟を起こしており、バイデン政権はそれに備えて、アフガニスタン政府の海外資産半額を凍結保持すると説明している。
▽怒るカブール市民たち
上記のような米バイデン政権の決定に対して、アフガニスタンの国民は怒り、抗議集会が開かれている。2月13日のPajhwok通信社の報道全文を紹介しよう
2022年2月13日 – 16:32
カブール(Pajhwok)首都カブールの住民は13日(日)、9.11同時多発テロはアフガニスタンの人々とは無関係であり、米政府が凍結している彼らのお金をテロの犠牲者への補償金として渡すべきではない、この決定が再考されないならば、彼らは黙ってはいないと抗議集会を開いた。
ジョー・バイデン米国大統領は、タリバンによる全国支配の後、アフガニスタンの中央銀行が米国の金融機関に預けている約70億ドルの資産を凍結。35億ドルを人道的支援に振り向け、残りを9月11日のテロ攻撃の犠牲者の家族のために温存すると宣言している。
金曜日に署名された大統領令の中で、バイデン氏は米国内のアフガニスタン中央銀行の「すべての財産および財産上の利益」を封鎖し、ニューヨーク連邦準備銀行の口座に移すよう指示し、タリバンの米国金融システムへのアクセスを事実上遮断した。
アフガニスタン資本に関する米国の決定は、アフガニスタン市民の広範な抗議行動を引き起こした。
日曜日にカブールで開催された「アフガン・シーア派学者」のグループが主催する集会では、多数のカブール市民が米大統領の発言を批判した。
参加者は、9.11テロはアフガニスタンの人々とは何の関係もなく、アフガニスタン人はこの事件で何の役割も果たしていないと述べた。アメリカ大統領は、テロの犠牲者への補償にアフガン人のお金を使うべきではない、と彼らは言っている。
「自由と独立の国民的合意」協議会の代表であるアタウラ・サディク氏は、9.11同時多発テロはアフガニスタン人が計画したものでも実行したものでもないため、アフガニスタンの人々には無関係であると会議で以下のように述べた。
「アメリカは自分たちを世界の超大国だと思っているが、今はアフガニスタンの人々のお金を自分たちのために使おうとしている」と述べ、アメリカ大統領の命令は残酷だと言った。
「占領は終わり、今は独立の時代であり、アフガニスタンの人々はもはや抑圧されておらず、アフガニスタンでの代理戦争はなくなり、すべての人々が団結している。アフガニスタンの人々は自分たちの権利を誰にも渡さないし、世界はアフガニスタン人のお金を渡して補償する責任がある」
「我々はアメリカ大統領に、アフガニスタンの人々は友情と相互尊重を望んでいると伝える」
同協議会の副代表であるアッサル・アフマド・シャキリ氏は、「ジョー・バイデン氏はアフガニスタンの人々から100億ドル近いお金を押収し、9.11同時多発テロの犠牲者を補償することを決意しているが、現実にはテロはアメリカ自身が計画したものである」と述べた。
彼はアフガニスタンに対するイスラム諸国の沈黙を批判し、「アメリカはアフガニスタン人に負けたので、今度はアフガニスタンの人々に経済的な復讐をしようとしている」と述べ、米国の決定の再考を求め、決定が覆るまでアフガニスタン人は黙っていないだろうと求めた。
その前日には、アフガニスタン鉄鋼業組合が抗議集会で、米国大統領の決定を批判し、この動きを再考するよう求めた。(了)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11764:220218〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。