使用済み紙オムツから覚醒剤
- 2022年 7月 5日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
四月二五日、Al Jazeeraからたまげるニュースが入ってきた。どこもここも問題だらけで驚くニュースには事欠かないが、まさかそこまでとは思いもよらなかった。
タイトル「Zimbabwean youths find cheap highs in used diapers, sanitary pads」を機械翻訳したら、「ジンバブエの若者たちは、使用済みの紙おむつや生理用品に安価な興奮を覚えています」がでてきた。urlは下記の通り。
ローデシアと呼ばれていた植民地時代もひどいものだったが、独立して黒人社会になってからはとんでもない国になってしまった。白人入植者を追い出して農地を黒人農民に分配したはいいが、農業技術が継承されなかった。というより軍事政治紛争で得られる富にしか興味のない利権屋連中は農業を営むなど考えたこともなかったんじゃないかと想像している。独裁政権の私利私欲と無能無策が続いて経済破綻を引き起こした。かつては大ジンバブエと呼ばれた豊かな国土が荒廃した。
些末な労働から得られる微々たる報酬では最低限の食糧も手に入らない。そこで若い人たちが見出したのが紙オムツや生理用品に使用されている吸水材(ポリアクリル酸ナトリウム)だった。
要旨を伝える個所を機械翻訳したものコピーしておく。
<パンパースのジュース>
「複数の薬物使用者がAl Jazeeraに語ったところによると、ポリアクリル酸ナトリウムまたはウォーターロックは、新品および使用済みのおむつ、さらに染み抜き剤、漂白剤、一部の洗剤に含まれているとのことです。生理用ナプキンの血液や紙おむつの尿の吸収剤で、一度沸騰させると溶ける」
「ショナ族の言葉で『パンパースのジュース』という意味の「ムト・ウィ・マ・パンパーズ」とも呼ばれ、人気ブランドであるパンパースにちなんだストリート用語として知られている。若者の多くは、廃棄された紙おむつを安く手に入れることができるため、使用済みの紙おむつを好みます」
「ハラレに住む心理療法士のメルタ・モテマ・ニャマンデは、アルジャジーラの取材に対し、『特におむつの中の物質だけでなく、尿が大気圧と混ざったときに放出されるガスが原因だ』と結論づけた」
「”混ざり合うことで、薬物中毒者が求める効果が生まれる…物質の影響は麻痺し、よりサイケデリック(な感覚)になり、体外離脱を与える “と彼女は付け加えた」
注) パンパース
パンパースは、米国プロクター・アンド・ギャンブル(略称P&G)が製造・販売している世界的な紙おむつのブランド名。
アメリカでは随分前から市販の風邪薬に含まれるプソイドエフェドリン(pseudoephedrine)から覚醒剤メタンフェタミン(Methamphetamine)を合成している人たちがいる。メタンフェタミンと聞くと何かと思ってしまうが、かつてはヒロポン、今は通称シャブと呼ばれるもので、ニュースで見聞きする覚醒剤のほとんどがメタンフェタミンだろう。
家庭のキッチンで簡単に合成できるから後を絶たないと言われているが、早々簡単にできる代物じゃない。風邪薬の他に不凍液やヨウ素に猫用トイレ材などを使うプロセスでは、悪臭だけでなく有毒ガスは出てくるし引火して火事になることもある。野原の一軒家ならいざしらず、アパートやマンションでという訳にはいかない。アメリカでもキッチンラボは中西部に多い。日本で密輸が多いのにも納得がいく。
メタンフェタミンのキッチンラボに関しては、下記が参考になる。
The Danger Of Meth Labs
https://www.addictioncenter.com/drugs/meth/meth-labs/
パンパースジュースなら、メタンフェタミンの合成には二の足を踏むそのスジの人たちにでも手軽にできる。できはしても、はたしてそこまで手をだすのか?出したとしても、日本で使用済み紙オムツのリサイクルから生まれた覚醒剤に需要があるとは思えないのだが、困っている人も多いし、もしかしたらということもあるかもしれない。
2022/07/02
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12166:220705〕
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