NHK文書開示等請求事件・第5回期日 ー 法廷でのパワポによる解説。
- 2022年 10月 27日
- 評論・紹介・意見
- NHK問題澤藤統一郎
(2022年10月26日)
東京地裁令和3年(ワ)第15257・24143号NHK文書開示等請求事件
原告ら代理人弁護士澤藤大河
請求の縮減
これまでの開示請求文書
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会長に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申第797号、第798号、第814号、第815号、第816号を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料
縮減後の請求の趣旨
被告日本放送協会は原告らに対し、別紙開示請求文書目録記載の各文書を、いずれも正確に複写(電磁的記録については複製)して交付する方法で開示せよ
開示請求文書目録
1.放送法41条及び経営委員会議事運営規則第5条に基づいて作成された、下記 各経営委員会議事録(「上田良一会長」に対する厳重注意に関する議事における各発言者ならびに発言内容が明記されているもの)
①「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
②「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
③「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
2.下記各経営委員会議事録作成のために、各議事内容を録音または録画した電磁的記録。
①「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
②「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
③「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
請求の趣旨の縮減の理由
請求の趣旨第1項の被告NHKに対する開示請求文書の範囲の減縮であって、第2項および3項については変更はない。
本件提訴後、被告NHKは、請求の趣旨第1項に特定した文書の多くを原告らに開示し、原告らはこれを受領した。残る未開示文書についてのみ、判決での開示を求める趣旨を明確にするため、本申立をする。
原告第7準備書面の概要
債権侵害の不法行為
•被侵害利益
•加害行為
•故意過失
•損害
•(因果関係)
被侵害利益
• 原告らの「権利または法律上保護される利益」が被告森下によって侵害された
• 侵害されたのは、「各原告の被告NHKに対する本件各文書開示請求権」であり、憲法上の知る権利を実質的な内容とする重要な権利
加害行為について
被告森下は、被告NHKに明示的に指示する態様で、各原告がNHKに対して有する本件各文書開示請求権の行使を妨害した。
加害行為にはあたらないが・・・
被告森下は、放送法32条2項に違反し「番組編成権」を蹂躙した。また、放送法41条に違反し、経営委員会議事録も作成しない。被告森下の明らかな違法行為は、原告との関係では、被告森下の加害行為の動機や態様の悪質性を証明する間接事実である。これらの悪質性は、原告の慰謝料額を増大させる事由である。
故意・過失
権利侵害行為は、被告森下の明示的な指示により行われた故意不法行為である。
少なくとも、被告森下において遵守すべき放送法やその下位規則に敢えて違反していることからも、重過失あることは明らかである。
損害
原告らの損害は二つ。
1.精神的損害
原告らはいずれも、巨大公共放送機関であるNHKの運営のあり方を、我が国の民主主義の消長に関わる問題として重大な関心を寄せてきた。本件経営委員会議事録は、NHKの存在意義にも関わる重要文書。
一万円を下回ることはない。
2.弁護士費用
原告らは提訴を余儀なくされ、訴訟追行のための弁護士費用を負担した。その額が一万円を下回ることはない。
被告森下の加害行為
• 被告NHKに対して、その影響力を行使して、作成済みである本件議事録およびその録音データを開示させないように働きかけた。
• 本件各文書は、被告森下において強く隠蔽を望む内容を含んでいる
• 放送法第3条で保証されている放送の自由を侵害した。
• 同法32条2項で明示的に禁止されているにもかかわらず、経営委員として、個別の放送番組の編集について、介入した。
被告森下の加害行為の立証に関して
•被告森下の具体的な行為については、完全に被告の領域での事実なので、
原告には知る術がない
•だからこそ、被告森下の尋問が必要である。
文書の存在について
• 原告の開示請求対象文書は、3回の経営委員会議事録とその録音データに絞られた。
• 仮にも国会から選任された被告森下が、放送法に明確に違反して議事録を作らないなどあり得ないこと。
• 録音データについても、消去した日も、消去した人も、具体的な作業内容も示すことができない→当然存在するはず。
しかし、仮に議事録もなく、データも消去されていた場合
• 原告は、議事録もデータも存在しているが、開示されていないと考えている。
• 仮に、証拠調べの結果、議事録が作成されておらず、データも消去されていた可能性が高い場合には、新たな不法行為を主張する予定である。
• その場合、「被告森下において、議事録を作成しないことで、各原告の文書開示請求権を妨害したこと」「被告森下が録音データを削除して各原告の文書開示請求権を妨害したこと」を不法行為として追加する。
文書等が存在しない場合の予定予備的主張
• 「被告森下において、議事録を作成しないことで、各原告の文書開示請求権を侵害したこと」
• 「被告森下が録音データを削除して、各原告の文書開示請求権を妨害したこと」
• 被告森下は、議事録をつくらないことで、原告らの開示請求権を有名無実なものとしたのである。
• これらの不法行為の存在は、被告森下において先行自白がなされている。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.10.26より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20188
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12492:221027〕
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