本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(2)
- 2011年 7月 27日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究金
現代の狼少年
間もなく、「国債」と「金(ゴールド)」との戦いに、最後の決着が付くことになるようだが、この点に関して言えることは、「これほどまでに、マネーの呪縛が強かったのか?」という驚きであり、また、「既得権を守ろうとする人々は、最後の段階で、どのような行動でも取るものだ」ということだった。つまり、現在では、「お金が、現代の神様になった」というような状況となっており、実際には、世界中の人々が、「お金」という「正体のわからない存在」を「神」のように崇めてしまったのである。
また、「金融システム」や「通貨制度」に関して言えることは、「マネー」の膨張により利益が得られる人々は、ありとあらゆる手段を駆使し、「マネーの縮小」を防ごうとするということであり、また、「時代の大転換期」においては、多くの人が、「訳が分からなくなり、無謀な行動に走るものだ」という点も、よく理解できたものと感じている。そして、今回の重要なポイントとしては、「国債が、どのような結末を迎えるのか?」という点に関して、いろいろな議論が出たということだった。
つまり、「日本の国債は、約95%が国内で保有されているから、決して、国債が暴落することはない」という意見と、「国の借金といえども、個人や企業の借金と、本質的には同じであり、最後には、返さなければいけない性質のものである」という「二つの意見」に分かれてしまったのである。そして、後者が主張することは、「国家の場合には、最後に、紙幣の増刷が行われる」というものだが、今までの状況としては、「国債価格の暴落が、まだ、起きていない」ということにも間違いはなく、結果としては、「国債価格の暴落を主張する人々は、現代の狼少年である」というような考えが、人々の間に広まったというような状況にもなっているのである。
しかし、問題は、「本当に狼が襲ってこないのか?」ということであり、このことは、「世界の財政危機を、このままの状態で、本当に解決できるのか?」ということである。つまり、「問題の先送りが、何時まで継続できるのか?」ということと、現在の方法では、「借金が、雪だるま式に膨らみ続けている」ということだが、このことは、「3・11の大震災」の時の「原発問題」と同様に、「大事件が起きない限り、問題の本質に気付かない」という状況に重なって見えるのである。そして、大事件が起きた後に、「なぜ、前もって、警告を発してくれなかったのか?」というような嘆きが、数多く聞かれるというのが、過去のバブルでも起きたことだったのだが、今回も、まったく同じような状況が繰り広げられるものと考えている。(7月6日)
金(ゴールド)の理論値
現在、海外の「投資の専門家」の間では、「金の理論値」を模索する動きが強まっている。つまり、「本来、金の価格は、いくらが妥当なのか?」ということだが、この裏側には、現在の「金融システム」や「通貨制度」に対する不信感が存在するようである。具体的には、本来の「お金」というのは、文字通りに、「金(ゴールド)」であり、「お金が発明されてから、数千年にも亘り、金が主役を務めてきた」という状況だったのだが、「1971年のニクソン・ショック」以降、「通貨の価値と形態」が大きく変化し、「現在では、金の役割が、大きく減少している状況」とも言えるのである。
また、この時に、「中央銀行」や「民間銀行」が、「どのような役割を果たしたのか?」、あるいは、「デリバティブ(金融派生商品)」を中心にした金融商品が、「どれほどの大膨張をしたのか?」という点も、真剣に議論され始めているのである。そして、結論としては、「100年程度」の歴史しか存在しない各国の中央銀行は、「国民を犠牲にすることにより、自分たちの利益を目論んだのではないか?」というような、過激な発言も出始めているのだが、実際には、「大きな歴史の流れの中で、全てのことが必然だった」とも言えるようである。
ただし、この時に考えなければいけないことは、「過度に大膨張した中央銀行のバランスシート」や「史上最大規模のデリバティブ」については、必ず、正常な状態に戻るということである。具体的には、「お金」というのは「残高」であり、「インフレでしか、調整ができない」という性質を持っているために、本当の意味での「金融混乱の解決法」としては、「ハイパー・インフレ(超インフレ)しか存在しない」ということが、過去の歴史が教えることだからである。
そして、この時に大切な事は、「世界の中央銀行が、過去に、どれほど資産を膨らませたのか?」ということであり、この数字を計算することにより、「金の理論値」が理解できると考えられているのである。つまり、結論としては、「現在の理論値は、一万ドルを超えている」というのが、多くの専門家が言い出した数字でもあるのだが、このことが、「今まで、私が申し上げてきたこと」とも一致するのである。そして、このような観点から考えられることは、「ギリシャなどの財政危機に対して、追加融資で、問題を先送りする」という方法が、完全に行き詰まりを見せてきたということであるとともに、たいへん近い将来に、「ハイパー・インフレ」が発生し、「通貨の価値が、信じられないほどに激減する」ということでもあるようだ。(7月6日)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0566 :110727〕
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