森下俊三の責任を問う《NHK文書開示請求訴訟》。次回には、森下の尋問採用決定も。
- 2022年 9月 7日
- 評論・紹介・意見
- NHK問題澤藤統一郎
(2022年9月6日)
NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。本日午前11時、その第4回口頭弁論が、東京地裁103号法廷で開かれた。
前回の第3回口頭弁論以後、原告は被告森下に対して、2回にわたる求釈明を重ねた。本訴訟提起直後に被告NHKから原告に開示された「議事録のようなもの」の原記録である録音データの消去の真実性をめぐるものである。
被告森下はまことに不誠実な対応に終始し、データの消去についてもバックアップの有無に関しても、納得しうる説明をしない。そこで、原告としては、本日提出の第6準備書面において、これ以上の求釈明を繰り返すことをやめ、被告森下俊三本人とデータ消去の担当職員の尋問によって、その存在を立証する方針を明確にした。
今回の法廷では、この点の経過を、下記のとおりのパワーポイントを使って、原告代理人(澤藤大河)が説明した。傍聴者に分かりやすいものであったと思う。
また、原告の一人浪本勝年さん(元立正大学教授・教育学)が意見を陳述した。NHKに対する国民の期待を語り、その期待を大きくはずれたNHKのあり方を慨嘆して、被告らには本訴訟においての誠実な対応をもとめ、裁判所には法に基づいた納得しうる審理と判決を求めた。
裁判所は、両者の主張によく目を通しての無理のない訴訟指揮を行っているという印象を受けた。次回までに提出すべき、各当事者の「宿題」が明らかにされ、次回期日には人証の採用決定が見込まれる進行となった。
次回・第5回口頭弁論期日の予定は、以下ののとおり。
日時 10月26日(水) 午後2時
法廷 東京地裁415号
この訴訟で開示請求の対象になっている最重要文書は、2018年10月23日経営委員会議事録の未公表部分。下記のパワポで「未開示文書Ⅰ」と表示されている文書。公表されているこの日の経営委員会議事録には、経営委員会が上田良一NHK会長に『厳重注意』を言い渡した経緯の記載が欠落している。これを開示せよという請求が第1の問題。
NHKの良心番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政が、この番組をけしからんとしてNHKに圧力をかけてきた。経営委員会は、この外部の圧力から番組制作を護らなければならない立場であるにもかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかした。
当時経営委員会委員長代行だった森下俊三らは、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える『会長厳重注意』を強行した。公共放送であるNHKの適正な運営を確保するための経営委員会が暴走して、番組制作現場とNHK執行部を攻撃したのだ。NHKの最高機関が、NHKの放送の自由を侵害している。
放送法41条は、経営委員会委員長に経営委員会議事録の作成と公表を義務付けている。しかし、公表されている議事録に、『会長厳重注意』の部分は抜け落ちている。しかも、一定の場合、議事録公表義務免除の規定はあっても、議事録作成義務の免除の余地はない。だから、「公表されてはいないが、法の規定によって存在するはずの議事録を開示せよ」というのが原告の請求。
もっとも、本件の提訴後原告には「議事録のようなもの」(「粗起こしの議事録草案」と言われる)が開示されてはいる。しかし、これは「のようなもの」ではあつても議事録ではない。法が必ず作成せよと命じている以上は、正式の議事録がなくてはならない。その、あるはずの議事録を開示せよというのが、「未開示文書Ⅰ」の問題。
仮にもし、被告森下が議事録を作成もせず、公表もしていないとなれば、明白で重大な法律違反である。なぜ、そのような違法を敢えてしたか。その動機は、経営委員に番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくないから、という以外に考えようはない。違法を恥じない人物が、NHKの最高幹部になって、NHKの放送の自由を攻撃しているのである。総理の任命責任は重大で、現内閣には罷免を求めなければならない。
そして、もう一つが、「議事録のようなもの」の原資料である録音データである。これが、「未開示文書Ⅱ」の問題。
「のようなもの」には作成者の記載はなく、正確性を確認する術はない。そこで、録音の原電子データを開示せよと要求したら、なんと「消去しました」という。バックアップもとっていないと。
えっ? こんな大事なものを簡単に消去? いつ、誰が、どうして、誰の指示で?と問い質しても、けっして回答しないのが森下俊三である。以上が、原告第6準備書面の内容。以下が、そのパワポ説明である。
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NHK情報開示等請求事件第4回期日
原告第6準備書面の概要
1.未開示記録の特定
Ⅰ 未公表部分を含む完全な議事録
Ⅱ「粗起こし」の原記録である録音データ
2.不誠実極まる被告森下の釈明
3.当事者意識を欠いた被告NHKの釈明
被告NHKは請求された文書を開示していない
開示請求文書目録
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申第797号、第798号、第814号、第815号、第816号を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料
原告の開示請求には議事録が含まれる
原告開示請求対象の第1項
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
経営委員会の正式な議事録があれば、「NHK経営委員会でなされた議論の内容・・・がわかる・・・記録」に該当する。
当然、本件訴訟の開示請求の対象となる。
争点となっている議事録(未開示文書Ⅰ)
番組「クローズアップ現代+」の「かんぽ(生命)保険不正販売」報道に被告森下らが外部と呼応して圧力を加え『会長厳重注意』を言い渡した際の「経営委員会議事録」未公表部分(会長厳重注意言い渡しに関わる部分)
何ゆえ正式の議事録を作らないのか
• 合理的に推認すれば、番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくない
• 法的義務に違法することを恥じない人物が、NHKの最高幹部になっている
• 法廷で、自らの放送法違反行為を認めることは、驚愕の事態
• 放送法は経営委員長が違法行為をする場合の制裁等定めていない。考えられない事態。
• 総理の任命責任は重大で、罷免を求める政治的イシューへ
当該の議事録は本当にないのか?
