軍事力拡大ではなく外交力で対立の解決を 世界平和七人委がアピール
- 2022年 12月 12日
- 時代をみる
- 世界平和七人委岩垂 弘
世界平和アピール七人委員会は12月9日、「軍事力拡大でなく外交力こそ真の安全保障である――防衛政策の根本的転換は認められない――」と題するアピールを発表した。
アピールは、岸田首相が推進している防衛費の大幅増と敵基地攻撃能力の保有に反対するもので、「これまで(日本が)国是としてきた専守防衛方針を大転換させて、攻撃兵器を装備するという軍事力拡大路線である。攻撃をうけての反撃にとどまらず、相手が攻撃準備に着手したと判断すれば、その基地も司令部も攻撃するというもので、周辺国を刺激して軍備拡大を誘発することは間違いない」としている。
世界平和アピール七人委は、1955年、ノーベル賞を受賞した物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器廃絶、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは156回目。
現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)の6氏。
アピールの全文は次の通り。
軍事力拡大でなく外交力こそ真の安全保障である
―防衛政策の根本的転換は認められないー
世界平和アピール七人委員会
岸田文雄首相は、安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画)の改定に向けて、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を認め、2027年度の防衛予算をGDPの2%(約11兆円)とすること、そのため2023~27年度の防衛費を過去最高であった2019~23年度実績の27兆4700億円の1.5倍以上の総額約43兆円とすることを閣議決定する予定で、防衛相や財務相に指示した。
これらは、周辺国の軍備増強への対処の名のもとに、これまで国是としてきた専守防衛方針を大転換させて、攻撃兵器を装備するという軍事力拡大路線である。攻撃をうけての反撃にとどまらず、相手が攻撃準備に着手したと判断すれば、その基地も司令部も攻撃するというもので、周辺国を刺激して軍備拡大を誘発することは間違いない。これにより際限のない軍備拡充の悪循環を招く恐れがあり、戦争のリスクを増大させるものである。
現在の日本は、国家財政の巨額の赤字が累積し、少子高齢化のひずみが広がっている。エネルギー・食料の自給率も低く、国土も狭隘である。このような国が、軍事力を強化することによって安全を求め、いざとなれば戦争に訴えるという途は、国民の安全を真に保障することにはならない。
かつての日本は、国家のためとして国民と諸外国に大きな犠牲を強いてきた。敗戦を経ての反省の上に立って、日本国憲法のもとで平和主義を掲げ、対立や齟齬があった場合には外交交渉で粘り強く解決を図る路線を歩んできた。その結果として、諸外国から戦争をしない国と見られてきたのである。
今回の防衛政策の根本的転換を推進するにおいて、これが国民に対して安全・安心を強化する方策だという丁寧な説明は一切なく、諸外国の理解を得る努力をした気配もない。
私たち世界平和アピール七人委員会は、いかなる状況にあろうとも、日本として外交力によって解決を図る国であり続けることを強く求めたい。
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4988:221212〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。