宇宙空間の戦争=サイバー戦争=ウクライナ戦争 (1) ーーー日本人もウクライナ戦争に参戦、愚かな!ーーー
- 2022年 10月 24日
- 評論・紹介・意見
- ウクライナ戦争サイバー戦争柏木 勉
北朝鮮は各種ミサイルを連続発射している。10月4日の中距離弾道ミサイルは特に大騒ぎになった。青森県あたりの「日本上空」を通過し、太平洋上に落下。飛行距離4500km。5年前にも「日本上空」を飛び越えたが、この時も大騒ぎだった。その時も今回もそうだが、Jアラートがうまく鳴ったとか支障が生じたとか、多くの住民が恐怖に怯え動揺したとかの報道ぶりだ。しかし実際は、日本国民の多くは「ああ、またか。また撃ったな」くらいの感じだった。それが本当のところだ。騒ぎをあおりたてるのは、9条を完全死文化させ、皇軍とは言えないから「日本国軍」の創設を狙う者たちだ。ウクライナ戦争、台湾有事、中国の脅威等々をも喧伝し、敵愾心と愛国心を煽り、年末の「国家安全保障戦略等の改訂により「反撃能力」保有、5年後軍事費倍増を図っている。
日本上空?日本領空? 宇宙空間だよ!
「日本上空」「日本上空」と繰り返し流す。その意図は明確だ。領空侵犯で日本国の主権が侵害されたかのような敵愾心の扇動だ。しかし、今回の発射は最高高度1000Km。宇宙空間を飛翔しているのだ。領空ではない。領空とは普通は高度100Kmまでだ。日本列島にさしかかり100km以下に急降下したとでもいうのだろうか?仮に急降下したら、それこそ「領空侵犯」としてもっと大騒ぎしただろう。こんなことは本当に基本的なことでしかないが、防衛省もマスコミもダンマリを決め込んでいる。
ところが、宇宙空間の軍事化を強化したい勢力は、一方では宇宙空間には国境の概念がないことを国民に浸透させようとしている。防衛白書をみると何年も前から述べている。いわく「宇宙空間は国境の概念がなく、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の情報収集や通信、測位などが可能となるため、安全保障の基盤として死活的に重要な役割を果たしており、各国は宇宙空間を軍事作戦の基盤として利用」。国境概念がない宇宙空間を各国とも軍事化させているから、日本もそれにならって軍事化を強化すべきだ。そのように強調している。そして実際にも軍事化を推し進めているのだ。
宇宙の軍事化、サイバー戦争がウクライナ戦争を可能にした
そこで宇宙空間の軍事化だが、いまや軍事衛星なしでは「それなりの地上戦」すら出来ないのだ。宇宙空間の軍事衛星は、米国192,ロシア102、中国113(2020年4月時点)と 多数の軍事衛星が飛び交っている。このような状況のなかウクライナ戦争はどうであろうか。地上戦がくりひろげられているが、それも各種軍事衛星なしにはなりたたないのだ。
2014年のクリミア占領時には、ロシアはウクライナ軍の通信機器、ネットワークを無力化した。全くなすすべもなかったウクライナ軍には、その後NATOが入り込み支援を大幅増強。デジタル化をすすめ、さらに衛星を介したネットワーク通信(システム通信)へと更新した。それでもロシアは今回の侵攻直前、衛星通信網へのサイバー攻撃により基地局システムを破壊。ウクライナの軍・政府間の連絡に一時的に障害が生じた。ロシア、ウクライナ双方は偵察衛星で敵部隊の展開・移動を把握、監視している。黒海艦隊旗艦の「モスクワ」沈没はいまひとつはっきりしないが、地対艦ミサイルの攻撃であることは明らかだ。地対艦ミサイルは衛星からの敵艦移動データによって誘導され攻撃する。また、ウクライナの反撃に寄与しているロケット弾HIMARSは、GPS/INS(衛星誘導/慣性誘導)により命中精度を飛躍的に向上させた。米英は偵察衛星等から目標の位置情報をウクライナに提供している。
この様にウクライナの対ロシア地上戦にとって、米英EU等西側からの衛星と地上の間および地上間でのデータ・情報システムの提供は不可欠であり、それがあるからこそ反撃が可能なのだ。
さらに触れておきたいのは、イーロン・マスク氏創業のスペースX社の「スターリンク」だ。
「スターリンク」は、元々は衛星通信を活用したインターネットサービスだ。しかし、民生用の活用はもちろんだが、ウクライナ戦争ではウクライナ軍の大きな軍事力となっている。ドローン部隊はスターリンクの利用で、通常の通信状況が劣悪な地域でも正確なターゲティングでロシア軍の戦車隊を攻撃・破壊している。また砲兵部隊も、偵察用ドローンのスターリンクとの接続で正確なターゲティングが可能になった。特別任務で入手すべきインテリジェンスのためにも使用され、もちろん戦場の兵士間の連絡手段としても必要不可欠になっている。
(なお、ロシアは防御型もあわせ高いサイバー攻撃能力をもつとされるが、その能力が十分に発揮されていない。その理由は専門家でもいまひとつわからないらしい。権威主義的な組織間の縦割りが障害となって、各部門のサイバー部隊と実働部隊の軍との同期・連携が不十分で、軍事作戦との連携が円滑に進まないことなどが挙げられているが)
どこまで続くぬかるみぞ、どこまで続くか宇宙の軍事化
このように情報・データーのやり取りが軍事、戦争にとって死活的なものになっている。今やとっくにサイバー戦争の時代にはいっており、ウクライナ戦争について「20世紀型の戦争が今日のヨーロッパで起こるとは!」と嘆く人々がいるが、とんでもない。飛躍的にバージョンアップされた戦争なのだ。宇宙空間の軍事的重要性は増すばかりだ。各国は互いに敵国衛星をキラー衛星その他によって破壊しようと、その研究開発、実用化、性能向上に躍起となっている。
ひるがえって考えるに、情けないことはなはだしい。宇宙空間でも戦争機械・国民国家が争っている。どこまで国民国家の争いは拡がるのか?月などとっくに飛び越えて火星までも、さらに太陽系全体までも?もっとか?太陽系の外までも? アポロ11号が月面着陸した時のアームストロング船長の名セリフ、それは完全に死んだ。もっともそれも冷戦の賜物だったが・・・・ (続く)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12483:221024〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。