コロナ禍の二つの出来事とウクライナの教訓
- 2022年 5月 30日
- 評論・紹介・意見
- 小原 紘戦争新型コロナウィルス
韓国通信NO698
山口県阿武町で起きた4,630万円の誤送金事件と知床の観光船遭難事故が連日マスコミを賑わしている。
コロナで外出を控えてきた市民たちが観光地に繰り出し始めた矢先の海難事故。医療から見放された患者と医療従事者の過重労働、コロナ貧困などまるで無かったかのように、今も続く毎日3万人を越す感染者を無視して、この国は経済に舵を切った。
船会社の責任は当然だが、無きに等しい安全対策を放置してきた国の責任はさらに重大だ。根っこは8年前に起きた韓国のセウォル号事件と同じ、経済優先、人命軽視が生んだ人災だ。船会社の社長を悪者にして済ますなら犠牲者たちは浮かばれない。
同時期に露見した誤送金事件は9割ほどの資金が町役場に逆流するという複雑な側面を見せているが、振り込まれた人が金を「返さない(返せない)と」言い出して世論が炎上した。
銀行関係者ならわかることだが、463件の振り込みを一人に振り込むことは断じてあり得ない。一瞬の操作で1億数千万円が騙し取られた三和銀行(現三菱UFJ銀行)事件以来、為替のオンライン操作は特別に厳しいチェックを受けるようになった。単純な操作ミスでも金融機関の責任である。原因は町側の振り込み依頼のミスしか考えられない。ずさんな振込み依頼を棚にあげて町は「被害者」になり、振り込まれた人を悪者にする構図である。
冷静に考えたらそれほど難しい問題ではない。コロナ疲れのせいか、的外れの議論に終始している。バイデン大統領と岸田首相の共同声明もその例に洩れない。
ウクライナとバイデン大統領来日のせいか、鬱々とした気分で五月も終わろうとしている。そろそろ「マスクは外そうか」と政府のオエライサンが言い出した。「アベノマスク」と「118回のウソ答弁」で政府の信用はガタ落ち、誰も信用しなくなった。
ウクライナみたいになったら大変。バイデンの「米中戦争への招待」に日本中が金縛りになった。軍事予算を2倍に、日米同盟の強化、核を保有すれば「拡大抑止」になる。こんなデタラメな理屈が街に溢れている。どさくさ紛れに憲法を無視したコペルニクス的転換が行われようとしている。ウクライナから学ぶことは敵を作らないこと、アメリカの兵器産業のセールスマン、バイデンの口車に乗らないことだ。
日本政府が戦争回避の努力をしているとは思えない。日々のウクライナ情勢の分析を防衛省の関係者に任せるテレビ報道から戦争が起こりそうな雰囲気がまき散らされる。平和憲法を持つ経済大国としてやれることは山ほどあるはず。
「理想論」、「平和ぼけ」と批判する人が多いが、武力に依らない平和の実現こそが現実味を帯び始めてきた。仮に社会保障費全額を軍事費に回しても平和の保障は全くない。
全世界に平和使節団を送ることを提案したい。政治の仕組みが違う国に姑息なバイデン流「自由と民主主義」を押しつけず、殺し合い、戦争を避けるためにわが国が出来る世界貢献である。ウクライナ戦争から日本政府とメディアの「平和ぼけ」が見えてきた。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12079 :220530〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。