統一教会スラップ批判の声明 ー 「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮してはならない」
- 2022年 11月 2日
- 評論・紹介・意見
- DHCスラップ訴訟司法制度澤藤統一郎
(2022年11月1日)
本日午後2時、東京地裁庁舎内の司法記者クラブで記者会見し、「統一教会のスラップを批判する弁護士・研究者・ジャーナリスト声明」を発表した。正式のタイトルは、「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮することなく市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持されたい」というもの。
声明を掲載する特別のサイトはない。本日の当ブログに、全部の記録を掲載することとする。
以下に、(1) 記者会見概要の説明、(2) 10月11日付け呼び掛け文、(3) 呼び掛けの主体となった「23期・弁護士ネットワーク」の個人名、(4) 声明文本体、(5)スラップの被告とされた各メディアに対するご通知、の順で掲載する。これで、経緯と声明の内容はお分かりいただける。
***********************************************************
2022年11月1日
「旧統一教会スラップ批判声明」のご説明
本日、旧統一教会が9月29日東京地裁に提訴した3件のスラップ訴訟について、これを批判する立場からの声明を発表いたします。
声明の趣旨は、「報道機関各社が、スラップに萎縮して統一教会批判の言論を自主規制するようなことがあってはならない」「報道各社には、怯むことなく、市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持していただきたい」というものです。
この声明を呼びかけたのは、23期・弁護士ネットワーク。その個人名は別紙に記載したとおりの26名(23期弁護士22名と客員4名)です。弁護士を主に、親しい研究者・ジャーナリストにも賛同を呼びかけ、呼びかけ人を含む全声明賛同者は下記のとおりとなりました。
弁護士 212名
研究者 29名
ジャーナリスト 5名
その他(宗教者など) 25名 (総数271名)
本日、声明を被告とされた各社にお届けするとともに、この声明を公表することによって全報道機関各社やジャーナリストの皆様への声援としたいと思います。
***********************************************************
2022年10月11日
弁護士・研究者・ジャーナリストの皆様に、別紙声明への賛同の呼びかけ
「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮することなく
市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持されたい」
人権や民主主義擁護に活躍していらっしゃる弁護士・研究者・ジャーナリストの皆様に、別紙声明への賛同を呼びかけます。
私たちは、1969年に司法修習生となった同期(23期)の弁護士です。1971年に弁護士や裁判官となって以来今日までの50年余、一貫して日本国憲法の理念を大切にする立場で職業生活を送ってきました。
この同期のなかには、長年にわたって法廷で統一教会と対峙してきた者、スラップ訴訟と闘ってきた者、メディアの表現の自由を擁護してきた者、真実の隠蔽を許さずとして情報公開問題に取り組んできた者、消費者被害救済をライフワークとしてきた者、等々がいます。
これまで、同期の気安さから忌憚なく懇談を重ねてきましたが、時として、どうしてもこの件については意見をまとめて公表しようという気運が高じることがあります。この度、そのような、やむにやまれぬ思いから多くの弁護士や研究者、ジャーナリストの皆様に別紙の声明へのご賛同を得たく呼びかける次第です。
ことは、統一教会による、放送メディアと番組出演の弁護士とを被告とした名誉毀損損害賠償請求訴訟の提起です。これによって、報道機関各社が萎縮して統一教会批判の言論を自主規制するようなことがあってはならない。報道各社には、怯むことなく、市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持していただきたいという趣旨です。是非、所定のURLをご使用の上、声明にご賛同ください。月内に賛同署名を締め切り、11月の冒頭に公表いたします。
***********************************************************
23期・弁護士ネットワーク
「旧統一教会スラップ批判」声明
呼びかけ人(23期・弁護士ネットワーク)個人名
(23期弁護士)
梓澤和幸 (東京)
井上善雄 (大阪)
宇都宮健児 (東京)
大江洋一 (大阪)
木嶋日出夫 (長野)
木村達也 (大阪)
児玉勇二 (東京)
郷路征記 (札幌)
阪口徳雄 (大阪)
澤藤統一郎 (東京)
瑞慶山茂 (千葉)
豊川義明 (大阪)
野上恭道 (群馬)
野田底吾 (兵庫)
本多俊之 (佐賀)
藤森克己 (静岡)
松岡康毅 (奈良)
村山 晃 (京都)
森野俊彦 (大阪)
山田幸彦 (愛知)
山田万里子 (愛知)
吉村駿一 (群馬)
(以下・客員)
野原 光 (広島大学・長野大学名誉教授)
西川伸一 (明治大学教授・政治学)
北村 栄 (弁護士・愛知)
本田雅和 (ジャーナリスト) 以上26名
***********************************************************
(声明文)
2022年11月1日
「報道機関各社は旧統一教会からのスラップ訴訟に萎縮することなく
市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持されたい」
