気をつけよう「身を切る改革」 あなたの身 ― 維新の正体を見つめよう
- 2022年 4月 6日
- 評論・紹介・意見
- 地方自治日民協澤藤統一郎
(2022年4月5日)
「法と民主主義」4月号(567号・3月末発刊)の特集タイトルは、「『維新』とは何か」というもの。下記の目次のとおり、維新を多面的によく語っている。維新という事象を考えるについて必読と言ってよい。
『維新』とは何か? その性格を表すのに、次の3ワードが必要にして十分ではないだろうか。
新自由主義・ポピュリズム、そして改憲策動。
このほかに、この特集を通読すると「成長至上主義」「幻想ふりまき」「管理・統制」「略奪型経済政策」「メディア露出」「新たな利権」「自助努力・自己責任」「反科学主義」「批判拒絶体質」「政権擦り寄り」等々の評価も述べられているが、概ね前記の3点で包括できるだろう。
維新と言えば、何よりも極端な新自由主義政党である。資本の利益のために、府民・国民の利益を切り捨てようという政党。それでいて、府民・国民の利益を擁護するごときポーズで幻想を振りまき、選挙民の欺瞞に一定の成功を収めてきたポピュリスト集団である。
だから、この特集の中の教育面解説「維新政治による教育破壊の“ほんの一部”」の記事の中にあるように、《気をつけよう「身を切る改革」 あなたの身》なのだ。維新は、容赦なく大阪府民・市民の身を切ってきた。そして、府外からの収奪も狙う。それでいて、「開発幻想」を振りまいているのだ。
そしていま維新は、現政権の言いにくいことを代弁して改憲策動の尖兵となり、「非核三原則の見直し」「核共有」の声を上げている。野党ではなく、与党の政策をさらに保守の立場から引っ張る存在である。
維新を語る際の最大の関心事は、いったい誰が維新支持の担い手なのかということ。近畿圏以外の人には、まったく分からない。この点について、特集リードの中に、次の一節がある。
「関西学院大学の冨田宏治教授が三年前に分析した論文(「維新政治の本質ーその支持層についての一考察」)は次のとおり、維新支持層のイメージを描いている。
そこに浮かび上がってくるのは「格差に喘ぐ若年貧困層」などでは決してなく、税や社会保険などの公的負担への負担感を重く感じつつ、それに見合う公的サービスの恩恵を受けられない不満と、自分たちとは逆に公的負担を負うことなくもっぱら福祉医療などの公的サービスの恩恵を受けている「貧乏人」や「年寄り」や「病人」への激しい怨嗟や憎悪に身を焦がす「勝ち組」・中堅サラリーマン層の姿にほかなりません」
本号の巻頭論文に当たる「日本維新の会の『支持基盤』を探る」(岡田知弘・京大名誉教授)は、この見解をベースにしつつも、維新は「さらなる成長を」というスローガンによる「開発幻想」を振りまくことによって、「勝ち組」以外からも集票したとみる。強固な支持層としての、新自由主義の利益に均霑する「勝ち組」 中堅サラリーマン層 と、「開発幻想」にすがるしかない立場の「非勝ち組」層。
しかし、現実の地域経済の衰退は覆うべくもないことを指摘し、在阪マスコミの維新擁護の報道を乗り越えて、「維新が振りまく幻想の危険性」と「真実にもとづく維新批判」の言論高揚の必要を説いている。
目次は、下記のURLをご覧いただきたい。
https://www.jdla.jp/houmin/index.html
そして、お申し込みは下記URLから。
https://www.jdla.jp/houmin/form.html
*********************************************************************
特集●「維新」とは何か
◆特集にあたって … 岩田研二郎
◆日本維新の会の「支持基盤」を探る … 岡田知弘
◆在阪マスコミと中央政権が育てた新たな利権政党 … 幸田 泉
◆大阪IRカジノの問題点 … 桜田照雄
◆大阪都構想の問題点とその後の動き … 森 裕之
◆地域経済を疲弊させる維新の略奪型経済対策 … 中山 徹
◆維新府政のもとでのコロナ禍の保健所の現状 … 小松康則
◆維新政治による教育破壊の“ほんの一部”
~大阪は 維新政治で 滅茶苦茶に~ … 今井政廣
◆維新政治による人権侵害と闘う弁護団活動 … 岩田研二郎
◆維新による公務員の団結権への侵害と反撃 … 豊川義明
◆改憲勢力としての日本維新の会 ── 憲法審査会での策動を中心に … 田中 隆
◆維新は政党政治の一翼を担えるか … 栗原 猛
特集外記事
◆連続企画・学術会議問題を考える〈5〉
「日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ(令和4年1月21日)/ CSTI有識者議員懇談会」をどう読むか … 広渡清吾
◆司法をめぐる動き〈72〉
・「日の君」再任用訴訟で逆転勝訴判決
── 再任用拒否の違法性を正面から認定 … 谷 次郎
・2月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2022●《「核時代の戦争」と世論・情報・メディア》
どんな理由でも戦争は認めない 不戦、非核、非武装の外交の確立を
── ウクライナ戦争を機に … 丸山重威
◆とっておきの一枚 ─シリーズⅡ─〈№11〉
「戦争の不条理」を胸に … 鶴見祐策先生×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈№39〉
憲法改正を「今こそ成し遂げなければならない」と主張する岸田首相 … 飯島滋明
◆書籍紹介
◆インフォメーション
ロシアによるウクライナ侵攻に対し強く抗議するとともに直ちに戦闘行動を停止し撤退することを求める声明/ロシアのウクライナへの軍事侵攻に強く抗議し、ロシア軍の即時撤収を訴える声明/自民党改憲案(4項目改憲案)に反対し、改憲ありきの憲法審査会の始動には反対する法律家団体の声明
◆時評●地位協定と新型コロナ対策 ── 日伊の比較 … 高橋利安
◆ひろば●和歌山での憲法を守る取り組み ── 93回目のランチタイムデモ … 阪本康文
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.4.5より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=18876
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11926:220406〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。