「ワクチン・9条」、世界各国に広く接種を。
- 2022年 4月 5日
- 評論・紹介・意見
- 9条戦争と平和澤藤統一郎
(2022年4月4日)
ヒトを宿主とする「戦争ウィルス」という亡霊が、人類誕生以来今日まで、世界の各地を徘徊してきた。そして今、このウィルスによる古典的な「戦争病」がヨーロッパの一角に発症し、その被害が猖獗を極めている。
当然のことながら、このウィルスは戦時にのみ存在するものではない。平時に、ヒトの内奥に潜伏して伝播を繰り返し、ときに権力者に感染して、基礎疾患と相俟って戦争病の発症と重症化をもたらす。その症状と被害とはとてつもなく無惨で甚大である。宿主の絶滅をももたらしかねず、その対応は人類全体の喫緊の課題となっている。
戦争ウィルスには、いくつもの亜種・変異株がある。
国際収奪種
大国ナショナリズム種
民族ヘイト株
言論統制株
好戦教育株
それぞれのウィルスが各国で蔓延し、他国のウィルスとの相互作用によって急速に活性化される。いったん発症すると、未だに有効な治療手段は開発されておらず、このウィルスの暴虐を制御することは困難である。戦争という典型症状に至らずとも、戦争未満の大国の横暴や威嚇は常に国際緊張の火種となってきた。
この事態に、けっして人類が拱手傍観してきたわけではない。数々の平和思想を生みその実践も重ねられてきた。戦争を違法とする国際条約の締結や、国際連盟・国際連合、さらには国際司法裁判所も創設されている。それでもなお、戦争ウィルス根絶は困難で、戦争病を駆逐し得といない。
人類はこのウィルスに対する有効な抗体をもたないのだが、実は既に75年前に戦争ウィルスに対する有効なワクチンは開発され、少なくも一国には接種されている。そのワクチンの名を「日本国憲法第9条」という。
そのワクチン効能の機序は、被接種国の権力に「戦争の放棄」と「戦力の不保持」を命じることによって、一切の戦争を不可能としてた平和を招来しようというものである。ワクチンであるからその接種率の向上が課題であるところ、残念ながら、現在に至るまでその明るい見通しは開けていない。
だが、あきらめてはならない。このワクチンの効果は実証済みなのだ。戦争ウィルスに起因する最も警戒すべき重症症状は、侵略戦争の開戦である。「9条ワクチン」は、被接種国が侵略戦争に暴走することへの有効な法的歯止めとなる。もちろん、侵略戦争に不可避的に附随する軍国主義の高揚や言論統制、教育の国家化なども防止する。そして、外交における相手国への威嚇や挑発はなく、国際協調を実現する外交態度の実現ともなる。
もっとも9条ワクチンは平和への万能薬ではない。全世界の主要国がこのワクチンを接種するまでは、平和をつくる国際運動の有力な武器になるという役割を果たすことになる。平和のための工夫と努力の、頼もしい拠り所となるのだ。
いま、望まれることは、9条ワクチンの接種率の向上である。今、人類の平和構築の構想は過渡期にある。このワクチンの接種が全ての主権国家に行き届いたとき崩れぬ平和が実現する。世界の戦争が根絶され、恒久平和が実現する。
それまで、このワクチンの摂取率を上げることが、人類の課題である。侵略・軍拡・核武装容認・核威嚇・敵基地攻撃能力整備論は、ウィルスに冒された症状の発現である。これを克服する努力を重ねなければならない。世界の主要国に接種が進行するまで。貴重な既接種国が、自らワクチンの効果を否定することは、人類史に対する冒涜とというべきである。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.4.4より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=18874
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〔opinion11922:220405〕
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