ていこう原理② 議論抜き?「温暖化集団催眠」論
- 2022年 8月 25日
- 時代をみる
- 長谷川孝
郷土教育全国協議会(以下、郷土全協)の機関誌『郷土教育』は、九回にわたり今井和江さんの論考(「『CO2温暖化説』は集団催眠⁉」)を連載しました。この連載につき私は、いわゆる「陰謀論」をベースにした論考のように疑いますが、ここではあえて、何が正解・真実かに言及する気も、掲載けしからんという気もありません。
しかし、機関誌への掲載の仕方や掲載責任、そしてほぼ一年にわたり何の批判や議論もないことに驚き、問題提起しました。
すでに連載済みですから、▽環境・自然・生態系など地球環境の破壊と急激な温暖化現象、▽地球上での人間活動の過剰が地球に与える大きな負荷の問題(斎藤幸平氏の著書で話題の「人新世」が提起するもの)、▽SNSを含めた「陰謀論」などの世界への影響――などの深刻な課題を考え議論する契機にしてほしいと願うのです。
◆郷土全協と会員はこの論考に賛成?
私の言いたいたことをまとめると――、
◇1 この論考を機関誌に載せた郷土全協としての態度・見解が問われること。組織としての責任と編集責任です。何の説明、問い掛けもなしに連載したことは、この論考の主旨が郷土全協の態度・見解だと受け取られてもいいのか。それとも「発言・表現の機会を保障した」に過ぎないのか?
この論考の掲載について、会員の中から議論、意見、疑問、批判が出ないのは、郷土全協らしからぬ状態ではないか。郷土教育の根本にあるはずの、抵抗、批判、認識変革などの精神からも、こう感じます。
◆CO2は《人間活動過剰》の表象だ
◇2 氷河期・間氷期などの大きな地球変動があるとしても、産業革命以降の人間活動による地球環境破壊(気候変動や自然・生態系などの破壊)は、座視できない状態に至っていると云わざるを得ません。「人新世」は、人類活動の影響を考慮した地質時代の新しい提起です。
温暖化による生態系の変化・破壊は、農産物の産地に大きな影響をもたらし、郷土の産業や産物、文化や伝統、食生活などの維持も難しくします。さらに植物にとっても、それぞれの生存領域を守れなくなり、生存基盤が脅かされます。動物や魚の生存条件も崩れ生物の多様性が損なわれます。
だから、できる限りの智慧と知識と技術を動員して対策を講じることは、迫られた必要と思われます。この必要は、温暖化の原因がCO2であれ・なかれ、求められます。「脱炭素」の取り組みは、こうした必要の一部分だと思います。
◇3 「脱炭素」とは、化石として固定化された炭素を利用することで、固定化を解いて(解凍して)しまう行為を規制・停止しようと。。云うことでしょう。地球の環境・自然を改変・破壊から守るのが目的で、単にCO2を増やさない、というだけの取り組みではないはずです。
◆陰謀論、SNS情報とどう向き合うか
◇4 「陰謀論」は、国連の気候変動対策から離脱したトランプ前アメリカ大統領とその支持派が唱えるもので、日本では極右勢力が唱えていると言われます。彼らは、アベ政権支持派で、いわば〈戦前肯定〉の歴史修正主義者で、いわゆる「つくる会教科書」の推進者たちともつながります。
アベ政権は、学校教育の権力支配を推し進めた許しがたい政権で、それとつながる極右派たちが唱える「陰謀論」や歴史修正主義も、容認し難いものです。郷土全協にとって、きちんと向き合い議論すべき課題ではないでしょうか。
初出:「郷土教育751号」2022年2月号より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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