くらしを見つめる会つーしん NO.219から 2022年4月発行
- 2022年 6月 1日
- 交流の広場
- 村山起久子
◆日本とドイツ
FB友達にドイツ在住のギュンターりつこさんがいて、ドイツの情報が入ってくる。最近、心に残ったのは、ドイツも1970年頃まではジェンダー問題など日独にはさほど差がなかったといわれたことだ。ドイツと日本の間で決定的に差がついたのは、1968年の世界的なスチューデントパワーの波に、両国ともに飲み込まれながら、ドイツでは運動の精神が緑の党のなかにも生き残り、社会民主主義とブロックを組んで今日のドイツに至ったのに、日本では新左翼が内ゲバや連合赤軍の同志殺しによって自滅し、共産党は全く「体制」を問うことをせず,秩序回復派としてふるまったがゆえに革命党ではなくなり、そしてそれだけだった。
ドイツの「過激派」は、誘拐・殺人まで犯したが、社会は本来の主張に大きく揺さぶられ、決して忘れなかった。よく言われるように、ドイツの学生は両親、特に父親に対して「第二次大戦下で何をしたのか」を問い詰めたが、日本では逆に、中・朝・南アジアで何をしてきたかに一切口をつぐむ一方で、息子・娘を社会変革の戦いから引き離すため、官憲と一体となった。
私は、日大全共闘の戦いのハイライトである9・30両国講堂での3万人大衆団交をこの目で見届けたが、団交によって引き出された確認条項が佐藤首相の介入によって覆され、日大の腐敗が田中理事長にまで引き継がれただけでなく、日本の再生が挫折する転換点でもあったと考えている。
日本は、地政学的な差だけでなく、1968年を頂点とする社会闘争の質の差によって今日の圧倒的なドイツとの差を迎えることになった。
日本共産党に、党名を変えたら、という意見はおおむね好意的な立場からだが、私は共産党の名にふさわしくないから変えてもらいたいと望む。
(Facebookに投稿した文・児玉正人)
――中略――
♪こんな本いかが?
日本再生のためのプランB 兪炳匡(ゆうへいきょう)著 集英社新書
兪さんは、米国の例(政府機関がGDPに貢献する巨大産業であること)を紹介しつつ、日本の保健衛生・社会事業(公的部門やNPO)は成長産業だと指摘する。多くの日本企業はもはや収益を上げられず、そこに多額の税を注ぎ込んでもGDPは上がらない。また、企業は儲かれば株主配当や役員報酬に宛ててしまうので、利益が地域に還元されず、外資系企業なら儲けは国外に逃げる。その点、公務員の給料は所得税として還元されるだけでなく地元で使われ、地元の経済を回す原動力になる。公務員を非正規化すれば一時、自治体の支出は減るが、自治体の収入や地域の中で回るお金は少なくなる。今、個人の購買力が下がるなど国や自治体が衰退しつつあるのは「人」より「企業」、「自然などの豊かさ」より「目先の金」を優先してきたツケが表面化してきたのではないか。
高度経済成長期のままの思考では落ちていくばかり。再生の鍵は公共と地域経済。ケアを担う人々の給与を公的に保証し、食糧やエネルギーを地域で賄う仕組みを整え、地域で経済を回せば、コロナ禍のような危機にも強くなる。国がダメなら地域から、プランBを実行してほしい。
・本と共に、この内容をわかりやすく解説した動画
「デモクラシータイムズ」 どん底日本を立て直す!シリーズ 兪炳匡と山岡純一郎 もお勧めです。
編集後記
ロシア侵攻によるウクライナの被害が連日伝えられています。爆撃に怯える人々、当たり前の暮らしが壊され、家族が引き裂かれる戦争の惨さに胸をえぐられるような思いで、一刻も早い停戦を!と願うばかりです。その中で気になるのは、“被害を受ける市民”でなく“ウクライナ政府・国”というものにスポットが当てられ、ウクライナ(善)対ロシア(悪)と、二項対立のような報道が多いことです。日本も含め、世界中が一方向に流れ、「ロシア憎し」の感情が高まって戦争に熱狂しているのではないかとさえ思えます。停戦のためには歴史的背景やプーチン大統領を戦争に踏み切らせたウクライナを取り巻く環境、NATO拡大についての問題なども検証することが不可欠です。なのに、立ち止まって考えることさえロシアを利すると、猛烈なバッシングを受けてしまう現状。ウクライナ支援と言いながら、武器供与、軍事支援で戦争を長引かせ被害を拡大させることになっても、その流れが止められない。
戦争を始めるのは国の権力者やそれにつながる武器の商人・資本家たちで、ウクライナ戦争でも軍需産業は大儲け、軍需関連の株価も急上昇しています。真っ先にすべきは「武器を売らない」ことだと思うのですが、事態は逆。また、ロシアへの経済制裁が声高に叫ばれますが、苦しめられるのはロシアだけでなく世界中の庶民です。日本も例外でなく、エネルギーや食料自給率が低い国ほど、影響はより大きくなることでしょう。大切なのは正義の御旗を立てて憎き相手をやっつけることでなく、被害をいかに減らすか、どうしたら一刻も早く停戦を実現させられるかに全力を尽くすことだと思います。
ウクライナ戦争に乗じて、維新や自民の議員は、台湾有事を煽り、敵基地攻撃が必要とか、核共有などの議論が公然とされています。安全なところに居て戦争を煽る人たちの台頭が破滅への道につながることは過去の歴史が証明しています。憎しみや暴力(戦争)からは何も生まれない。最悪の人権侵害・環境破壊を止めるため、ウクライナの“国”と共に、でなく、ロシアも含め戦争で苦しむ世界中の“人々”と共に連帯することにこそ希望があると思います。(きくこ)
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