本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(350)
- 2022年 3月 20日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
金利とインフレ率とのタイムラグ
世界の金融市場は、現在、大混乱の状態となっているが、この理由としては、「今までの無理に無理を重ねた金融政策に関する歪みが、金利の上昇とともに露見し始めた状況」が指摘できるようである。別の言葉では、「断末魔の叫び」とでも呼ぶべき様相を呈し始めた「世界の金融市場」については、今後、より一層の大激変に見舞われるものと考えているが、現時点で必要なことは、「金利とインフレ率のタイムラグ(時間的なずれ)」に関して、理由や原因を正確に把握することだと考えている。
つまり、本来は、「インフレ率の上昇を抑えるために、引き締め的な金融政策が実施される」という状況だったわけだが、現在のような「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度においては、「正確なインフレ率」が理解できない状況となっているのである。具体的には、「現在、どのような商品と通貨が存在するのか?」ということであり、実際には、「統計数字で把握できない金融商品やデジタル通貨が、大量に存在する状況」となっているのである。
そのために、今回の「金融大混乱」については、「今までの常識」を捨て去ることが大切だと考えているが、特に、現在のような「金利上昇の遅れ」に関しては、「中央銀行や政府の思惑」を理解する必要性があるものと思われるのである。つまり、「金利の上昇が、国家財政の破たんにつながるリスク」のことであり、実際のところ、「日銀」に関しても、「短期金利が0.3%にまで上昇すると、債務超過に陥るリスクが存在する状況」となっているのである。
その結果として、現在でも、「国債の買い付けにより、超低金利状態を維持しようとする努力」が継続しているようだが、この点については、すでに、「インフレの大津波を人力で止めようとする状態」のようにも感じられるのである。つまり、「今後の数か月間で、世界全体がインフレの大津波に翻弄される可能性」を憂慮している状況でもあるが、この点に関して、最も注目すべき点は、やはり、「いつ、先進各国の中央銀行が、本格的なインフレ政策を実行し始めるのか?」ということである。
具体的には、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手が消滅した時に、大々的に紙幣の増刷を実施した展開」のことである。そして、この点については、すでに「時間の問題」となっており、実際には、「暦のフラクタル(相似形)」などの利用により、「8月頃に、大きな転換点が訪れるのではないか?」と考えているが、後は、「中央銀行の動向」と「人々の認識」が、大きなカギを持っているようにも感じている。(2022.2.12)
------------------------------------------
全員が「億り人」になる時代
「マネーの歴史」を尋ねると、「人類の歴史」のみならず、「当時の人々が、どのような価値観で、どのような生き方をしてきたのか?」がはっきりと見えてくるものと感じているが、現在では、「億り人」、すなわち、「一億円の資産を持っている人々」が、「人生の成功者」と認識されているようである。つまり、「お金が神様となった時代」においては、これほどまでの異常事態が発生するものと思われるが、映画の「猿の惑星」と同様に、「どちらが正常なのかは、後世の人々が判断する状況」とも言えるようである。
より詳しく申し上げると、「お金が病んでいる」と危惧され始めた「1980年代の初頭」においては、まだ正常な判断ができる人々が、数多く存在したものと思われるが、その後の「日本の株式と土地のバブル」や「世界的なデリバティブのバブル」、あるいは、「DXのバブル」などを経験したことにより、「お金は増えるのが当たり前である」、そして、「どのような手段を使っても、お金を獲得した人が成功者である」というような認識が広まっていったようにも感じられるのである。
つまり、「お金があれば、物だけでなく、心まで買える」というような「誤った認識」が世界中で広がった可能性のことでもあるが、現在では、すでに、この点に関する劇的な変化が発生している状況とも言えるのである。具体的には、「インフレ」であり、また、「金利の上昇」のことだが、この点については、今後、更なる劇的な変化に見舞われるものと考えており、実際には、「2008年のジンバブエ」のような状況を想定している次第である。
より具体的に申し上げると、「100兆ジンバブエドルが、デノミにより、翌年に、1ジンバブエドルになった展開」のことだが、このような事例については、過去の歴史で頻繁に発生していることも見て取れるのである。つまり、全ての人々が「億り人」よりも「お金持ち」になったものの、実際には、「お金の価値が激減したことにより、誰も、その紙幣を欲しがらなくなった状況」のことである。
そして、この点に関する「人類史上最大の大転換」が、間もなく発生するものと考えているが、それは、現代の最も重要な貨幣となった「デジタル通貨」に関して、「中央銀行が、自爆テロとも呼べる行為」を実施し始める可能性のことである。つまり、「コンピューターネットワークの中を、紙幣が流れることができない」という事実を熟知していながらも、「資金繰りのために、紙幣の大増刷を始める展開」のことであるが、現在では、このことを察知した人々が、穀物や貴金属などの実物資産を買い始めた状況のようにも感じている。(2022.2.13)
------------------------------------------
日銀の金利抑圧リスク
2月14日に実施された「日銀による無制限の国債買いオペ」については、「2%の物価目標を達成するために、国債を購入し、強力な緩和政策を継続する」という理由が述べられている。つまり、「国債の買い付けにより、日本のインフレ率を上げることが可能である」という理論上の説明が付け加えられているようにも思われるが、現在の疑問点としては、「本当に、日本国民は、この説明を信じているのだろうか?」ということである。
より具体的に申し上げると、「空振りに終わった国債買いオペ」が象徴するように、「資金繰りに窮し始めている日銀」としては、「国債の買い付け資金調達」が難しくなっているために、「単なる口先介入」だけを目論んだ可能性も考えられるのである。別の言葉では、他の先進諸国よりも、金利上昇に対する抵抗力が弱くなっている「日銀」としては、「なりふり構わず、ありとあらゆる手段を行使して、金利上昇を抑えたい欲求」が存在する状況とも想定されるのである。
つまり、「日銀の目的」は、以前から申し上げているように、「2%の物価上昇」ではなく、「金利の抑圧」であり、その理由としては、「国債買い付けの資金として、民間金融機関から借り入れている当座預金」に関して、「超低金利状態を維持することにより、金利負担の上昇を抑えたい」という目的が存在する可能性である。そして、このような「無謀な金融政策」は、「日銀の役割」を超えた「禁じ手とも言える行為」だと思われるが、実際には、「いまだに、誰も、この点を指摘しない状況」となっているのである。
より具体的に申し上げると、「1971年のニクソンショック」や「1980年代初頭から大膨張を始めたデリバティブ」、そして、「マネーの大膨張に伴う先進各国の金利低下」を理解しない限り、今後の「金融大混乱」に対応することは不可能な状況のようにも感じている。別の言葉では、すでに始まった「世界的なインフレ(通貨価値の下落)」については、今後の数年間で、全体像が明らかになるものと考えているが、この時に必要とされることは、「お金の謎」を正確に理解することとも想定されるのである。
つまり、「デジタル通貨の枯渇」と「紙幣の大増刷」という、前代未聞の金融大混乱に遭遇している状況でありながら、ほとんどの人々が、いまだに、過去の残像に囚われ、「DX革命の進展により、世界経済は、より一層、発展する」というような認識を抱き続けているようだが、今後は、「ミクロの物理学」が指摘するように、「量子コンピューターなどの新たな技術」や「目に見えない精神的な分野」などへの注目が高まるものと感じている。(2022.2.15)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11867:220320〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。