SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】498 イーロン・マスクのウクライナ停戦提案
- 2022年 10月 9日
- 評論・紹介・意見
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ツイッターを買収しようとしているイーロン・マスクが、10月3日にウクライナ戦争の解決案をツイートしました。 「国民をこれ以上殺したくないのなら、停戦交渉しろ」というのがマスクの基本理念らしいです。 戦争を長引かせたいアメリカとウクライナは、マスクに大反発しました。
① 超頭脳マスクの提案:
2022年10月3日、大富豪で米電気自動車大手テスラ最高経営責任者のイーロン・マスクが<ウクライナとロシアの平和」のための4つの提案>をツイートした。大富豪であるのみならず、発明家で起業家でロボットと宇宙の開発者と、、超頭脳の提案に賛否両論が爆発!
4っつの提案とは、①2014年にロシアが併合したクリミア半島を正式にロシア領と認めること、②クリミアへの安定した水の供給を確保すること、③ウクライナが中立を保ちNATOに加盟しないこと、④ウクライナ東部でのロシア加盟に向けた住民投票を国連の監視下で再度実施し、その結果に応じてロシアがそれらの地域を併合すること、とある。
さらに、、
「ロシアの人口はウクライナの3倍あり総力戦でウクライナの勝利の可能性は低い」
「ウクライナ国民のことを大事に思うなら和平を求めろ」などなど、マスクはゼレンスキー閣下の神経を逆なでするツイートを連発した。
読者の皆様方はご存知かと思うが、改めてイーロン・マスクの略歴を記しておく。
イーロン・マスクは1971年6月28日、アパルトヘイト(人種隔離政策)が厳しい頃の南アフリカで生まれた。技術者兼投資家の父エロールはイギリス人とアメリカ人にルーツがある白人南アフリカ人で、モデル兼栄養士の母メイはカナダ生まれの白人南アフリカ人。マスクは高校卒業まで南アフリカで過ごしたが、17才でカナダに移住し、クイーンズ大学で2年間学びアメリカのペンシルバニア大学に転入し、物理学と経済学の学位を取得した。
マスクは1999年にペイパル社の前身であるX.com社を設立した後、2002年に宇宙輸送を可能にするロケットを製造開発するスペースX社を起業した。スペースX社は民間による宇宙旅行のベンチャー企業で、<インターネット、クリーンエネルギー、宇宙が人類を進歩させる>との信念を、マスクは着々と実現していった。
2004年には前年に設立された電気自動車ベンチャーであるテスラ・モーターズ社に出資し、同社の資金調達ラウンドを主導して自身は会長に就任。2021年8月に「AI Day」を開催し、スーパーコンピュータ「Dojo」のD1チップ、そして人型ロボット「Tesla Bot」の2つを発表した。
マスクはアメリカの民主党・共和党の二党制や左派・右派の二元論で分類されることを好まない。政治献金は両党に行っている。2020年の大統領選挙ではバイデン民主党を支持したが、2024年は共和党支持を表明している。テスラの大きなマーケットである中国に対しては、<可愛く攻撃的>と評している。
2022年4月に発表された<フォーブス>誌の世界長者番付で1位となったマスクは、10月28日の時点で、推定保有資産が3020億ドル(約34兆4106億円)となった。
② マスク停戦案に対する、ウクライナの反応、ロシアの反応:
マスクは、2月にロシアがウクライナに侵攻した際にプーチン大統領に宣戦布告をし、衛星通信スターリンクを、ウクライナ全般のインフラを支えるネットワークとして無償提供し、ゼレンスキー閣下から、感謝された、マスクは「スペースXはウクライナでスターリンクの提供とサポートに、これまで約8000万ドルを費やしている。が、ロシアへの支援はゼロ。明らかに我々はウクライナ支持派だ」と、戦争当初はツイートしていた。
しかし、10月3日のウクライナ停戦に向けたマスク提案に、ウクライナは大反発した!
