ていこう原理10 〈カルト宗教支配状況〉の国家 ロシア
- 2022年 10月 21日
- 時代をみる
- ロシア長谷川孝
◆信者支配はカルト宗教だけのことか?
元首相銃撃事件で一気に明らかにされてきた「(名称変更した)統一教会」と政治との「癒着」問題。いかにして表面的な処理でやり過ごすかに懸命な様子が見え見えです。接触の〈総合窓口〉と疑われる安倍晋三氏に関しては、当事者死亡で調査は無理だとか。調査には、よほどの不都合があるのに相違ありません。
すでに明らかになっているように、自衛隊や家族、家庭教育、ジェンダー問題などの政策で、コピペと疑うほどにそっくりで、教団の主張に同調した(または取り入れた)との見方もあります。例えば、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という自民党憲法改正草案(2012年)など。
単なる選挙での協力・支援なのではなく(もちろん、これも重要ですが)、国政の在り方にかかわるのです。ことは、国家の基本を変える政策につながる恐れのある「癒着」なのです。その〈総合窓口〉と疑われる政治家について、「当事者死亡で不起訴」など許されません。
◆国家や社会のカルト宗教化は許せない
「癒着」の調査に拘るのは、個別の政策の類似や共通性だけに止まらない恐れを感じるからです。極端に聞こえるかもしれませんが、国家や社会の「カルト宗教化」、カルト宗教が信者を支配・コントロールするように、国民・民衆を洗脳し支配・コントロールする国家や社会になっていく恐れです。国民の信者化です。
なぜなら、ロシアの状況は、いわば国家が「権力的なカルト機関」になってしまったように思えるからです。一宗教団体なら、ダマシ・マヤカシ・霊的なオドシなどのフル動員によるわけですが、国家権力はさらに、軍事・警察・司法などによる逮捕・拘禁・死刑等々、そして権力に従属する民衆の相互監視などにより、強権的に無思考・従属状態を強いるのです。
「うつくしい国」とアベ元首相らが回復を目指した戦前の、明治体制の国家は、現人神・神社神道も動員しての民衆教化と軍国主義による〈ニッポン教〉の集団支配・コントロールの体制だった、と思います。アベ元首相はもしかすると、国民を支配・コントロールするウラジミールへの共感・親近感を抱いていたのではないかと、詮索してみたくなります。
◆教育・言論の独立は民主主義の基礎
戦後、保守派・右翼勢力は、道徳教育の復活に、大きな力を注いできました。それを実現させたのは、アベ政権です。教育基本法の改悪で、第2条(教育の目標)に愛国心を含む5項目の「態度を養う」を定め、道徳教育の教科化を実現しました。そして道徳教育は、必然的に、国家が差配する学校教育制度の根幹(全教科で道徳)に位置付けられます。
国が定める「態度」を教え込まれる教育体制です。これを、国家による人々の思考、感性への支配・コントロールの仕組みと言っても間違いないでしょう。アベ政権は、国家・社会の〈カルト宗教化〉を図ったと批判したいです。改悪前の教育基本法の教育の復活を願いたいです。
ロシアの状況をみると、個人の尊厳に基づく、言論・表現・思想・学習と教育の自由と独立の大事さを思わざるを得ません。個人崇拝を生まぬための、一人ひとりの個人の尊厳です。プロパガンダや宣伝広告、ニセ情報などに惑わされぬ個人がつながる社会の実現……ロシアの実情を反面教材に考えたいです。(読者)
初出:「郷土教育759号」2022年10月号より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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