これはまずい――小池パワハラ問題
- 2022年 11月 21日
- 評論・紹介・意見
- パワハラ共産党阿部治平
――八ヶ岳山麓から(402)――
14日付の「毎日新聞ネット」によると、共産党は14日、小池晃書記局長が党会合で田村智子政策委員長を叱責したことが「パワーハラスメント」に当るとして、同日付で党規約に基づく警告処分とすることを決めたという。
「……小池氏によると、今月5日の(全国地方議員・候補者の)党会合で自身が議員名を間違えて発言したにもかかわらず、司会を務めた田村氏に発言を訂正されると、『訂正する必要はない』などと詰め寄って叱責。その後、議員名の誤りに気付いたという。映像が、SNS上で拡散し、小池氏の言動に批判が高まっていた」(毎日新聞ネット、11・14)
15日付の「赤旗」も、「小池氏は会見で、問題の言動があった経緯を報告。全国地方議員・候補者会議(5日)での報告者を務めた小池氏が、報告で候補者の名前を間違えて発言し、司会の田村氏が間違いを訂正した際、小池氏が田村氏に近づき「訂正する必要はない。ちゃんと読んでいる」などと強い口調で叱責したと説明しました」
さらに、「赤旗」は、小池氏のことばを「会議での私(小池氏)の言動は……私自身の品性の上での弱点があらわれたと自己総括している。二度と再び繰り返さないために、深刻な反省と自己改革が必要だと肝に銘じている」と伝えた。
「赤旗」記事からすると、共産党常任幹部会は、中央委員で書記局長の小池氏を「警告」処分にして、これで「決着」としたようだが、それは党規約の原則に抵触する。
共産党規約によると規律違反の処分は、軽い方から「警告、権利停止、機関からの罷免、除名」の4種があり、そのうち「中央委員、準委員の権利停止、機関からの罷免、除名は中央委員の3分の2以上の多数決によって決定する」となっている。一番軽い「警告」処分についてはどの機関がやるかは規定されていない。また党規約のどこにも常任幹部会に処分権を与えた項目がない。
さらに「中央委員会は、この規約に決められていない問題については、規約の精神に基づいて、処理することができる」としている。つまり中央委員である小池氏の処分は「警告」もふくめて、常任幹部会の決定では「最終判決」に至らず、中央委員会の決定をまつべきものである。
つぎにおかしいと思ったのは、「警告」処分に伴って小池氏を降格しなかったことだ。
パワハラが小池氏の「品性の上での弱点」の問題だとすれば、氏は日常的に下部のものに粗暴な態度で臨んでいたと思われる。自己批判では済まされない。今回は、全国地方議員・候補者の会議に参加した党員が小池氏の言動に怒りを感じてSNSに投稿したので問題が表面化したが、地方の党組織や党本部勤務員にも小池氏のパワハラ被害者が存在するのではないか。
大勢の面前で「相手に近づき強い口調で叱責」すること、つまり面罵は相手の人格の否定である。しかも今回の相手は、党副委員長・政策委員長という重責を担う人物である。まともな組織・企業では、怒鳴りつけて人を動かす時代はとうに終わっている。世間の常識という点では、共産党はあいかわらず周回遅れのランナーだ。
もし共産党が小池氏降格を早々決めていたら、パワハラ問題に対する本気度が明らかになり、有権者の信頼をかち得ただろうに残念なことである。
共産党は、SNSに問題の映像が登場してから10日近く経ってからようやく処分を決めた。小池氏の言動を常任幹部会のメンバーのだれもがパワハラだと思わなかったからだ。
15日、志位和夫委員長はこれについて、「今日の常任幹部会では『常任幹部会としても弱点について反省する必要がある』ということを議論しました。とくに常任幹部会として対応が遅れたことは反省点にしなくてはいけないと確認しました。どういう事実があったかを共通の認識にして、それがどういう性格の問題なのかという正面からの議論をやることが遅れた。こういう問題に対する常任幹部会としての姿勢が問われる問題として反省点として確認しました」と発言している(赤旗11・15)。
長々発言しているが、確認した事実にふれていない。常任幹部会の弱点や反省点がなんだかまったくわからない。なぜ敏速に対処できなかったかも説明していない。
今回の出来事は、共産党が絶えず序列を意識する、日本伝統の「縦社会」組織であることを明らさまにした。これについては15日の「赤旗」に記者会見での記者と小池氏の問答がある。
記者 (小池)書記局長と(田村)副委員長は上司、部下の関係にあるのか。
小池 そういうわけではない。われわれに上下の関係はない。ただ、私があの会議を主催し、報告者をしていて、田村副委員長は司会をやっていた。そういう意味でハラスメントの基準である「優越的な地位」ということになる。今回の会議における、それぞれの役割という点からみて、これはパワーハラスメントにあたると判断をした。
小池氏は、田村氏との関係に「上下関係はない」といったものだから、パワハラが成立する理由がなくなって、会議を主催した者は司会者より「優越的な地位」にあるととんでもない説明をしている。そうではあるまい。小池氏は、日ごろから彼女が自分より下位の存在だとみているから面罵したのではないか。
話は飛ぶが、今年2月にロシアのウクライナ侵略が始まったとき、岸田内閣は支援物資をウクライナに送ろうとした。田村氏は記者会見で、これに「反対しない」といった。ところが翌日になると、それを「間違っていた」として撤回した。援助物資の中に防弾チョッキが入っていたからという理由からである。
一夜にして賛成から反対に変ったのは、田村氏が志位氏か小池氏の指示に従ったために違いない。いまは規約上からは削除されているが、共産党には「下級は上級に従い少数は多数に従う」という硬い伝統がある。そこには対等平等の対話の場は存在しない。ウクライナへの援助問題は、公開の議論をしてしかるべき原則問題であるのに、それは行われていない。
今回、記者から「小池氏の謝罪に対して、田村氏は何と言ったか」と問われて、氏は「了解です。わかりました」と言ったと答えている。この答えが田村氏の本心だとすればはなはだ遺憾なことである。
大勢の面前で怒鳴りつけられるという人格否定に対して、田村氏はその場でなぜ抗議しなかったのか。簡単に「了解した」としたら、パワハラをパワハラと感じていないことになる。だとしたら、自身の尊厳に対する感覚も人権意識も脆弱というほかない。
わたしは社会主義の未来を信じないが、おもに日本の対米従属状態からの脱却という点で共産党に同調する者である。来年の地方選挙でも共産党を支持し、票読みもカンパもするだろう。だが、この上意下達的体質は支持できない。
(2022・11・17)
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