本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(366)
- 2022年 7月 9日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
秩序からカオスへの転換メカニズム
「複雑系の科学」では、「秩序とカオス」や「画一性と多様性」などの関係性が重要視されているが、この点に関して、参考となるのが、「バブルの発生と崩壊のメカニズム」のようにも感じている。つまり、「人々の意識と行動が画一化された時に、バブルがピークを迎える状況」を想定しているが、この時の「秩序の状態」を考えると、実際には、「カオスの縁」の状態にあるものと考えられるのである。
より詳しく申し上げると、今回の「DXバブル」や「デリバティブのバブル」などからも明らかなように、「GAFAMなどのハイテク銘柄は、今後も株価の上昇が続く」という認識を、ほとんどの人が持ち、実際の行動に移した時に、「バブルのピーク」、すなわち、「上昇エネルギーの枯渇」が発生するものと考えられるのである。別の言葉では、「一定の秩序」が出来上がった後に、「エントロピー増大の法則」が指摘する「意識の多様化」、すなわち、「バブルの崩壊」や「カオス的な状態への移行」が始まる展開のことである。
そして、「バブルの完全崩壊」の状態、すなわち、「多くの人々が、バブル崩壊の痛みを感じるとともに、自分の失敗に対する気付きを得る段階」になって初めて、「新たな秩序の形成」に向かい、人々の挑戦が始まるものと想定されるのである。別の言葉では、「急速な経済成長は、商品とサービスの多様性が閾値(いきち)を超えた時に始まる」という「複雑系の理論」が教えるとおりに、「多様化の増加」が、「経済などの成長」にとって、大きな役割を果たしている可能性である。
また、この時に重要な点は、「多くの人々が、バブル崩壊の痛みにより、さまざまな気付きを得る状況」であり、このことが、「ヘーゲルの弁証法」や「仏教の悟り」などが教える「天の蔵からの智慧の獲得」とも思われるのである。つまり、「エジソン」が主張する、「99%の努力」の結果として産み出される「1%の閃き」であり、このことが、「人間世界」と「法界(ほっかい)」とを繋ぐ「ストリング(紐)」のようにも感じられるのである。
しかも、この時には、「物理学」が教える「四つの力」が働いているものと想定されるが、この点については、現時点において、単に「私自身の仮説」にすぎず、今後、より多くの検証が必要な状況とも考えている。別の言葉では、すでに破綻した「既存の理論」に囚われず、全く新たな視点からの考察が必要な状況とも思われるが、このことが、「進化と創造のメカニズム」であり、また、「ヤスパース」が主張する「枢軸時代」が発生する理由の一つではないかと考えている。(2022.6.7)
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中国の金融破綻防止基金
6月8日の日経新聞に、「中国の不良債権問題」に関する記事が出ているが、この点については、「30年前の日本」が参考になるとともに、また、「当時と現在との違い」が、大きな意味を持ってくるものと考えている。具体的には、「不動産バブルの崩壊」や、その後の「不良債権の発生と移行」に関して、「現在の中国」と「30年前の日本」とで、ほとんど同じメカニズムが働いている状況のことである。
しかし、一方で、「今後の動向」については、全く違った展開を想定しており、その理由としては、「金利の動向」と「デリバティブのバブル」が指摘できるが、実際には、「30年前の日本」において「金利の低下とデリバティブの大膨張により、不良債権の処理に関して、時間的な余裕が存在した状況」だったのである。ところが、現在の「中国」に関しては、「不良債権の総額」や「金利負担の見積もり」などおいて、きわめて曖昧な状況であり、また、今後は、急速な金利やインフレ率の上昇も想定されるのである。
より詳しく申し上げると、「時価総額の約1割」と想定される「不良債権の総額」に関して、「30年前の日本では、約300兆円」、そして、「今後の中国では、4倍程度の約1200兆円」という状況が想定されるが、今回の記事では、「金融破綻の防止基金」として「約10兆円程度の資金」しか準備されていないことも見て取れるのである。しかも、今回は、「世界的な金利とインフレ率の急騰」や「デリバティブのバブル崩壊」という状況下でもあるために、今後は、「民間企業から民間金融機関、そして、中央銀行へ」という「不良債権の移行」が、きわめて短い期間で発生するものと想定されるのである。
そのために、今後の注目点は、「中国」において、「民間の金融機関や中央銀行に、どれほどの混乱が発生するのか?」ということであり、また、「世界全体で、インフレや金融大混乱が、一斉に発生する可能性」とも想定されるのである。つまり、「ロシアや中国などによる、時代錯誤的な帝国主義的行動」により、今までの矛盾や問題点が、一挙に噴出する可能性のことでもあるが、実際には、「約1600年」という時間をかけて積み上がった「現代のマネー(お金)」が、一挙に、雲散霧消する可能性とも考えている。
そして、今後は、数多くの「小さな共同体」に分裂し、世界中の人々は、「なぜ、このようなことが起こったのか?」を、真剣に悩み始めるものと思われるが、この時の「救い」となるのは、やはり、「11次元にまで進化した自然科学」であり、また、「社会科学の次元上昇を求める意識」だと考えている。(2022.6.9)
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社会の結び付きとマネーの残高
「貨幣の歴史」を訪ねると、たいへん不思議な疑問点に突き当たるが、それは、「今回のマネー大膨張が、なぜ、西ローマ帝国以来、1600年ぶりの出来事なのか?」ということであり、実際のところ、「西暦400年から西暦1900年頃までの約1500年間」においては、「金貨本位制」という「純金に近い通貨が、通貨として使われていた状況」だったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「銀や銅、そして、紙幣などの通貨が発行され、一時的なマネーの大膨張が発生した」という期間が存在したものの、基本的には、「20世紀に発生した大変化」、すなわち、「三種類の金本位制」と「1971年以降の信用本位制」については、「西ローマ帝国以来、1600年ぶりのマネー大膨張を表す出来事」だったものと考えられるのである。しかも、今回は、「単なる数字」が「本位通貨」となり、「コンピューターネットワークの中で、未曽有の大膨張を実現した」という状況だったのである。
その結果として、「約20年間の世界的な超低金利状態」が発生したわけだが、この理由としては、「デリバティブという金融商品が、通貨と商品の両方の残高を大膨張させた事実」が指摘できるものと考えている。つまり、「西洋の唯物論的な思考と行動」が行き着いた先が、今回の「マネー大膨張」であり、その結果として発生した出来事が、「金利の低下」のみならず、「地球環境の破壊」だったことも理解できるのである。
ただし、現在では、「紙幣の大増刷による、デジタル通貨の完全消滅」という可能性が急浮上しており、このことは、「今までの1600年間に蓄積された社会の結び付き」が崩壊する状況を表わしているものと感じている。つまり、「西暦400年から西暦1200年までの期間」については、「東洋の唯心論」が意味するように、「神の存在」を中心にして、「社会の結び付き」が強まっていった状況だったものと想定されるのである。
そして、その後の「西暦1200年から西暦2000年の期間」においては、「西洋の唯物論」が原動力となり、「国家共同体」と「グローバリズム」というような状況にまで、世界の結び付きが強くなったものと思われるのである。別の言葉では、「人々の信用」が、最も強くなり、また、その結果として、「信用」を形に著わした「マネーの残高」がピークを付けたものと考えられるが、現在では、反対に、「反グローバリズムの動き」が始まるとともに、「1600年前と同様に、小さな共同体への分裂が始まった段階」のようにも感じられるのである。(2022.6.13)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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