• 原告らに開示された「粗起こし」は正式な議事録ではない。
「議事録のようなもの」でしかない。
• 議事録作成は放送法41条で経営委員長(2018年12月24日以後は被告森下)に課された法的義務である。
しかも、議事録作成義務が免除されることは一切ない。
• よって、「のようなもの」ではない、法が求める適式のものとして存在する議事録の開示を求める。
• 仮に当該部分の正式な議事録が未作成とすれば、被告森下の明白にして重大な違法であり、経営委員としての不適任を意味し、これを任命した内閣総理大臣の責任も追及されざるも得ない。
審議委員会は何を見たのか?
• 審議委員会答申は、議事録を開示すべきとしている。
• 今まで、4年間も議事録が存在することを前提に手続きが進んできたのに、いきなり「実はない」と言われても・・・・・。
録音データ(未開示記録Ⅱ)の隠蔽がなされている
• 原告の請求は、「一切の記録・資料」の開示
• 当然、録音・録画も含まれる
• 被告は経営委員会の録音があったことを認めつつ、消去したとしている
• 消去した日も、消去した人も、具体的な作業内容も示すことができない
• 審議委員会の審議にかかっている最重要な録音データを消去するはずがない
本当に消去されたのか?
• 被告森下は、録音は担当者の個人的なメモのようなものでありすでにその担当者が消去したとしている
• 誰が?→答えない
• いつ? →答えない
• どんな作業をしたのか? →答えない
• とにかく「存在しない」とする
• NHK経営委員会のシステムにはバックアップはないのか?
被告森下による「存在しない根拠」その①
• 令和3年4月7日時点における本件録音データの不存在が確認されていること
• 誰が、どうやって確認したのか?
• 存在確認はできても、不存在の確認は難しい
被告森下による「存在しない根拠」その②
• 個人の備忘録として補助的な使用に留まる本件録音データが、それを基に作成された議事録の完成後に廃棄されることに何ら不自然・不合理な点はないこと
• 経営委員長の法的義務である議事録作成であるのに、担当職員の私的活動として録音がなされる不自然さ
• 経営委員長が私的録音を許していたのか?
• データの管理はどうなっていたのか?
• 議事録が作成されていないのに、職員の一存で消去できるのか?
被告森下による「存在しない根拠」その③
• 本件録音データの廃棄は、経営委員会における録音データの一般的な取扱いに従って行われていること
• 「私的録音」だったはずなのに、データ廃棄だけは突然「経営委員会における録音データの一般的な取扱い」に従って行われる矛盾
• 「経営委員会における録音データの一般的な取扱い」とは何なのか具体的には示されない
被告森下による「存在しない根拠」その④
• 既に開示済みである議事経過(粗起こし)に記載された内容以外の内容が本件録音データに含まれていることを疑わせる事情は存在しないこと
• 粗起こしが正確であることは検証不能
• 「かつて録音はあったが削除されていた」と自発的に申告したわけではない
• 原告に指摘されて突然無かったことが確認されていたと主張して、どうして信頼できるか
被告森下による「存在しない根拠」その⑤
• 録音データは、担当職員が議事録の作成のための個人的な備忘録として補助的に使用するものであって、「NHK役職員が業務上共有することは予定されていないから、本件録音データがNHK情報公開規程(丙36)3条の「開示の求めの対象となる文書」に該当しない
• NHK情報公開規程3条「開示の求めの対象となる文書は、NHKの役職員が業務上共用するものとして保有している文書(電磁的に記録されたものを含む)」
被告森下らの尋問が不可欠
• 被告森下
経営委員長としてどのように議事録を作ったのか、法的義務を果たしたのか、果たさないのならその理由
• 上田元会長
経営委員会に臨席した者として粗起こしの正確性、被告森下の議事録非公表についての違法性の重大さ
• 経営委員会の事務責任者
議事録作成の経緯、録音データの管理
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.9.6より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19901
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12358:220907〕
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