駐ドイツ・ウクライナ大使のアンドリーイ・メーリヌィクは「マスクに失せろと言ってやりたい」とツイートした。ゼレンスキー閣下は「ウクライナを支持するマスクとロシアを支持するマスクのどちらが好きか」と、ツイッターで呼びかけた。
一方、ロシアのメドベージェフ元大統領はツイッター上で、マスクに「よくやった」と称賛の言葉を送った。ロシアのペスコフ大統領報道官は4日、「とても前向きだ」と述べ、歓迎した。
<国連ウクライナ東部住民投票>を呼び掛けたマスクは、「自分の提案が不評でも気にしない。本当に心配しているのは、基本的に同一の結果になるのに、何百万人もが必要のない死を遂げるかもしれないという事だ」と強調した。マスクは「ロシアの人口はウクライナの3倍以上で、ウクライナが全面戦争で勝利する公算は乏しい。ウクライナ国民の身の上を案じるならば和平を求めるべきだ」と、ツイートした。
③ 国連指導の住民投票:
「ウクライナ東部でのロシア加盟に向けた住民投票を国連の監視下で再度実施し、その結果に応じてロシアがそれらの地域を併合することを認める」というのが、マスクの住民投票再実施案で、ウクライナとロシアの両当事者が納得すれば、実現可能な提案だ。
アフリカ南部にあるナミビアやアジアの東チモールやニューカレドニアなど、これまでに、独立か帰属かを選ぶ国連住民投票を、国連は何件か成功させた。その結果、ナミビアや東チモールの住民は独立を選び、ニューカレドニアは占領国への帰属を選んだ。
そして、国連自身が国連住民投票を1991年に約束したのに、31年経った今も実施されていないのが、国連西サハラ住民投票だ。西サハラ住民は約20万人がアルジェリアにある難民キャンプで暮らし、約10万人がモロッコ占領地西サハラに住んでいる。海外に亡命している西サハラ人は約6万人だといわれている。 分断を余儀なくされている西サハラ人の国連投票は、<国連西サハラ人民投票>とも呼ばれている。
1991年には、国連安保理も国連西サハラ人民投票を施行するつもりでいたから、MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)という名の国連PKOを立ち上げた。しかし、この投票監視団は投票作業など全くしないまま、今日まで存続している。そして、1年に一度か二度、MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)団長と西サハラ国連事務総長個人特使が国連安保理に活動状況を報告し、任期を延長するかどうかを採択する。しかし、報告も採択も非公開で行われ、決議結果だけが公表される。ウクライナ紛争は安保理がテレビ中継し、派手に国際社会は沸くが、西サハラ紛争は人知れず<亡きもの>にしたいというグテーレス現国連事務総長殿のご意向で、<見せない、報せない、言わせない>をモットーに退行し続けている。
今年もまた、MINURSOの1年任期が2022年10月31日で切れる。前任の国連事務総長諸氏が何とか実現させようと努力してきた西サハラ国連人民投票を、現事務総長が潰すという不名誉を負いたくないアントニオ・グテーレス氏は、今年もおざなりな国連安保理西サハラ非公開協議でお茶を濁すつもりのようだ? 国連安保理メンバー国大使の出席は求めず夫々の代表部職員が、10月10日と17日にスタファン・デ・ミストラ西サハラ国連事務総長個人特使とアレキサンダ―・イヴァンコMINURSO団長の短い現状報告を聞く。そして、27日にはさっさと採決して、チョンチョン、、
ところが、10月7日、デ・ミストラ国連事務総長個人特使が、モスクワに飛びラブロフ・ロシア外務大臣と会談した!! 記者声明でラブロフ・ロシア外務大臣は、「国連安保理は、西サハラの人々が自らの未来を決めるため、国連西サハラ人民投票を設定し準備を進めなければならない。早急に両当事者の交渉が必要だ」と、国連安保理に迫った。
国連西サハラ人民投票実施に向け、進展がありますように、、
モスクワを訪れたスタファン・デミストラ西サハラ国連事務総長個人特使、
右にラブロフ・ロシア外務大臣
イーロン・マスクは2022年5月8日に、ツイッターへの投稿で日本の出生率低下への危機感を表明し、何も手を打たなければ「日本はいずれ消滅する」と、予言者めいたことを発信しました。
マスクは2014年9月7日に来日した時、新宿歌舞伎町のラーメン二郎に立ち寄り<新宿のヌードル>と写真付きでツイートしました。 「すごく大きなボールにラーメンを盛ってくれて、非常に美味しかった。機械にお金を入れて……確か700円くらいだっただろうか。アサヒビールも飲んだし、、」と記者団に語っています。 2017年7月19日も同様の<ラーメン>投稿がありました。
もしウクライナ停戦が実現したら、ノーベル平和賞はラーメン・イーロンのものですね!
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年10月9日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12447:221009〕
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