本年9月29日、旧統一教会(現名称「世界平和統一家庭連合」)が、テレビ番組での出演者の発言を同教会に対する名誉毀損として、各テレビメディアと発言者である各弁護士を被告とする3件の損害賠償請求訴訟を提起しました。賠償請求金額は合計6600万円、謝罪放送の請求もされています。
私たちは、この訴訟提起を看過し得ない重大事と受けとめました。その主な理由は下記の3点にわたるもので、報道機関各社をはじめとする関係者に適切な対応を要請するだけでなく、広く社会に大きな問題ととらえていただくよう訴えます。
第1の理由は、各提訴とも報道機関を標的とした表現の自由への挑戦であり、市民の知る権利に蓋をしようとする企てだという点にあります。
旧統一教会は、各訴訟において被告として特定した報道機関だけでなく、あらゆる分野のメディアに対して、旧統一教会問題追及の言論を威嚇し牽制して、批判を封じようとしているものと指摘せざるを得ません。
最近の旧統一教会と政権与党との癒着をめぐる報道には、目を瞠らせるものがあります。日本の政治構造の根幹にも関わる重大な問題として、多くの人々が関心をもって関連報道に注視してきました。
万が一にも、報道機関各社が本件各提訴に萎縮して、旧統一教会批判の報道や番組編成に支障が生じるとすれば、日本の民主主義の行方にも関わるものとして憂慮せざるを得ません。放送に限らず各分野における報道機関は、是非とも、この重大な時期に重大な報道を萎縮することなく、視聴者・市民の知る権利に真摯に応えて、ジャーナリズムの本領を発揮されるよう要望いたします。
第2の理由は、本件提訴がいわゆる「スラップ訴訟」であることです。
正確な定義は困難ですが、「自分を批判する言論を威嚇し萎縮させる目的で提起される民事訴訟」をスラップ訴訟と言って間違いはありません。多くの場合、その目的のためにスラップは高額請求訴訟となります。直接被告とされた者に心理的負担と応訴費用の経済的負担を余儀なくさせるだけでなく、被告以外の周辺にも言論萎縮の効果をもたらします。
状況から見て、本件3訴訟は、被告とされた報道機関と発言者を威嚇することで旧統一教会批判の言論封じを目的とした、典型的なスラップ訴訟と考えざるを得ません。民事訴訟本来の役割は、法的正義の実現であり、また社会的弱者の権利救済にあります。本件のごとき民事訴訟の濫用を、法の適正な運用に関心をもつ者としてとうてい看過し得ません。
私たちは、スラップ訴訟を成功させてはならないと考え、その被害者に状況に応じた適切な支援を惜しみません。
第3の理由は、本件各訴訟がいずれも、旧統一教会によるさまざまな被害を救済し、あるいは防止しようという運動の妨害を目論むものだからです。
各訴訟の被告とされている弁護士は、旧統一教会の霊感商法被害救済を求めて闘ってきた人、あるいは現時点で旧統一教会のあり方を批判する立場を鮮明にしている人です。その人たちを被告として高額の損害賠償を請求することは、現在高揚しつつある旧統一教会による種々の被害救済・防止の施策や運動の進展を牽制し妨害することを意味しています。
霊感商法被害・高額献金被害・二世信者被害等々の旧統一教会による種々の被害の救済や防止策が、社会的な注目の中で行政をも巻き込んで進展しつつある現在、これを妨害しようという提訴を許してはならならず、全ての関係者に毅然たる姿勢の堅持を期待いたします。
私たちは、以上の理由から、旧統一教会が提起した各訴訟の被告となった各弁護士、報道機関各社を激励するとともに、全ての報道機関・メディアに対して旧統一教会への正当な批判報道に萎縮することがないよう訴え、ひろく社会に同様のご支援をお願いする次第です。
23期・弁護士ネットワークと
賛同の弁護士・研究者・ジャーナリスト
***********************************************************
2022年11月1日
〒540-8510 大阪市中央区城見1丁目3番50号
讀賣テレビ放送株式会社
代表取締役 大橋善光様
23期・弁護士ネットワーク
「声明」呼びかけ人26名の一人として
弁護士 澤 藤 統 一 郎
「旧統一教会スラップ批判声明」のご送付
本日、弁護士212名・研究者29名・ジャーナリスト5名・その他市民(宗教者など)25名の総数271名の連名で、別紙の声明を発表いたしました。
その内容は、旧統一教会が9月29日東京地裁に提訴した3件のスラップ訴訟について、統一教会を厳しく批判する立場からのもので、声明の趣旨は、「報道機関各社が、スラップに萎縮して統一教会批判の言論を自主規制するようなことがあってはならない」「報道各社には、怯むことなく、市民の知る権利に真摯に応えた報道姿勢を堅持していただきたい」というものです。
この声明を起案し呼びかけたのは、23期・弁護士ネットワーク。その個人名は別紙に記載したとおりの26名(23期弁護士22名と客員4名)です。この26名が、親しい弁護士を主に、研究者・ジャーナリストにも賛同を呼びかけて、本日の声明となりました。
被告とされた御社に本声明をお届けするとともに、スラップに屈することなく、今後とも全社を挙げてジャーナリズムの本道を歩まれ、旧統一教会の問題性を掘り下げる報道を継続されるよう期待申し上げます。
***********************************************************
2022年11月1日
〒107-8006 東京都港区赤坂五丁目3番6号
株式会社TBSテレビ
代表取締役 佐々木 卓 様
(以下、同文)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.11.1より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20217
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12508:221102〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。