フランスの抗議運動:”フランスは沸騰する” ー政府・企業に対する労組の闘争
- 2022年 10月 24日
- 時代をみる
- グローガー理恵フランスの抗議運動
はじめに
これは、ちきゅう座に投稿なさっている松井和子氏がご指摘してくださったことなのだが、長周新聞の報道によると、ヨーロッパ各地で燃料費高騰・物価高騰に対して抗議するデモが多発している、とのことだそうだ。実は、私自身ヨーロッパに住む身でありながら、長周新聞の記事を読むまでは、これだけの抗議運動がヨーロッパで起こっているとは、ほとんど知らなかったのである。
興味深いのは、これらの抗議運動が主に右翼政党によって進められていることであり、ドイツのメディアは、それを口実に、高騰するエネルギー価格・物価で苦しむドイツ市民の抗議運動を軽視しようとしている傾向があるように思える。私の友人の中には暖房をつけるのを怖がっている人もいる。長周新聞の報道によれば、ドイツのガス価格はこれまでの7倍になったそうで、暖房をつけるのが怖い気持ち、充分お分かりいただけるのではないだろうか。
さらに、ドイツでは、ドイツ経済の重大な要となっているMittelstand(中小企業)がエネルギー価格上昇のインパクトを受け、もはや高価なエネルギー料金を払えなくなったために生産を続けていくことができずに倒産の危機に瀕している。にもかかわらず、ドイツ政府は何の対策も打とうとしないのである。
現在、フランスでも、労働組合が市民に押し付けられた物価高騰・低賃金に対して抗議運動を起こしている。2018年に始まった黄色いベスト運動が示したように、今、フランス市民が巻き起こしている抗議運動の姿勢は、いかに彼らのレジスタンス精神が強固であるか、ということを私たちにあらためて認識させてくれるものと思う。
このフランスの「政府・企業に対する労組の闘争」についてドイツの新聞 ”junge Welt”が簡潔に報道しているので、それを和訳してご紹介させていただく。
原文(ドイツ語)へのリンク:https://www.jungewelt.de/artikel/436923.gewerkschaften-gegen-preisdiktat-frankreich-kocht.html
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ドイツの新聞 “junge Welt“から
フランスは沸騰する
全国でゼネスト:数十万人が政府、企業に対して抗議。マクロン大統領は労働組合を攻撃。
2022年10月19日
著者:ハンスゲオルグ・ヘルマン氏 (パリから)
フランスでは、火曜日(2022年10月18日)、数十万人の賃金労働者/給料生活者がゼネストに動員された。その日の午後、パリをはじめ全国の150以上の市町村で、ありとあらゆる職業分野で働く人々が、払える余裕がなくなった生活費と、深刻化する公共医療教育制度における人手不足に対して抗議した。とくにフランス市民の怒りは、3週間半続いている製油所労働者のストライキで、完全に企業側についたエマニュエル・マクロン国家元首のブルジョア-右派リベラル政権に向けられた。
マクロン仏大統領 CC BY4.0
ボルヌ仏首相 CC BY 2.0
マクロンとエリザベット・ボルヌ首相は、週はじめから、燃料貯蔵所の従業員の一部を強制的に徴集することによって、大胆に労働争議に介入してきたのである。火曜日(2022年10月18日)、フランス政府のスポークスパーソンであるオリビエ・ヴェラン氏は、ノルマンディー、ブルターニュ、マルセイユ地方でストライク中の5大製油所の稼働を、強制徴集されたスタッフによって持続させるという、行政の意向を確認した。任命された仕事を拒否する賃金労働者/給料生活者は、重い罰金を課され、その上、投獄されるような危険を冒すことになる。
マクロン大統領は、 国民が彼の2期目となる今後の5年間に何を期待できるのかを、過去数日間において、議会や閣僚評議会で明らかにした:野党と大統領自身の(この5月からルネッサンスと改称された)政党の一部が、「現在の危機で肥やされたエネルギー・ジャイアント企業であるトタルエナジーズとエッソの”超過利潤”に課税せよ」と要求したのだが、ストライキの日に、大統領に再び拒否されたのである。石油会社2社(トタルエナジーズとエッソ)の利益は昨年に比べて倍増したにもかかわらず、会社側はその利益の分け前を被雇用者に与えることを拒否したため、そのことが現在の全従業員による賃上げ闘争の引き金となったのである。
マクロン大統領とボルネ首相は、何日間も、ストライクをやめさせようと試み、製油所のスタッフを強制徴集することにより、「少数の従業員が、ガソリンスタンドで大多数の住民を『人質』にしている」との非難を絶えず繰り返すことによって、ストライキを貶そうとしている。
火曜日(10月18日)、労働組合連合 ”Force Ouvrière”のダニエル・フェルテ副書記は、このマクロン大統領とボルネ首相の言葉をを正した:「真の問題は、ガソリンスタンドのポンプから続く長蛇の列に入って待つことではなく、レジのところで1リットルが3ユーロまでするガソリン代を支払わねばならないことだ」と。 ゼネストを呼びかけ計画したフランス労働総同盟 ”CGT (Confédération Générale du Travail) ”のフィリップ・マルティネス委員長は、政府の姿勢を厳しく批判し、「マクロンは労働争議に介入することによって、憲法上保障されたストライクの効力を著しく弱めた」と述べた。マルティネスとフェルテは、ゼネストは「すべての人々に関わる闘いだ」と宣言した。
「火曜日(10月18日)に部分ストライキに入った製油所従業員および鉄道従業員、そして公共衛生業務・教育業務に関わる職員たちは、二つの側に対して自分たちを守っているのだ」と、労働組合員たちは述べる:それは、資本家と政府に対してである。明らかに、彼ら(資本家と政府)は、賃金労働者/給料生活者を、とくにエネルギー多国籍企業の巨大な利益から除外したいようである。ずっと前から、教育庁や病院管理機関は、純月給1300ユーロの初任給では、もはや若い人々を雇うことができず、公共社会福祉事業の崩壊を防ぐことができなくなっている。
– 翻訳終わり-
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4970:221024〕
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