地震・戦争・核
- 2022年 3月 25日
- 評論・紹介・意見
- 原発地震小原 紘戦争
韓国通信NO692
16日の深夜、福島、宮城県を震度6強の地震が襲った。千葉もひどい揺れで、11年前の東日本大震災を思い出させるほどだった。深夜、94才で一人暮らしをしている仙台の叔母に電話をしたが、幸い大きな被害がなかったようで安心した。
<身を守る行動を…>
原発の「大規模停電による冷却ポンプの停止」が伝えられるなか、岸田首相はテレビで「異常なし」と国民に向かって「地震から身を守る行動」を呼びかけた。異常があったらどうする! 原発に依存し続ける国の首相のいけしゃあしゃあとした話ぶりに呆れた。
「原発情報」は地震のたびに永遠に繰り返される。100年後には首相も私たちもこの世にいない。テレビの画面を見ながら未来の人たちに対する申しわけない気持ちで一杯だ。
人類史上こんな無責任なことはない。その日はなかなか寝付けなかった。
ロシアによるウクライナ攻撃が始まってから3週間たった。激化する戦闘に心を痛め、チェルノヴィリ原発<下写真>への攻撃、プーチンの核兵器使用の示唆に不安が広がる。
<原発事故に懲りない日本とウクライナ>
原発事故にもかかわらずウクライナに15基も原発があるのを知って驚いた人も多い。日本と同じく、愚かにもウクライナは事故から何も学ばなかったようだ。
福島原発事故の4年前に発表された『原発を並べて自衛戦争はできない』(山田太郎)は、日本海側にズラリと並べた原発が「敵国」によるミサイル攻撃によって原爆投下と同じ被害をもたらすことに警鐘を鳴らし、敵国を作らないことが国の安全に不可欠と説いた。北朝鮮との関係が緊張を高めていた時期だった。
原発を抱えるウクライナは絶対に戦争をしてはいけない国だった。<写真/シェルターで覆われただけのチェルノヴィリ原発>
映像に心を痛めながら台湾をめぐる米中対立にわが国が巻き込まれるのではないかという不安。ミサイル発射を続ける北朝鮮も不安材料だ。ウクライナは「他人事」ではないと多くの人が感じている。
絶対に戦争をしないこと。戦争の不安に乗じて「やられる前にやってしまえ」という敵基地攻撃、核の共有論が浮上している。日米同盟と軍事力の強化、平和憲法をぶっ潰す絶好の機会到来と張り切る人たち。自称愛国者たちの、誰でもわかる乱暴で論外の理屈だが、笑って見過ごすわけには行かない。
<戦争になる前に>
ゼレンスキー・ウクライナ大統領は国民に銃を取って祖国を守れと命令した。祖国と自由を守るウクライナの人たちを見て、「お前ならどうするか」と問われそうである。
一旦戦争が起きたら勝者も敗者もない。戦争になれば日本列島は一瞬のうちに廃墟となる。原発を並べておいて戦争になれば「最終戦争」になることは火を見るより明らかだ。銃を持って参加することは考えられない。
<戦争を起こさない努力>
ウクライナに対する同情はもちろんある。自国の都合で侵略するロシアは非難してもしきれないが、茶の間でどれほど心配しても、またロシア・プーチンに対する憎悪を掻き立てても、事態が好転するとは思えないもどかしさがある。
批判を覚悟のうえでウクライナの問題について若干指摘をして置きたい。
かなり煮詰まったといわれる停戦条件が「ウクライナの中立化」「NATOへの不参加」「ロシア語の公用語化」と聞いて耳を疑った。その程度なら話し合いで解決できたのではないかと思った。国土が破壊され数百万の国民が避難を余儀なくされ、無辜の命が失われる事態は防げたのではないかという素朴な疑問である。
心臓を差し出すことを迫る高利貸シャイロックは、血を出さない条件を付けられ裁判で負けた。血を出さずに済んだはずのウクライナの悲劇が『ベニスの商人』では喜劇として語られた。国民の血を流させないことが政治指導者の責任である。ウクライナは戦争を回避するために最善を尽くすべきではなかったか。
原発と核兵器を生んだ世界。さらに温室ガスによる気候変動によって人類は絶望の崖っ縁に立たされている。希望は核の全廃と金儲け至上の社会の仕組みを根本から変えること。ウクライナ戦争は逆説的にそれを明らかにした。(3月20日)
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