安倍元首相の国葬にあくまで反対する 岸田首相と自民党の再生に必要なこと
- 2022年 9月 24日
- 評論・紹介・意見
- アベ国葬小川 洋自民党
政治家の品格
女性問題を拗らせて辞めた首相がいた。元愛人の恨みを買ってしまったのだ。第75代内閣総理大臣の宇野宗佑氏である。芸妓を愛人として囲ったものの、その扱い方がぞんざいだったため、腹を立てた女性からマスコミに話が流れてスキャンダルとなった。政治家としての品格を損ね、政治不信を招いたが、クリントン元米大統領を含めて男性政治指導者にセックス・スキャンダルは付きものとさえいえる。
さて安倍元首相である。退任後ではあったが、カルト教団との関係を拗らせて殺害された。韓国を本拠地とする旧統一教会というカルト教団と元首相との深い関係が明らかになりつつある。元首相は国政選挙や地方選のみならず党内の自身の総裁選まで、教団に協力を仰いでいたといわれる。その不気味さは、品格の尺度で測りかねるものである。
教団は一方で日本人信者から組織的に経済的な収奪をしていた。一部には破産に追い込まれた家族が崩壊する事例も生まれていた。元首相は、その被害者家族の恨みを買って襲撃され死亡したのである。どちらが政治家としてより問題が深刻か。
宇野氏の場合、社会的な被害はあまりなかった。しかも在任期間は69日間と、歴代内閣でも最短の部類に属する。一方の安倍氏の場合、殺害されたことによって明るみに出ることになったカルト教団との関係の闇の深さは、言葉を失うものがある。そのような人物が「国政選挙を6回勝ち続け」、「憲政史上最長」(岸田首相)、その職に留まっていたのである。
安倍元首相の業績?
岸田首相が「国葬に相応しい」理由として、四点を繰り返し述べている。第一に挙げているのが、上記のことである。しかし、その選挙活動に旧統一教会が深く関わっていたことが次々と明らかになっている。国民の信頼を裏切る行為によって選挙に勝ち続けていたことが、称賛に値するか否かは言うまでもない。自民党自らが徹底的に検証し、その結果を有権者に提示することが政権党・公党としての最低限の義務であろう。
岸田首相が、第二の理由として挙げているのが、「日本経済の再生、外交を主導し平和秩序に貢献するなど、様々な分野で歴史に残る業績を残したこと」である。今となっては空々しい、の一言だろう。安倍元首相は黒田氏を日銀総裁に据え、日銀に「異次元の金融緩和」策を取らせて経済の浮揚を狙ったが、日本経済は停滞を続け、とくに労働者の所得は下がり続けた。
皮肉にも元首相の死後間もなく、欧米の金利引き上げの流れが始まるとともに、円は底割れ状態の円安に陥っている。金利政策に身動きが取れず、国際的な流れに押されて金利が上昇すれば、国債は暴落し財政は破綻へ一直線である。なお、岸田首相は防衛費の大幅増額のために、国債の大量発行を検討しているという。正気の沙汰とは思えない。
また外交政策では、対露外交で安倍氏はプーチン大統領との個人的な交流を誇ったものの、まったく成果を出さなかった。北方領土交渉は、目標を四島返還から二島返還に引き下げものの、見通しはさらに遠ざかる結果となっている。
北朝鮮に対しては、「異次元の圧力を科すべき」と主張(2017年9月、当時の文在寅大統領との会談)していたものの、翌年6月に米朝首脳会談が開催されると、トランプ大統領を通じて北朝鮮と交渉したいと言い出した。まさに右顧左眄である。指導者として最も避けなければならない態度である。「歴史的業績」は、どこにあるのか、と突っ込みたくなる。
岸田首相が第三の理由としているのが、「諸外国の追悼決議や服喪」、「各国の敬意と弔意」なのだが、これも最近まで日本の首相を務めていた人物が急死したことに対する、国際社会の儀礼的なものである。実際、国葬をうたって政治指導者を招待したものの、外国の高官の参列は一部に限られている。エリザベスⅡ女王の国葬の直後ともなり、安倍氏の国葬は、その侘しさが際立つであろう。
第四の理由としているのが、「選挙活動中の非業の死」である。しかし第一の理由とも関連するが、安倍氏はカルト教団の被害者に襲撃されたのであって、容疑者の動機は政治的なものでなかった。将来、安倍のように在任期間が長い政治家が、男女関係の縺れから恨みを募らせた元愛人に襲われたとしたら、選挙活動中の事件であれば、国葬にするべきだというのだろうか。
岸田首相と自民党の再生に必要なこと
世論調査によれば、国民の過半(一部の調査では7割を超える)が、安倍元首相の国葬に反対し、毎日新聞の調査では岸田政権の支持率は30%を割った。当然である。自民党支持者の間でさえ、国葬に反対する割合は相当に高い。安倍氏・自民党とカルト教団との関係が、あまりにも闇が深いため、自民党支持者の多くは困惑し思考停止に陥っているものと思われる。
毎日新聞の世論調査では、自民党の支持率も29%から23%へと大きく下がっている。自民党議員の後援会組織につながり、日常的に政治的、経済的な利益に与る機会を持っている有権者は、自民党がどのような危ない組織に蝕まれていようとも、支持し続けるだろう。
しかし、日本を韓国(朝鮮)の下に置くような教義を特徴とする旧統一教会と自民党との深い繋がりが明るみに出てきた現在、自民党のもつ愛国心の強調などの保守的イデオロギーに支持の理由を見出していた有権者の気持ちが離れるのは当然である。
岸田首相と自民党が国民の支持を取り返すために必要なことは明らかであろう。第一に、国葬を中止ないし内閣葬などに変更することである。安倍氏の襲撃事件は、じつに不気味な、見てはならないような世界を暴いてしまった。その中枢にいた人物を、国を挙げて葬送しようというのである。世界の笑いものというしかない
第二に、旧統一教会と自民党との関係の徹底した究明である。もっとも究明を進めると、玉ねぎの皮を剥いて結局何も残らないように、自民党というもの自体が空洞だったということが示されるだけかもしれないが、もしもそうであるならば、それは同時に戦後日本政治の清算を意味することになるだろう。
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