「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会の声明(2022 年9月8日)
- 2022年 9月 10日
- 交流の広場
- 野平晋作
安倍元首相の「国葬」に反対する声明
-安倍政権による沖縄政策を告発する-
安倍元首相が銃撃され死亡した。岸田政権は一週間も経たないうちに「国葬」の閣議決定を行った。「民主主義を守り抜く決意を示す」ためだという。8年8ヶ月の安倍政権による沖縄政策は、その民主主義からは最もかけ離れたものだった。沖縄に関わって活動してきた団体として、強い憤りを持って「国葬」に反対する。
2次にわたった安倍政権は、どのように沖縄と向き合ったのか。
第1に、沖縄戦史実の改ざんと沖縄戦後史の徹底した無視である。
第1次安倍政権下の 2007 年、沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)の軍命に関する記述が高校歴史教科書から削除された。沖縄では、県議会と全市町村議会が意見書を決議、県民大会には 11 万人が参加して政府を糾弾した。2014 年には八重山地区の中学公民教科書採択に介入し、地域の独自性を認めない教科書無償措置法の改定まで行った。
第2次政権発足直後の 2013 年4月 28 日には、1952 年同日のサンフランシスコ講和条約発効による主権回復を祝う「記念式典」を強行した。沖縄にとってこの日は、同条約により米軍占領統治が合法化された「屈辱の日」とされる日だ。
さらに県民の圧倒的な支持で当選した翁長雄志知事との初会談で、菅官房長官(当時)の放った「私は戦後生まれなので沖縄の歴史はわからない」との発言は、まだ記憶に新しい。
第2に、辺野古・高江への基地建設の強行、暴力的弾圧である。
2016 年、高江へのヘリパッド建設には、反対する市民の排除に全国から約 500 名の機動隊を動員した。市民排除の際、大阪府警機動隊員の発した「土人」発言に対しては、差別用語に該当するか「一義的に述べることは困難」とする閣議決定まで行った。同年の工事には、自衛隊ヘリを法的根拠も曖昧なまま工事車両の空輸に投入している。
辺野古でも、自衛隊掃海母艦「ぶんご」が 2007 年と 2014 年、ボーリング調査を支援するとして辺野古沖に派遣された。ゲート前や安和・塩川そして海上での抗議活動に対しては、機動隊・海上保安庁・民間ガードマンが一体となった弾圧が常態化して久しい。
今日の大幅な設計変更を強いられることになる辺野古大浦湾側の「軟弱地盤」について、政府は 2015 年にはその存在を把握していた。真実をひた隠しにして、護岸工事(17 年4月)・土砂投入(18 年 12 月)を強行してきた安倍政権のどこに民主主義があるのか。辺野古アセスも、オスプレイ配備の公表はバブコメ終了後で「究極の後出し」といわれた。
第3に、米軍再編交付金、沖縄関係予算による基地と振興の露骨なリンクが進んだことである。歴代の自民党政権による沖縄政策は、日米安保と在沖米軍基地の維持をすべての前提に進められてきたが、一層露骨に進めたのが安倍政権である。
米軍再編に伴い基地を受け入れる市町村に国が直接交付金を支給する米軍再編交付金は、2007年第1次安倍政権により制度化された。以後、辺野古新基地への賛否が公的資金の配分を左右する、地方自治破壊と地域分断を常態化させた。2015 年には、辺野古反対の名護市を介さず、久辺3区に直接補助金を交付する制度まで新設している。
2013 年の年末には、沖縄関係予算3千億円台確保を約束することで、仲井眞知事から辺野古埋立承認を引き出した。その後の辺野古反対を掲げた翁長知事、玉城知事のもとで同予算は減額され差別的扱いが続いている。さらに 2019 年には、県を通さず国が市町村に交付する沖縄振興特別事業推進費を創設している。いうまでもなく、沖縄関係予算は県民のためのものであり、このような政治介入は許されない。
第4に、徹底した民意の無視と沖縄県の自治権侵害である。
2012 年に始まるオスプレイの普天間基地配備は、10 万人余が参加した県民大会の開催、県議会・県内 41 全市町村と議会等が賛同した「建白書」による上京要請行動など、考えうる民意のすべてが示される中で強行された。
普天間基地の辺野古移設問題をめぐっては、何度もの知事選挙・国政選挙で、県民の反対の意思が示され続けてきた。2019 年の県民投票では、投票率が5割を上回り、「反対」が7割を超えた。これらの結果を受けても、安倍政権は工事を中断する気配さえ見せなかった。安倍首相は、翁長新知事との面会を4ヶ月間拒否し続け、県民投票結果を受けた岩屋防衛大臣は、「沖縄には沖縄の民主主義があり、国には国の民主主義がある」とうそぶいてみせた。
沖縄県による埋立承認の「取り消し」「撤回」、設計変更申請「不承認」に対しては、本来の地方自治法による解決の道筋を無視し、手っ取り早く工事を再開するために行政不服審査制度を利用できるとする理屈までつくり出した。いわゆる「国の私人成り済まし」である。この問題をめぐっては、今後も沖縄県と国による法廷闘争が続くことになる。
安倍政権による沖縄政策は、まだそれまでの保守政権には意識されていた「償いの心」「過去(沖縄戦と米占領)の清算」という責務を忘却し、辺野古新基地建設、南西諸島への自衛隊配備をはじめ、新たな軍事化を平然と強要する政治を出現させた。沖縄にとって安倍政権の8年8ヶ月は、民主主義や法治国家の対極に位置するものであった。
私たちは、このような安倍政権を顕彰する「国葬」に断固反対する。そして、岸田政権による安倍政治の継承を許さず、沖縄と連帯した運動をいっそう強めることをあらためて決意し「声明」としたい。
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